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あきることなく買い物三昧
かぼちゃの収穫祭
イタリア・ヴェネト州
カボチャを売る屋台。色とりどりのカボチャが並ぶ
イタリア各地では収穫の秋となると、農産物の各産地において『サグラ』と呼ばれる収穫祭が行なわれる。私の住むヴェネト州も然り、週末は各地で野菜や果物の今年の収穫を喜び分かち合い、そして季節の移り変りを楽しむという意を含めた行事として様々なサグラが開催されている。
10月中旬のある日曜日、ヴェネト州パドヴァ県下、ピオーヴェ・ディ・サッコという小さな町で行なわれたのが、サグラ・デッラ・ズッカ(カボチャの収穫祭)だ。パドヴァの長距離バス用乗り場を出発し、約30分ほどで町の中心地に到着。
ちなみに“サグラ・デッラ・ズッカ”という呼び名は一般的なイタリア語だが、この祭りの本当の名前は“スカー・バルーカSucà Barùca”という。“スカーSucà”は“ズッカZucca(カボチャ)”のヴェネト訛りの発音だが、“バルーカBarùca”も同様に訛りの入った発音。正しい(?)イタリア語だと“ズッカ・バルッカZucca barucca”といって、この地域で収穫されるカボチャの品種のことを指す。
町の中心はドゥオーモのある広場。ここを中心に形も色も様々なカボチャや季節の野菜を売る屋台、民芸品を売る屋台、そしてこの時期の収穫物であり、この地方独特の食べ物であるポレンタ(トウモロコシの粉)を売る屋台やらが並ぶ。
トウモロコシの皮をむきているおばあちゃんたち。
衣装がとってもよく似合っている
カボチャのリゾット。2ユーロ
そして道路上にはトウモロコシ畑が出現。
この地域でのトウモロコシは、カラカラに乾燥されるまで残しておいたものを収穫、さらにその後も何日も天日にさらしてより乾燥させ、実をはずして粉状に挽く。収穫の季節であるこの時期には、農家の軒先には干からびたトウモロコシがゴロゴロと転がっている光景が見られるが、これも同地ならではの風物詩。
こうして挽かれたものは湯を沸かした鍋でゆっくりと煮て、ドロドロの粥状のようにして肉や魚料理の付け合せとして食べる。
このポレンタ作りの光景をここで再現しているのだ。そこでは地元のおじいちゃん、おばあちゃんたちが古き良き時代を思い出すかのような衣装を身にまとい、当時からの道具を用いて見せている。なんとも言えずに絵になるもので、こんな風に近所同士、井戸端会議をしながら日常の作業が繰り返されていたのだ、ということが想像できて楽しい。
鶏肉とカボチャ、キノコの煮込み。3ユーロ
仮設レストランでの調理現場
そしてメイン会場である広場には、人々いちばんのお目当てである仮設レストランのテントが大きく設けられている。そこでは、地元のレストランやパン屋、お菓子屋などがそれぞれの料理を分担し、カボチャ料理が格安で振る舞われる。
カボチャを使った料理としてもっとも代表的なものは、カボチャのリゾット。ここでももちろん、一番人気。
会場の屋台にて。ハロウィンも近いことから、
それにちなんだグッズも並ぶ
行列してでも食べたいその皿は、カボチャ特有の鮮やかな黄色いリゾットの上にこれまたこの地域の代表的なチーズであるグラーナ・パダーナを載せて提供されている。ふっくらと仕上がりよく料理されたそれは、カボチャのほのかな甘みに温かいリゾットの余熱で少し柔らかくなったグラーナの塩気とが、なんとも絶妙な美味さ。プラスティックの皿で食べるのはもったいないくらいだ。
そのほか、セコンド・ピアットには鶏肉とカボチャ、キノコの煮込み、ドルチェにはカボチャのオーブン焼きやカボチャのビスコッティなど。ワインを片手に少々寒くなり始めた秋風をうけながらの昼食もなかなかイキなもの。
小さな町はこの祭りを楽しむために地元の家族連れたちで歩くのも困難なほどの賑わい。秋の休日を楽しむ、素朴ながらに楽しい行事のひとつだ。
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特集 : あきることなく買い物三昧 記:白浜 亜紀 2009 / 11 / 02