勝手に読書録
糸子の体重計
作者名:いとう みく
絵:佐藤 真紀子
ジャンル:児童図書
出版:童心社
糸子の体重計
「かあちゃん取扱説明書」に続いて作、絵ともに同一の手になる作。これもまた、かあちゃん、とおちゃんカテゴリーの人のみならず、大人に読んでもらいたい。
ストーリーの中心にいるのは小学校高学年(少なくとも中学年以上)。杓子定規な大の大人や偉そうな頭の固い大人にありがちな、表向き「成長発達程度にそぐった」など正統そうに見える表現でもって、その実、子供全般を幼稚化してとらえる傾きは、かけらも見えない。恐らく等身大に真正面から視線を当てていると感じさせる。
その上で、社会状況や当該時代文化や風潮は言うに及ばず、いわゆる勝手な「大人の事情」に敏感に影響を受けつつ、しかも雄々しく自立への道を微々たるといえども一歩ずつ確実に歩みを進めようとしている子供像を照らし出してくれる。
当然のことながら、理屈を言えば「そういうことですよ」ということであって、ページを繰っていて説教めいた線香臭いきらいは皆無。終始、楽しく読み進められる。
楽しく読みながら、よくよく考えれば、どこか背中がチクチクしたりする。油断していると、遠慮会釈ない子供の視線が、「ほら、あなたの背中にも刺さっていますよ」とささやく声が聞こえてくる。
つまりは、相手が大人であれ子供であれ誰であれ、先入観や個的な我執にとらわれることなく、人を見るにはまず己の瞳の曇りを拭うところから始めるのが順序というもので、内省有りきの他意識ってことでしょうね。
ま、そうは言ったが、そんなことはまったく気にかける必要もなく、ただただ主人公らと混ざって「ガハハ」と笑ったり、胸をキュンとさせたり、しんみりしたりすれば、それで全然OK! それが最高に楽しい作品であることは間違いがない。
“かあちゃんのトリセツ”だが、まだマゴっこに返却していない。返す時にはぜひ、本作を一緒に手渡そうと思う。