買ってらっしゃいませ、お客サマー

ヴェネツィアの魚祭り『サグラ・デル・ペッシェ』

イタリア・キオッジャ

ヴェネツィア本島から南下約50kmにキオッジャという町がある。ヴェネツィアはラグーナ(潟)の上に築かれた町としてあまりにも有名だが、キオッジャはそのラグーナの南端に位置している。

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キオッジャの運河
ここはイタリア国内でも屈指の漁港の町。アドリア海沿岸では最大といわれている。もちろんヴェネツィア名物の数々の魚介料理はこのキオッジャで水揚げされたものを基本としており、ここを拠点にイタリア北部を中心とした多くの町に新鮮な魚介が運ばれていくのだ。

町の造りは運河にかかる橋の形などがヴェネツィアと似通ったところがあるが、観光で賑わうヴェネツィアとは対照的な、漁港の町特有の雰囲気がここにはある。

鼻をつく潮の香り、バイクで行き交う人々の日焼けした顔つき(今の時期はどこでもそうだが)にラフな服装、窓から吊るされたロープに架けられた洗濯物、そしてこの土地特有の訛り……。それらどことなく雑な雰囲気が、いかにも独特な港町らしさを醸し出している。 漁業が盛んであるこの町の中心には赤い大きなテントが目印の魚市場、業者向け卸市場であるイッティコ(ittico)などもある。そこで目にするのは、魚市場らしい威勢のいいかけ声をかけながら往来する、一見すると怖そうでもある体格のいい日焼けした男たち。市場の終る昼過ぎともなると、脇のカフェや集会所のようなところではカード・ゲームが始まったりと、彼らの日常がそこにある。 090728_02.jpg
仮設レストランの注文に並ぶ人々
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食事を楽しむ人々の姿。庶民的な雰囲気がいい。
そんな漁港町、キオッジャで毎年7月に開かれる恒例行事が、魚祭り(サグラ・デル・ペゥシェSagra del pesce)だ。第72回となる今年は7月10〜19日の開催。夜7時半ごろよりキオッジャのチェントロ(中心、旧市街)にある大通りにはたくさんのテントが建てられ、そこで魚料理が手頃な価格で振る舞われるのだ。

猛暑で夜になっても気温が下がらない日が続くなか、夜の涼しい海風が吹くころになるとどこからともなく多くの人々が足を運び、平日の夜であっても各仮設レストランの注文口は長蛇の列となる。

各店により多少の違いはあるものの、メインとなるのは舌ヒラメ、小アジ、小イワシ、エビなど魚のグリル“グリリアータ・ミスト”と、イカや小イワシ、タコ、エビなどのミックスフライ“フリット・ミスト”。そしてこれらの皿に添えられるのは、ポレンタ(トウモロコシの粉)のグリル。 090728_04.jpg
ミックスフライ“フリットゥーラ・ミスタ”
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ムール貝の一皿“ペオーチ・イン・カッソピーパ”
簡易式のテーブルに腰をおろし、隣り合った人たちとも会話を交わしながらいただく料理。少々冷めていたり、パスタもすっかりのびていたりなどもするが、これもご愛敬!?コッツェ(ムール貝)も人気でたくさんの人々が注文。丼状の器に山と盛られ、レモンが添えられているこの皿の名は、“ペオーチ・イン・カッソピーパ(peoci in cassopipa)”。辞書にも載っていないヴェネツィア弁だ。ペオーチはコッツェ、カッソピーパは魚貝の蒸し煮みたいなものを指す。実際にはタマネギを炒めたものとコッツェを器に入れ、そこに蓋をして殻を開けて仕上げたものだ。
その昔は漁に出ていた漁師たちの賄い食。揚げられた魚貝を鍋にぶち込んでできあがる、男の料理だ。

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調理担当の地元の女性たち
夜9時半を回るころ、ようやく夜も更けてくる。特設ステージでは毎晩催し物が開かれ、人々はコンサートやらダンス、劇などを見て楽しむ。毎年恒例の行事で、また出てくる料理も大して変わり栄えもしないのだが、このサグラは町の人を中心に近隣から足を運ぶ人も多い人気のもの。漁業で発達したこの町の、人々の感謝意が伝わる。

帰り際にレストランの仮設テントの中を覗くと……地元のおばさん達……普段はのんびりと過ごしているだろうことがわかる体つきをした女性達……が夜中まで続く忙しさに目を吊り上げながら汗を流し、一生懸命料理をつくる姿がなんとも微笑ましいのだった。











特集 買ってらっしゃいませ、お客サマー   記:  2009 / 07 / 28

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