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わたしこんなの買ってはる
イタリアン・マンマの最高スイーツ!
イタリア・ナポリ
イタリアは各地方に根付いた伝統料理及び菓子があり、そこに行かなければ食べることのできないもの、というのがたくさんある。
季節の移り変わりを知らせるイベント・行事などもそれ所以の料理やお菓子が存在する。今だからこそ、この土地だからこそ、の楽しみ方ができるのは個人的には非常に嬉しいことだ。
ナポリのお菓子屋さんのショーウインドウ。
さて、パスクアはイタリアではナターレ(クリスマス)と同等に大切な日。“ナターレは家族と、パスクアは好きな人と”と言われるように、ナターレには家族で一緒に過ごすのが一般的だが、パスクアは恋人、友人同士で楽しく過ごし、またパスクア翌日のパスクエッタと呼ばれる日には郊外へピクニックに出かける、という行動がなぜか普及している。
私はこのパスクアを過ごすため、夫と娘とともに彼の実家のある南イタリア・ナポリに行くこととなった。そこでの楽しみはやはりナポリでなければありつけない、真のピッツァ・ナポレターナと美味い料理の数々。
パスクアの時期にはパスティエラが
ショーケースいっぱいに並ぶ。
なかでもパスクアのこの時期、私のお目当てでもあり、ナポリっ子にとっても欠かせないのが『パスティエラ』と呼ばれるドルチェである。ナポリのお菓子屋さん、レストランには必ず置いてある伝統的でナポリっ子に大変に親しまれているドルチェだ。
パスタ・フローラ(タルト生地)を敷き詰めた型に、リコッタ、砂糖、卵、麦の粒(水でふやかし、茹でた後、牛乳で煮たもの)を混ぜたものを流し込み、上部に生地を格子状にのせ、オーブンでじっくりと焼きあげて完成。
加えるアロマ(香り)としては、シナモン、バニラ、オレンジ、オレンジ・レモンピールそしてアクア・ディ・フィオーリ・ダランチャ(オレンジの花のエッセンス)がクラシック。
仕上がりは周りのクロッカンテ(カリッと固いこと)、中がしっとりとしてさらに麦のプチプチ感が美味しさといえる。
義母と近所のシニョーラが作業中。
このドルチェの起源には諸説があるが、現在のレシピの基となるのは、修道院から生まれたものだとされている。たっぷりと使われた卵はキリストの復活を意味し、このドルチェの特徴である小麦の粒は新しい生命を表している。
この麦の粒の処理は大変時間がかかるため、今では家で作ることも少なくなったそうだが、義母はこのドルチェに手を抜くことを知らない。つまりは今年も彼女お手製のパスティエラにありつけた、というわけだ。
パスクア前日の朝、パスティエラの準備は始まる。といっても時間と手間のかかる工程である麦の粒の戻して牛乳で煮るところとパスタ・フローラはすでに前日に準備済み。
この日は近所に住むシニョーラが手伝いに来てくれたのだが、玄関のチャイムが鳴ったのは朝の7時前。
タルト生地をのばしているところ。
「起こしちゃってごめんなさいねぇ〜。でも、このお菓子は焼くのに時間がかかるから〜」と2人でいそいそとパスティエラ作りが始まった。
朝早くから近所のチーズ屋で購入した新鮮なリコッタチーズと他の材料をボウルで混ぜ、生地を伸して型にのばす。
「もっとよく混ぜたほうがいいかしら?甘さ、ちょっと足りなかったかしら?なんだか今日の生地は固いわね」
などと独り言とも相談ともとれる言葉をそれぞれが勝手に発しつつ、型に準備されたパスティエラは次々とオーブンに入れられる。
完成したパスティエーラ。出来上がりもよいが、
翌日、翌々日は味が落ち付いてさらに美味い。
その焼き上がりは…
う?ん、バツグンの美味さ。中はしっとり卵たっぷり、外側はカリッとしっかりとクロッカンテ。
前日もナポリ市内のオステリアで食事をした際に食べたのだが、また、今まで何度も口にしてきたのがこれはもう最高に美味い。
「これぞイタリア・マンマの味!!」
というセリフを実は毎年繰り返している。義母がこれで喜んでくれるから。
いづれにしても、こんな美味しいものを愛情たっぷりにマンマが次から次へと作るものだから、イタリア男がマンモーネ(マザコン)になるのも無理はない話なのかもしれない。
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特集 : わたしこんなの買ってはる 記:白浜 亜紀 2009 / 04 / 30