初恋物語
初恋らしきもの
初恋かあ… しばらく腕を組んでみたところで、盛大な山あり谷ありの人生。さんざん昇り降りした後「さて最初の峠はどんなだったかいな」って話し。
覚えているやら、いないやら。
そもそも。どこからを“恋”と呼ぶのか?分けるのか?はたまたこれは単なる気が多い証拠なのか?
若いときなんて日々、無責任の数珠つなぎ。いつだって気持ちは向こう見ず。あっちもこっちも興味を呼ぶし、そそられる。
1時間目の数学では黒板に見事な正解を導きだす秀才が神々しく見え、2時間目の体育で誰より足の速い運動バカを凛々しく思う。絵が巧いのもそうだし、サッカー部だって負けちゃいない。ぜんぶ好きだし、そうじゃないとも云える。いい加減。つまり、そんなもの。
ならばと考えるに、恋には痛みが付き物。脇役「涙」の登場こそ、初恋の印と呼べるかも。
じゃそれは「いつ?どれ?」これまた厄介。
頭を抱えて思い当たったのは、かなり成長した高校1年生。ありがちな隣の席の子。ぜんぜんタイプじゃなくても日々親しくするうちに気が合い、そんなつもりになるってアリマス。仲良しついでに恋の相談まで頂き、それが自分の親友でしたってオチも月並み。(涙はここね)
でもクラスが替われば、ケロッとしたもの。半年も経つと、そのキレイな涙はすっかり乾き、他校で年上のボーイフレンドめでたく登場。そんなウワサほど、広まるのに時間はかからない。特に話すこともなくなった彼の耳にも、やがて届いた様子。廊下で時々、遠くから少し心配そうな顔でこっちを見ていることがあったから。何か言いたそうだったのに「もうオマエにくれてやる涙はないぜ」と知らんぷりした意地悪なわたくし、若干17歳。
大したドラマじゃないけど、あの瞬間の視線のやりとり…少し行き違って、少し留まるような、気持ちの瞬間の交差。おそらく、こんなことを恋と呼ぶのでしょう。
そう云っちゃうと当時のボーイフレンドの立つ瀬ないけど、浮き世なんてまあ…そんなもんでしょうね。
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