勝手に読書録

中年ちゃらんぽらん

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作者名:田辺 聖子
ジャンル:小説
出版:講談社文庫

中年ちゃらんぽらん(講談社文庫)


「夫婦とはお互いに空気のような存在だ」という言い方がある。
何かの縁で、あるいは様々な紆余曲折を経て一緒になったにせよ、時がたつにつれ男と女の関係と言う意味合いは失せる。
まったく意識せずに済む空気ならまだしも、時として互いの存在がうとましくさえある。
が、ここからが肝心。そんなことはおくびにも出さない。言いたい文句も、口に出すのは、ほんの何分の一。かといって、ありのまま容れたわけでもなく、あきらめきったというのでもない。
口争いで気持ちを尖らせる方が、我慢するよりなお面倒という、いいかげんな選択をしながら毎日を過ごす。
私が思うにおよその夫婦が遅かれ早かれ、そのモードにシフトしていく。

「中年=ちゃらんぽらん」の真っただなかにいる主人公・平助と京子。
たとえば、それぞれが自分なりの箱の中に納まって日々を暮らし、時折箱のフタを上げてお互いを一べつするというスタイルができあがってる。相手の箱のフタを無理矢理押し開けて、中をのぞいたりはしないという分別もある。


しかし、いかに平々凡々な暮らしといえども、二つの箱を取り巻くさらに大きな箱・子供を含めた家庭や、家族の各々が所属する社会の中で、たまには一筋、二筋と影がさすことがあるのも世の常。
そういう時、多くを語らずとも無言のため息を共有できる相手といえば、とどのつまり「つれあい」ということになる。
失った情熱の代わりに「共感」を得る過程が中年なのだと二人は知る。愛や許しといった息苦しく、胸詰まるようなものではなく、そこにいるだけで体温が伝わる距離感である。
そしてまた、その体温はほかにも伝わり、二人別々の活動の中での知り合いだったはずが、案外じゅずを繰るように回りまわってまた元に戻り、そこに人の輪ができる。

知り合いの知り合いで「ええやないか」と、ものごとをやり過ごすほどあいを知った者どうし、ひょんなことで「ちゃらんぽらん連」を組んで、本場アワ踊りにくりだすあたりが圧巻。
大阪弁のテンポと面白さを満喫させる、中年賛歌。「聖子節」を思う存分、ご堪能あれ!!












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