VIVA ASOBIST

vol.39:野澤鯛損
「釣りキチ三平」発「釣りバカ」経由のフィッシングメッセンジャー

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【プロフィール】
1964年、山梨県生まれ。
2000年11月 大手釣り具量販店を退職し、フィッシングメッセンジャーとして独立。

i-nac国際アウトドア専門学校講師
フロンティアアドベンチャー「やまなし少年海洋道中」環境主任
その他、多くの自然体験・環境教育企画を手がける。

【著書】
釣れま仙人のたわごと

vol.39_01.jpg 春まだ浅い瀬戸内海の島で、年1度の海びとの集い「海辺の環境教育フォーラム」が開催された。フォーラムには、自然保護に携わる人、水族館関係者、教育現場の人など、名前の通り海の環境教育に関わる人々が参加している。
その中で、フィッシングメッセンジャー・野澤鯛損さんはちょっと異色の存在である。
フィッシングと海の環境保護とは対局にあると考えられているからだ。
「釣り人は意識が釣りそのものに集中しているので、視野がとてもせまいです。目の前のゴミが目に入っていても見えていない。だから、切った釣り糸も放置してしまいがちなんです

そんなふうに話す野澤鯛損(たいそん)さんがフィッシングメッセンジャーになったきかけも、釣り人が出すゴミだった。
鯛損さんは幼いときから釣り好きの父親に連れられ、物心がついたときには海に釣り糸を垂れていたという。社会人となって一般企業に就職するも、25歳で釣り具量販店に転職し店長に昇格。安定した収入+余暇で釣りを楽しむという、順風満帆の釣り人生を歩んできた。
そんなある日、鯛損さんは海辺で釣り人が出したゴミに遭遇した。自分の店で売ったかもしれないものがゴミとなって捨てられていたのである。
「もしかして、自分は釣り具ではなくゴミを売ってしまったのかという気持ちが起こったことがきっかけでした」

vol.39_02.jpg フィッシングメッセンジャーとは、鯛損さんが長年温めてきた「釣り人と自然をより身近にし、釣り人をトータル的にサポートする事業」である。
鯛損さんは35歳のとき一大決心をして釣具店を退職し、そのフィッシングメッセンジャーとなった…とはいうものの、すぐに仕事が来ることはなかった。そうそう、世間は甘くない。それならばと、アルバイトをしながらせっせと資格を取ることに。

フッシングマスター(上級釣り指導員)、公認釣りインストラクター、小型船舶操縦士、日赤救急法指導員、自然観察指導員、ネイチャーゲーム指導員、プロジェクトワイルドファシリテーター、スノーケリングインストラクター、余暇生活相談員…もっとたくさんあるのだけれど、きりがないからこの辺で…。でも、取得資格をみれば、鯛損さんが釣りを通して具体的にどんなことをしたいのかが見えてくる。


vol.39_03.jpg 「学ぶことはおもしろくて、2年間ほとんど勉強に費やしました」と鯛損さん。
その後、海辺の環境教育フォーラムに参加して、さまざまな海びとと関わることになった。毎年、鯛損さんは釣り竿持参でフォーラムにやってくる。そして参加者に声をかけて、早朝の釣りに誘う。
この日も朝から桟橋に集合した。ルアーフィッシングの狙いはメバル…だけど、なかなか釣れない。曇っているからかな…それとも、水温が低いからかな…。
やがて、太陽が顔を出したころやっとメバルがかかり、わあと歓声があがる。

「釣りには必ず結果があって、釣れることにも理由があって、釣れないことにも理由があるんです。『あ、こうだったから釣れたんだ!』と、知らず知らずのうちに海辺の自然が教えてくれているんですね」
実は私も釣りに偏見を持っていたのが、鯛損さんを通して本当の釣りの楽しさに目覚めたひとりである。

vol.39_04.jpg 鯛損さんは「フィッシングメッセンジャー」という名称を商標登録している。
「単に釣り好きというだけで海という自然に無自覚。そんな人に名乗って欲しくないのです。環境や自然のことをふまえて釣りの楽しさを伝える。そういう人にこそ、どんどん名乗って欲しいのです」
鯛損さんは最後にこんな言葉で結んでくれた。
「フィッシングメッセンジャーとして、私を育ててくれた釣り業界に恩返しがしたいんです」











読み物 VIVA ASOBIST   記:  2008 / 04 / 01

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