勝手に読書録

木を植えた男

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作者名:ジャン・ジオノ(訳)寺岡 襄 
ジャンル:小説?
出版:アイビーシーパブリッシング

木を植えた男(洋販ラダーシリーズ)


なぜとはなしに最初から読み始めた。ぱらぱらっと頁をくった時にきれいな挿絵が目に飛び込んだせいかもしれない。

たいがいは何かを読み始める時、さきに作者・訳者後書きに目を通す。
映画の試写なら、パンフに目を通す。ストーリーを追うのに気を取られすぎたり、時代背景や社会背景、作者の製作意図を測るのに頭を回したりしていると、大事なものを見落としてしまうからだ。
「大事なもの」というのはもちろんストーリーの「真実のありか」といったたいそうなものも指すが、それについて原稿を書くことを背負っているものにとって の「きかせどこ」でもある。所詮人様のフンドシで相撲をとるにしても、そのとり方「きかせどこをどう拾うか」は唯一、表現者としての立脚点でもある。

不思議な世界だった。おとぎばなしのような、寓話のような、体験記のような、フィクションのような…。その区別が最後まで明確にならない。
読み終わって、いったん本を閉じる。そしてじっとしている。あるいは目を閉じて瞑想したくなるかもしれない。神聖なエーテルに心地よく身を任せていたくなる。

ただ黙々と木を植えつづける寡黙な男の話し。世の移ろいに目もくれず植えつづけた木が林になり、森に育ち、そして国土となる。あたかも、その男の命に限りがなかったなら、世界は豊かな森でおおわれるという連想が自然に導き出される。
たとえばその男が、木が、森が何の象徴なのか、作者の意図はどこにあるのか、そんなことを考えてみるより、ただただ「緑におおわれた地球」を想って静かにしていたいとおもう。

少し時間を空けて訳者後付けを読む。と神聖な香気がどこから漂ってきていたのかが分かる。
が、いつものように先に読まなかった偶然に感謝する。そうでなかったら、味わえなかったものが確かにあったように思う。大事なものが一つふえた。
だから、たまたま筆者がそうしたように、素直に順を追って読むことをぜひおすすめする。
一本でもいい、木を植えよう。そう思う。












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