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VIVA ASOBIST
柳生真吾と行く「八ヶ岳倶楽部」の"庭"
「名前に似つかわしいいずまいでしょう」
しゃがみ込んで足元のヒトリシズカ(=ひとり静か)に優しく指先で触れる。
花を終えて実を結んでいるカタクリのことを「ご懐妊です」などと言ったり……。
八ヶ岳倶楽部の雑木林に棲む「おともだち」は柳生慎吾さんに敬意をもって話しかけるばかりでなく、訪れる人々をも歓迎していれてくれるかのようだ。
山梨県北杜市大泉町。小海線「甲斐大泉」から車で10分ばかり、雑木林の間の道を行くと、いかにも立ち寄ってみたくなるようなお洒落なレストランが見えてくる。隣接した植木や山野草などを販売するグリーンショップとの奥に広がる「八ヶ岳倶楽部」の雑木林の中には他にギャラリーや工芸品ショップもいい感じに点在している。
晩春の候、現在のメインの活動として「八ヶ岳倶楽部」を運営している柳生真吾さんの案内で雑木林内を歩いてみた。
「春ですからね」
見上げれば目にも清かな新緑の樹々のところどころの枝に小鳥の巣箱がかけてあって、ときおりどこからか小鳥が飛んでくる。巣箱の中から雛鳥たちが大きな口を開いて餌をねだる声がかまびすしい。遅くやってきて足早にいってしまう八ヶ岳山麓の春と知ったればこそ、小鳥たちも巣作りに忙しい。
「ほらね、いい香りがするでしょ」
何気なくつまんで、手のひらでもんだ葉からは鼻も通るようないい芳香が。
「クロモジ。最高級の楊枝をこれで作るんです」
「ほら、チゴユリが咲き始めた」、「ツバメオモトも」、「マイズルソウの群生が咲きそろうと、絨毯のようですよ」、「トウゴクミツバツツジが終わると、次はレンゲツツジが咲き始めますね」……
雑木林の「住人」たちを真吾さんにひとつひとつ紹介してもらいながら時の経つのを忘れてそぞろ歩き。気が付けば森のエーテルのヒーリング効果で、なんだか身も心も元気が湧いてくるような。
レストランで心地よい喉の渇きを潤す。甘露!
旬の地元の食材をふんだんに使った料理も絶品。
「この席が特等席なんですよ」
「移りゆく夕暮れ時の雑木林の様子を見ながら飲むのが最高」と話しかけてくれた人は、なんと、真吾さんのお父上の俳優・柳生博さん。しばらくして奥様の二階堂有希子さんも。初代「峰不二子」の声優として知られている。
「特等席」で美味しいワインと料理をいただき、その上に絵本『じいじの森 』(柳生博、中島宏枝・著 長野美穂・絵)を著者ご本人の読み聞かせに耳を傾けるという、それは心豊かなひとときだった。
『じいじの森』だけでない柳生博氏の著書も「八ヶ岳倶楽部」にて発売中
文・小玉徹子
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読み物 : VIVA ASOBIST 2000 / 01 / 01