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VIVA ASOBIST
vol.28:広田行正・千悦子
海辺の家で開かれるふたり展
【プロフィール】
広田行正(写真右)写真家。気持ちのいい水、海、地球の色をテーマに世界の水まわりで撮影を続けている。湘南近辺やこどもたちといった、身近な風景もライフワークのひとつ。
広田千悦子(写真左)水彩画、焼き物などのもの作りや、暮らしのことを文章でつづっている。テーマは、ほっとできるもの、やさしい心。
三浦半島の海沿いをバスで行き、秋谷というバス停で下ります。小さな谷を見下ろしながら急な坂をのぼっていくと、緑が色濃くなっていきます。すると、まもなく、こぢんまりとした民家が見えてきます。ここが広田夫妻の自宅展の会場なのです。
広田夫妻は結婚後、しばらく都会に暮らしていました。夫の行正さんが国内外に取材に出ることが多いため、便利だったこともあります。 でも、ふたりとも、もともと自然が大好きだし、そろそろ子どもが欲しい。そこで、海沿いの家に移り住むことを考え始めました。自然の中で子育てをしたかったからです。
「夫は不在のことが多く、正直いって私は不安だったんです。誰も知り合いのいない山の一軒家にポツンとひとり残されてしまうわけでしょう」と妻の千悦子さん。
「でも、最初にこの家を見に来たとき、空をおおっていた雲の切れ目から、海に日が差し込んできて。その美しさに涙が出てしまいました」
それで、千悦子さんは「大丈夫、ここで暮らしていける」と確信したそうです。
千悦子さんは絵を描くことや物づくりが好きで、いろいろな作品をつくっていました。
海辺に移り住んでしばらくたったころ、夫の写真と妻のアート作品をコラボさせた展覧会を計画。都内でギャラリーをさがしました。でも、思うような場所になかなか出会えません。そんなとき「自分ちでやればいいじゃない」という友だちのひとことに「なるほど!」
まさに、灯台もと暗しだったわけです。
「でも、こんな遠くまで、みんなが見に来てくれるの?」という不安をもちつつ、知り合いや親戚に案内状を送ったり、地元のスーパーの掲示板に告知したり。
そんなふうに始めた自宅展は、今年で12年目。クチコミで評判になり、2週間の開催期間に500人近い人々がやってくるそうです。リピーターも少なくありません。
あたたかい手触りの千悦子さんの陶芸作品や明るい色づかいの水彩画。見ているうちに、心がほどけてくるようです。
なかでも注目なのが、おじぞう天使。「お地蔵様をつくりたくてあれこれとやってみたけれど、なかなか納得のいくものができなくて…。で、思い立って、天使と合体させちゃったんです」千悦子さんは、いたずらっぽく笑います。
ほのぼのとした顔のおじぞう天使はとても人気があって、どんどん売れてしまうそうです(私も買いました)。
夫の行正さんは、海の写真をメインに発表してきました。最近は途中で家族に加わった愛犬サンの写真にくわえて、妻に影響されたのか(?)、サンがキャラクターのイラストTシャツやトートバッグ、小さな陶器の置物などが評判になっています。
こちらに来てから生まれ、今年小学4年生になった息子さんの友だちもやってきます。
来訪者は居心地がよくて、ついつい長居してしまいます。そんな人たちを気遣って、千悦子さん手作りのおにぎりやお菓子も置いています。
この展覧会の人気の秘密は、作品もさることながら、夫婦の人柄にあると実感しました。
広田夫妻の自宅展は年2回、夏が始まるころと秋が終わるころに開かれます。
開催情報は、こちらからhttp://www.peace-blue.com/
湘南ちゃぶ台らいふ 広田 行正・広田 千悦子(著) |
ビーチコーミング学 池田 等(著) 広田 行正(写真) 広田 千悦子(イラスト) |
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読み物 : VIVA ASOBIST 記:こばやし まさこ 2007 / 05 / 01