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わたしこんなの買ってはる
パドヴァのアンティーク市
イタリア・パドヴァ
私の住む北イタリアのパドヴァでは、毎月第三日曜日にアンティーク市(蚤の市)が開かれる。場所はチェントロ(旧市街地)の南端に位置する、プラート・デッラ・ヴァッレ(prato della valle)という大きな広場。
大きな楕円形の広場は、中央が緑の芝生に覆われている。広場全体は楕円形をしており、約2万平方メートルとされ、ヨーロッパでも最大級の大きさを誇る。中央部分は約8,800平方メートルの芝生の島になっており、その周囲を彫像がぐるりと囲む広大かつ美しい広場である。市民の憩いの場として親しまれている場所だ。
露店が並ぶ広場
暖炉用品などが多いのもヨーロッパならでは
さて、春めいてきた3月の日曜日。アンティーク市には多くの業者、そして訪れた人々でいっぱい。約120の業者が軒を並べている。
売られているものは家具、本、絵画、カーペット、衣類、食器、ガラス製品、キッチン雑貨、おもちゃ、アクセサリー、皮製品等々。本格的なアンティークの家具からガラクタまで、とにかくなんでも揃う。これらをゆっくりと物色するには結構な時間がかかるのだが、それがまた楽しいもの。
お目当てのものを、または偶然にも素敵なものを発見できることが面白くて、地元の人々もこの日は散歩がてらに広場に足を運ぶのだ。
一見ガラクタもよく見ると掘り出しものが......
イタリア各地、アンテーク市が開かれる町は数あれど、ここパドヴァは規模も大きく、特徴がある。というのも、ヴェネツィア共和国の傘下であったこの土地柄、当時のシニョーリ(貴族)達の使用していた持ち物が豊富なのだ。装飾品、食器、鏡など、時代は16、17世紀まで遡り、すっかり錆ついていたりもするのだが、その美しさは変わらず健在。
そして、その時代から現代までヴェネツィアの工芸品として世界的に有名な、ヴェネツィア・ムラーノ島のガラス製品(ヴェネツィアングラス)なども古いものから新しいものまで豊富に揃っている。グラスやシャンデリアなど、華やかな色合いや豪華な造りは、当時の貴族たちの豊かな生活がうかがえる。
私の好きなキッチン用品にも風情あり
この日の私の個人的なお目当ては、こうした豪華なアンティーク品ではなく、古いボタンや糸などの裁縫道具。
日本でヨーロッパのアンティーク裁縫道具を探している知人がおり、その命を受け、歩いてみた。裁縫道具なんて、今まで気にしたことがなかったが、あったかな......。
と、大きな広場を半分以上歩いたところに......あった、あった!!
露店にありがちな愛想の悪いおばさんが仕切るこの店の端に、色鮮やかなミシン糸が詰まった箱が。そしてその横にはこれも色鮮やかな指抜きがきれいに並んだ裁縫箱が置いてある。編み棒やら、ボタンやら。適度な古さのなかに新しさを感じるそれらは、とても保存状態がよく、きれいに整理されている。
これは価値がありそうだ。おまけに値段も大変に手頃。
色とりどりの糸がたくさん詰まった箱を発見
その横には、これまた可愛らしい裁縫箱が
ということで、今回のアンティーク市散策は、本来の私の興味対象から外れたのものを探すこととなったのだが、こうして何かしらの目的を持って見ていると、それまでまったく価値を見いだせなかったものに価値が見えてきたりする。こうなると、ほかの露店に雑然と並ぶ一見ガラクタにしか見えない雑貨やら壊れかけたおもちゃなども、目線を変えると価値あるものに見えてくるのかもしれない。
春の日差しが心地よい、日曜日の散策。さて、次回の掘り出し物は?
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特集 : わたしこんなの買ってはる 記:白浜 亜紀 2010 / 03 / 31