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わたしこんなの買ってはる
まだ、まだ、はるかなる春を待つ北国でのモチモチな楽しみ
北海道・札幌市
4月に入り、雪解けも一気に進んだ感のある北の大地、ここ札幌も、お花見まではまだ約1カ月は待たねばならない。
まだ雪が残る札幌市内、円山公園
この公園がお花見シーズンを迎えるのは、
早くてもGWのころ......
しかし、花の季節がまだはるか彼方にあったとしても、この時期、長〜く、暗〜く、寒〜い冬を乗り越えてきた者にとっては「何かしら春を実感したい!」というのが人情というもの。
そう、本州での桜の開花宣言をテレビのニュースなどで耳にしながら、まだ見ぬ桜に思いを馳せつつ、いただく桜餅はそのひとつ。
プチプチっとした穀物の存在感、モチモチっとした柔らかい食感。
『道明寺粉』に包まれたなめらかなあんことの絶妙なハーモニー。そして、そのデリケートな餅を優しくガードするように(実用的な表現で言えば、手がべたべたしないように)くるんでいる桜の葉のさわやかな香り。
この春の代表格である和菓子を毎年楽しみにしている私が、桜餅には2種類あり、私がこれこそが桜餅と信じ込んでいた道明寺粉のものが実は「関西版桜餅」であったという衝撃の事実を知ったのは、今を去ること○十年前、大学入学で住み始めた東京でのことだった。
北海道で桜餅といえば、道明寺粉製のこれ
桜餅を食べたくなって、近所のスーパーに入っている和菓子屋さんへ。ショーケースを覗き込み、「桜餅」を探す。
ん? ないぞ……。売り切れ?
私の脳裏には“道明寺粉”の桜餅しかないため、関東版、いわゆる焼き皮製のものはまったく視覚的に認識されず、店員さんに「あの?、桜餅はないんですか?」と聞いてみた。
店員さん、この人、どこ見てんのかしらん?と言わんばかりに不思議そうな表情を浮かべながら、
「ここにありますけど…」。
え! これがぁっ???????
あまりのショックで咄嗟に「道明寺粉」という言葉が出てこなかった私は、それでも必死に道明寺粉でできた形状を説明してねばってみたが、その店には私が探し求めた桜餅はなかった。何軒か巡って、ようやく探し当てた道明寺粉製の桜餅はショーケースの片隅にひっそりとたたずんでいたのだった。
桜餅には、どら焼きのような焼き皮であんこをくるんだ関東版桜餅「長命寺」、道明寺粉であんこをくるんだ関西版桜餅「道明寺」の二大勢力があり、北海道は関西系の流れを汲んでいたという事実との出会いは、いまだにかなりのインパクトを持って私の記憶に残っている。
あずきではなく甘納豆を使うのが北海道流!
この桜餅の一件に限ったことではないけれど、その土地では当たり前なのによそ者には奇異に映る物との出会いをセッティングするのは意外と楽しかったりする。
そんな私が道外からの客人を迎えると決まって紹介するのが、お赤飯。
スーパーのお総菜コーナーに連れていき、
「ねぇ? ねぇ? “北海道”のお赤飯はどう?」と、ピンクのもち米の上に散りばめられた甘納豆がいかにも甘そうな(実際、甘い!)お赤飯をお目通りいただくのだ。
ちなみに、そのお赤飯を買って食べてみた!という道外人は、今のところ、たったひとり……。
一期一会ということもあるのだから、せっかく訪れた「出会い」は、それがどんな出会いであれ、チャレンジして楽しみたいものですな。
とはいえ、いまだに桜餅と言えば道明寺粉製桜餅しか食べない私ですが……。
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特集 : わたしこんなの買ってはる 記:上村 知子 2010 / 04 / 22