
【映画レビュー】異端者の家
森に囲まれた一軒家に宣教に訪れたシスター2人。だが、その家の主の正体は……! 衝撃の怪作『ミッドサマー』を世に送り出した製作会社A24が、なんと本作でその『ミッドサマー』超えの世界興収を叩き出した! 『ラブ・アクチュアリー』や『ノッティングヒルの恋人』などでも知られる主演のヒュー・グラントは、本作でゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞ほか、名だたる賞にノミネート。「信仰」を核に据えた戦慄の密室劇に、あなたの精神は最後まで耐えることができるだろうか……?
若くして敬虔なモルモン教のシスター2人(クロエ・イースト、ソフィー・サッチャー)。大粒の雨が降り出す中、2人が訪れたのは、森の中の静かな一軒家。妻と2人で暮らしているというリード(ヒュー・グラント)は、雨宿りも兼ねて彼女たちを家に招き入れるが……。







若くして敬虔なモルモン教のシスター2人(クロエ・イースト、ソフィー・サッチャー)。大粒の雨が降り出す中、2人が訪れたのは、森の中の静かな一軒家。妻と2人で暮らしているというリード(ヒュー・グラント)は、雨宿りも兼ねて彼女たちを家に招き入れるが……。
本作はキリスト教に由来して立ち上がったその後のキリスト教宗派、キリスト教系新興宗教の教義や由来、”立ち位置”を基盤に構成される。日本人の我々は、お葬式やお盆は仏教、初詣は日本の神道、クリスマスはキリスト教、自然や物にはすべて八百万の神々がおわし……と各種宗教をイベントごとと結び付け“分け隔てなく”接してきたが、片や本作の製作国アメリカでは、日曜礼拝や洗礼など、日ごろからキリスト教と密接に関わっている国民の割合が圧倒的に多い。
そうした出発点からして日本人の我々と本国のアメリカ人とでは、同じ作品を鑑賞するにも本作への入り込み方が異なるだろう……と思っていたが、意外や意外、日本人の私でも入り込める。それは本作中に、様々なキリスト教系宗教の解説が含まれるからだ。しかもれっきとしたストーリーの一部として。
しかしヒュー・グラント、恐るべし。要はイッちゃったヤバいイケおじを演じているわけだが、この役がこんなにも似合う役者、ハマる俳優もまた他にいないだろう。『ラブ・アクチュアリー』で爽やかでちょっとドジな最高に親しみやすいイケメンを演じたヒュー・グラントは、一体どこに行っちゃったんだ?! そう観客に思わせることができるのも、ヒュー・グラントが名優であることの確かな証左なのだ。
惜しむらくは、『ミッドサマー』と比べると人が死へと至る描写が甘いということ。まぁ、あんなに綺麗に一発でクリティカルヒットしないわな。この描写で一気に、作品への没頭から現実へと引き離されてしまう。本作の脚本は『クワイエット・プレイス』のスコット・ベック&ブライアン・ウッズ。今回の製作会社であるさすがのA24でも、そこまでは口出しできなかったのか。実は、個人的には『クワイエット・プレイス』の中にもそうした残念描写があり、そちらは作品の進行にも関わる重大な点だった。
A24の製作体制がどういったものなのかは外野からは計り知れないが、せっかく世界中からの認知が確立されてきているA24ブランドなのだから、是非とも『ミッドサマー』の作品レベルは保っていて欲しい。これはイチA24ファンからの切なる願いだ。

監督・脚本:スコット・ベック、 ブライアン・ウッズ
出演:ヒュー・グラント、ソフィー・サッチャー、クロエ・イースト
配給:ハピネットファントム・スタジオ
公開:4月25日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
公式サイト:https://happinet-phantom.com/heretic/
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記:林田久美子 2024 / 03 / 10