勝手に読書録

おーい!竜馬

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作者名:武田 鉄矢(原作)/小山 ゆう(作画)
ジャンル:コミック
出版:小学館

おーい!竜馬(全12巻完結セット)


坂本竜馬との最初の出会いは、おそらく歴史の授業だったと思うが、坂本竜馬の名前を授業で聞いた記憶がない。薩長同盟を習ったのは覚えているが......。そんな筆者が坂本竜馬に心酔するようになったのは、多くの方がそうであるように、司馬遼太郎の『竜馬がゆく 』の存在が大きいが、実はそれと同じぐらい武田鉄矢の存在が大きい。

映画『思えば遠くへ来たもんだ 』で、現実の武田鉄矢そのままに竜馬を尊敬する教師を演じ、『幕末青春グラフィティ Ronin 坂本竜馬 』では、ついに竜馬本人を演じ......『3年B組金八先生 』でも竜馬の逸話を語っていたような記憶がある。
金八先生の苗字の「坂本」は当然、坂本竜馬からいただいたものだ。バラエティ番組などでもことあるごとに竜馬への愛を語っているのもよく知られている。武田鉄矢をそれほど好きだったわけではないはずだが、氏が語る竜馬には何か惹かれるものがあったのか......次第に、坂本竜馬を歴史上の偉人としてではなく、魅力的な人物として認識するようになったように思う。

そんな氏が原作を担当したのが『おーい!竜馬』だ。作画は『がんばれ元気 』、『あずみ 』などで知られる小山ゆう。小山ゆうもまた、『おれは直角 』、『いざ!!竜馬(たつま) 』などで、竜馬を想起させるキャラクターを描いている竜馬好きだ。そんなわけで、個人的には、連載前からこの二人が描くなら間違いないだろう、と思っていた。
小説や漫画、映画などでいろんな竜馬像が描かれているが、『竜馬がゆく』が竜馬像の基本だった筆者としては、満足いかない"竜馬もの"ものも多かった。実在した人物に対してそれも変なはなしなのだが、とにかく『竜馬がゆく』から大きく外れてほしくはなかったのだ。

そして期待どおり、二人が描く竜馬は、『竜馬がゆく』から大きく外れず、しかし、模倣ではなくさらに魅力を増して描かれていた。『竜馬がゆく』である程度作り上げていた自分なりの竜馬像は、『おーい!竜馬』で画が付いたことにより、より完璧(?)になった。
あの有名な写真で知られる竜馬の姿からはちょっと外れるかもしれないが、小山ゆうらしい太目の線で、飄々としていながらも表情豊かな竜馬が、日本のために東奔西走する姿がいきいきと描かれている。

現在は歴史研究が進み、脱藩直後を除き、竜馬の行動は一日単位で判明しているという。司馬遼太郎は『竜馬がゆく』を執筆する際に当時の天気まで調べたというから恐れ入るが、歴史ものを書くということはそういうことなのかもしれない。が、『おーい!竜馬』は史実をそのまま描くのではなく、いくらかのフィクションを交えて描かれている。
史実にこだわる向きには不評かもしれないが(『竜馬がゆく』だって実話を基にしたフィクションだが)、個人的にはそのフィクションが作品の魅力をさらにアップさせているように思う。例えば人斬り以蔵こと岡田以蔵。『竜馬がゆく』では竜馬の子分のような存在として描かれている人物だが(実際にもそうだったらしいが)、この作品では武市半平太も含め、竜馬の幼馴染の大親友として描かれている。このことが、後の悲劇をさらに辛いものとしているし、土佐の身分制度、上士と郷士との対立をよりわかりやすくもしている。

史実と違う部分があろうがなんだろうが、竜馬の人たらしなその魅力と、幕末に生きた志士たちの熱く真摯な生き方は十二分に伝わってくる。男に生まれたなら彼らのように命を燃やしたいものだ、と思わずにいられない。例えば、(これはフィクションではないが)幕軍と壮絶な死闘の末に吉野山で憤死した土佐郷士、吉村寅太郎の辞世の句はこうだ。

「吉野山 風に乱るるもみじ葉は 我が打つ太刀の血煙りとみよ」
......吉野山に秋が来て、赤いもみじ葉が風に舞っていたなら、この吉村がまだ幕軍と戦っているのだと思い出してくれ......

何度読んでも泣けてくる。でも、これは歴史の授業では習っていないはずだ。教科書に載っていたのかもしれないが、個人的には、吉村寅太郎なんて『おーい!竜馬』で初めて知った。その最期も含めて。 古い友人が、竜馬が好きじゃなかったら男じゃねえよ、と言ったことがある。
これには大いに同意する。竜馬に限らず、幕末、明治維新に心が震えなかったら男じゃねえよ、と思うのだ。もちろん女性だって、実在した彼ら登場人物の中に心惹かれる男が出来ると思う。竜馬をはじめ、高杉晋作、桂小五郎、古い少女マンガの主人公のような沖田総司など、いろんなタイプの役者が揃っている。

冒頭に書いたとおり、歴史の授業なんてほとんど覚えていなかった筆者が、明治維新のことならなんでも聞いてくれ(ほんとに聞かないでね)というぐらいに詳しくなってしまった。年号なんかは覚えていないが(年号より内容だ)、安政の大獄がなぜ起こったのか、薩長同盟とはなんなのか、大政奉還とはなんなのか......そんなことはお茶の子さいさいだ(?)。学校教育に物申す! なんてつもりはないが、歴史の教科書なんかより、『おーい!竜馬』を読んだほうがしっかりと歴史を理解出来ますよ、とは言いたいと思っている。ぜひご一読を。
(文中、敬称略。また、当作品に合わせ表記は「竜馬」で統一しました)












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