勝手に読書録

サグラダ・ファミリア 聖家族(文庫)

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作者名:中山 可穂
ジャンル:小説
出版:新潮文庫

サグラダ・ファミリア 聖家族(新潮文庫)


通常とは異にするセクシュアリティーを有す者の恋物語の底に、読者は別の世界を見る。
「恋愛」という形を借りた一つの家族の誕生と魂の再生の物語なのである。

男の要らない女と女の要らない男、そしてこども。
一見、イレギュラーな形の中にしか成立し得ないかに見えて実は、いずれそこらにある夫婦も、様々な愛憎を乗り越え、あるいは心底深く抱いたまま、互いを運命の共有者として、もしくは人生の共犯者として認めたとき「聖家族」として再生するのかもしれないとさえ思わせる。

主人公の響子と透子が猫を埋葬した同じ桜の樹下にスヤスヤと眠っている透子の忘れ形見・桐人。
いなくなってしまった桐人がそこに見出せると直感する響子。
再生のための痛みを象徴する二つのシーンは、呼び合って切ない。
人は亡くしたものを埋葬する時、一緒に胸のうちの何かを埋めるのだ。自らの「生」を生きなおすために。
そして響子の奏でるピアノもサクラダファミリアの誕生を謳って「他の存在を必要とする音」として命を吹き返す。

読み終えて副題の「聖家族」をしみじみ味わいなおす。












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