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勝手に植物図鑑

ミソガワソウ

勝手に植物図鑑

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あのころは…

この花と初めて会ったのは、八ヶ岳のオーレン小屋のすぐ前。赤岩の頭へ向かう入り口のせせらぎの畔に群生していた。

その年の5月にボルダリングジムで落下して第2腰椎を骨折した。1か月の入院の後、さらに1か月の間、自宅療養を要した。そして8月末、なんとか苦なく歩けるようにはなっていたが、山歩きとなると、多分に不安だった。

友人の豆板醤につきあってもらった。もしも途中でどうかしたらと考えて、時間を余分に想定した。夏沢から入り、時間通り降りられない場合は夏沢鉱泉でもう1泊するかもしれない由を鉱泉の主人の浦野さんに伝えておいた。
赤岩の頭経由で登り、下山は主稜を辿った。想定した時間より早めにオーレン小屋の前に戻った時は心底、安心した。豆板醤が「問題ないっすよ」というのを聞いて、相当に嬉しかった。オーレン小屋の前のせせらぎの畔に涼やかに咲くミソガワソウを、ことのほか丁寧に撮った。

そしてこの度…
2012年8月9日、24日、いずれも剣岳に上がるのに、集合時間が早いので前泊したが故に生まれた時間的ゆとりのなかで、その辺を歩いていてミソガワソウに再会した。9日に入った天狗平、高原ホテルの前の、美女平から室堂に上がる舗装道路脇、小さな流れの脇に咲いていた。花の名はすぐに思い出した。24日は同じ剣でも南壁A2を攀じるために室堂山荘に前乗りした。翌25日、朝食をしてしばらくすれば山荘に居ても用事もなく、所在なく、暇つぶしにぶらついて遊歩道脇に咲くミソガワソウを見つけた。どうゆうわけか、インの画像は24日に撮ったの、ズームアウト画像は9日に撮ったものが、どうにか使えそうだった。記憶している名前が果たして正しいかどうか確かめるために「勝手に植物図鑑」を開いてみて、この花に最初に出会った所以を再認識した。

縁とは不思議なものだ。なかなかタフになれない我が身に嫌気がさし、もう限界なのかと悲観し、人の目を気にするあまり、山を歩けることの、なんと幸せなことかを大切にも思わなくなっていたかもしれない。2本の脚を交互に出して普通に歩けることは、実は天に感謝すべき有難いことなのであり、ましてや岩を攀じることができるなど、どれほど素晴らしいことなのか、我が胸の奥に改めて問い直すまでもないのだ。

など、なんとか自らをレイズィングし、慰めようとする自助作用なのかもしれないが…

花期は7月から8月

撮影年月日 2012/08/24
撮影場所 立山:室堂平&天狗平・富山県
学名 LABIATAE Nepeta subsessilis
科目・属 シソ科イヌハッカ属
季節
生育地 亜高山帯の草地や深山の川原
分布 北、本、四