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VIVA ASOBIST
vol.44:松岡広子
皆さんに美味しい紅茶と出会って欲しい
「美味しい紅茶に出会えれば、きっと紅茶を好きになります」 と語るのは、インターネットショップ「Tea Please」を運営する松岡広子さん。確かに、コーヒーはスターバックスをはじめ、こだわりを持つ喫茶店がたくさんある。しかし、上質な紅茶を出すお店を知っている人は少ないのではないだろうか? レストランで紅茶を頼んでも、中にはティーバッグが入っていることも多い。そこで、松岡さんは「皆さんに、美味しい紅茶を知ってもらいたい」と、ネットショップを開いたのだ。
松岡さんと紅茶との出会いは、
「私の兄が喫茶店を経営していて、そこで紅茶を飲んで美味しいな、と思ったのが最初です。興味を持ち始めたころ、たまたま目に入った紅茶教室の広告が目にとまりました。娘が3歳だったんですが、聞いてみたら連れてきても良いというので、通い始めました」
「3歳児って、紅茶を飲めるのだろうか?」 と半信半疑だった。
ところが、教室から帰ってきて、家で紅茶を飲むと娘が銘柄をブラインドで当ててしまう。まだ字も読めないのに、硬水や軟水のことをしゃべったりする。
子供ってすごい!!」
いわば味覚の英才教育が期せずして成り立った。前代未聞の「味の達人!」誕生に期待できそう。
教室に通ううちに、先生のアシスタントを勤めるようになり、紅茶の勉強も開始。紅茶のレクチャーをするための資格も取った。
その後、ボランティアでパン屋の手伝いをはじめた。
「私はパンも好きで、府中にある職人気質のパン屋があったんです。生地が甘くなくて、通好みの媚びないパンを焼くんです。アーティストで、話も合いました。そこで、娘が通っていた幼稚園に行って注文を取って、配達したりしていました。その代わりに、知り合いの輸入元から私が入荷した紅茶を置かせていただき、販売していました」
職人気質のアーティスティックな部分に共感したのだろう。あまり、売れ行きはよくなかったそうだが、その熱意と積極性には目を見張る。
行動力を示すエピソードは他にもある。3年前にBankART 1929で行われた『食とアートのコラボレーション』というイベントを開催すると耳にすると、早速応募。選考の結果、そこにも出店したそうだ。もちろん、メニューは紅茶。それに、チョコレートとお酒も用意した。
美味しい紅茶を知って欲しい、という思いは募るばかり。店舗が欲しかったが、まずはお金がないので、インターネットで通信販売をすることに。ご主人も物書きなので、ホームページを作ってもらい、2005年11月にオープンした。
ショップ名は「Tea Please」。「紅茶をどうぞ」というメッセージをダイレクトにつけた。
扱う商品は、オリジナルブランド「Tea Please」で、紅茶はダージリン、アッサム、ルフナが基本。これからは、数も増やす予定という。仕入れ方法を聞いたところ「紅茶の葉ごとに、気に入った輸入元があるので、それぞれ仕入れています」とのこと。
「Tea Please」のパッケージは、なんと宇野亜喜良氏のデザイン。宇野氏は、昭和期の日本を代表するグラフィックデザイナーで、不思議な雰囲気の少女が有名。ダメ元でつてを頼って依頼したところ、快諾!
凄すぎて、絶句。松岡さんの積極性がここでも功を奏した。紅茶の雰囲気にもぴったりだ。
興味はあるが、紅茶の選び方も飲み方もわからない向きには、とっておきのアドバイスをしてもらった。
「ぐらぐらと沸騰させたお湯を、茶葉に注いで、蒸らすだけです。だから、ティーポットがなくてもいいんです。大事なのは、きちんとお湯を沸騰させること。後は、好きなタイミングで茶漉しを使って、カップに入れます。濃かったらミルクを入れれば問題ありません」
これなら、自分でもできそうだ。紅茶は直射日光と高温多湿が苦手だが、未開封で日光の当たらない冷暗所なら2年は持つという。ただ、万人に共通してオススメできる紅茶というものはない。
「何が美味しくて、何がまずいかというのをご存じない方が多いと思います。それは、出会ってないからなんです。私も最初はわからなかったんですが、ある日渋いけど本当に美味しいダージリンを飲んで、気が付きました。そうしたら、もっともっと飲みたくなって、あちこち飲み歩くようになりました」
あくまでも、ひとりひとりがMyTeaを見つけだすこと!のようだ。
でも、そもそも美味しい紅茶を出すところさえ、知らない。そんな僕のような人たちのために、松岡さんは店舗を持ちたいと願っている。
「喫茶店には興味がありません。複数の紅茶を飲んで違いを知っていただけるスペースがあればいいんです」
そんなお店があれば、ぜひ通いたい。今は物件を探しているところ。オープンが楽しみだ。
そんな松岡さんに、今まで飲んで一番驚いた紅茶を聞いてみた。
「ルフナというスリランカの紅茶です。蜂蜜のような風味があって、砂糖を入れなくても甘いんです。中近東で飲んでいる紅茶で、日本では『ルフナなんって』と低く見られがちです。だけども、飲まれた方9割は美味しいと納得してもらえます」
Tea Pleaseでは、1パッケージ30gになっており、ダージリンが1050円、アッサムが840円、ルフナが525円、キャンディが525円。松岡さんは、あまりお金を高くしたくないとのことで、仕入れに少しだけ乗せているそうだ。これも、常連にはうれしいところだろう。また、紅茶のほかに、チョコレートやシュガーボンボンも扱っている。こちらも、超こだわりの品。
取材時は、コーヒーを飲んでいたが、途中から紅茶が飲みたくなってどうしようもなかった。早速、Tea Pleaseでルフナを買ってみよう…。
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読み物 : VIVA ASOBIST 記:柳谷 智宣 2008 / 09 / 01