冬にそなた、なに買った?

1枚の世界――ウズベキスタン、陶芸の街々を歩く

ウズベキスタン・ギジュドゥバン、リシタン

真っ赤に燃える窯から、ゆっくりと平皿が取り出される。額に大粒の汗を浮かべた職人が、焼き上がりを確認し、安心したように微笑んだ。炉から皿を取り出すこの一瞬が、もっとも楽しみで、そしてドキドキする瞬間だと言う。

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ギジュドゥバン陶器
ウズベキスタンを代表する観光地ブハラから、北東へ車で約30分。昔ながらの喧騒が残るギジュドゥバンは、中央アジア有数の陶器の産地として知られている。
この地で陶器工房を営むアブドゥッロさんは、ギジュドゥバン陶器を作り続けてきた職人だ。彼のもとには多くの弟子たちが集い、伝統技法を守り続けている。
ギジュドゥバン陶器の特徴は、その模様だ。黄色や深緑の空に、星や太陽などの宇宙を、そして、砂色の大地や緑溢れる植物を、大胆に描き出す。見とれるような美しさはないが、じっと見つめていると、何かを語りかけてくるような、そんな感覚にとらわれる。
「ギジュドゥバンの陶器に描かれているのは、職人の心のうち。自分の世界を表現しているんだ」
アブドゥッロさんはそう話す。心穏やかな日には、淡い色の植物や花を描きたくなるし、物悲しい日には、深い星空を描くと言う。

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こちらはリシタンの陶器工房
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絵付けをするギジュドゥバンの職人
ただ工房を見学するだけのつもりだった。
しかし気がつくと僕は、何枚かの小皿を手に値段交渉を始めていた。
首都タシケントから、東へ車で約5時間。雄大な山道を超えた先、キルギスとの国境沿いに、リシタンという街がある。ここリシタンも、ギジュドゥバンと並ぶ陶器の一大産地だ。この地の陶器生産の歴史は、実に1000年以上も遡ることができるという。フェルガナ盆地(中国名:大宛)で採れる良質の陶土と中国の技術、イスラーム世界の魅惑的な文様芸術が混ざり合って生まれたリシタン陶器は、シルクロード世界においても傑出した美しさを誇っていた。
そして今でも、多くの職人が、フェルガナ盆地の土と、伝統の工法にこだわって皿作りを続けている。

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鮮やかな青が美しいリシタン陶器
リシタン陶器の特徴は、なんといってもその色合い。皿一枚一枚に描かれる鮮やかな青は、見る人の目を引き付けて離さない。僕自身、初めてこのリシタン陶器の工房を訪ねたときには、そのあまりの美しさに言葉を失い、しばらくその場を動くことができなかった。

哲学的な深さを湛えるギジュドゥバンの陶器と、鮮やかな青の世界が美しいリシタンの陶器。たった一枚の皿かもしれない。しかし、その皿に思いの丈を込める職人たちがいる。そっと皿に触れてみれば、職人たちの世界が脳裏に浮かぶはずだ。











特集 冬にそなた、なに買った?   記:  2012 / 03 / 05

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