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買ってらっしゃいませ、お客サマー
行きつけの大福屋で出会った地元の味
日本・福島
キムラヤの看板娘。いい笑顔ですねその店は、JR福島駅の構内、在来線と市電への分岐となるコンコースのど真ん中、これ以上はないだろうという立地に、バンと出店している。
その名はキムラヤ。
あのあんぱんの有名店ではない。地元にがっちりもっちりしがみついた腰の強い店である。
売っているものは、大福、どらやき、揚げ饅頭、季節には柏餅や牡丹餅、おはぎが並ぶ。全面的に中年以上、どうかすると高齢域にターゲットを絞った品ぞろえだ。
しかし、そのメイン商品である大福餅のバリエーションが、きわめてアグレッシブなのである。
大抵はこしあんにつぶあん。よもぎ大福、あってもごまか白あんくらいが妥当なところだろう。しかしキムラヤでこれぐらいは基本のキ、紫芋にかぼちゃは朝飯前、りんごにブルーベリー、いちご、オレンジ、チョコレート、バナナ……と、それらはおよそ和菓子と融合する予定などのなかったものばかりなのである。
これらを適当にまとめて3個入り、6個入りのパックで売っている。しかも安い。どっしりと重く、密度の高い大福が6個入って360円。ひとつ60円の計算だ。
ドドーンと6個入りここに私は日々のおやつのために、週に2度は立ち寄る。
ところが適当に詰めているから、まるで気に入らない詰め合わせになっていることもある。たとえば、ブルーベリー3個にりんご2個、こしあん1個、などとなっているのだが、私はごまあんを3個にしてもらいたい。
そこで売り子のおばちゃんに交渉する。
「ごまあん3つとバナナ1、豆2にしてくれない?」
「いいよぅ」
おばちゃんはその場でパッケージをむしり取り、別のパックに入れ替えてくれる。
「はいよ360円」
うれしくて私はついつい笑顔で声をかける。
「わざわざ手数かけてもらって悪いね。ごまが大好物でさ」
「知ってるよぅ。いつもありがとね」
おばちゃんは会社の帰りに頻繁に寄る私をすっかり覚えてくれていた。しょっちゅうごまあんを買うことも。
いいですね、ごま
こちらよもぎとバナナです「いつもありがとうございます、またどうぞー」
高らかに響く挨拶が少し恥ずかしく、誇らしいのはなぜか。提げた大福がいつもよりちょっと重い気がする。
そして今月、新しい味に出会った。
当地は桃の産地である。よって桃餡。ももあん、である。なんとも可愛らしいこの字面。
私の行きつけの店は大福屋。
実は、ある時間を過ぎると、半額になるところがまた見逃せないのだ。
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特集 : 買ってらっしゃいませ、お客サマー 記:端野 輝 2010 / 07 / 29