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シネマピア
ファンファーレ! ふたつの音

【映画レビュー】ファンファーレ! ふたつの音

シネマピア

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世界的なスター指揮者に、ある日突然、実の弟がいることが判明! 弟の音楽的才能に気付いた兄がとった行動とは……。本国フランスで3週連続No.1動員を記録し、セザール賞主要7 部門ノミネート、各国の映画祭でも観客賞をはじめ数々の賞を受賞した感動作が、いよいよ日本上陸だ。

指揮の練習中に倒れてしまったティボ・デゾルモ(バンジャマン・ラヴェルネ)。白血病と診断された彼は、適合する骨髄の検査を家族に依頼するが、妹とは血の繋がりがないことが判明する。なんと彼は養子だったのだ。さらに母親から、実の弟の存在も知らされ……。

ファンファーレ! ふたつの音
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ファンファーレ! ふたつの音

あらすじだけを読むとなんとも感動的な展開を予想するのだが、本作ではハリウッド大作のような劇的でエンタメ的な演出もなく、非日常的な展開も起こらない。弟に隠された音楽的な才能にしても、だからといってそれがすべての障害を打ち砕く何かになったりはしない。あくまでも現実的な、現実ならこうなるだろうといった出来事だけが淡々と淡々と積み重なっていく。
だからこそ、単なるお涙ちょうだい物語ではない説得力が、本作にはある。

実は私にも実の弟がいるのだが、本作とは違い、一般的な家庭でごくごく普通に同じ屋根の下で育てられてきた。やはり血を分けているからか、私も弟も音楽や芸術的なことに興味がある。仮に本作のように私と弟が別々の家庭で育てられたとしても、きっとそうした魂の根っこのようなものは同じ方向に伸びていっただろう。
そんな「血の繋がり」の描写も、そこかしこにさり気なく散りばめられ、だからこそなおのこと、本作の説得力は力を増し、クライマックスからラストに向けての意外な展開に観客は心を揺さぶられるのだ。

これを書いている9月上旬はまだまだ暑さが残る日本列島だが、本作が公開される頃にはちょうどいい芸術の秋になっているだろうか、どうだろうか。芸術の秋、音楽の秋として、是非ともゆっくり劇場でご覧いただきたい作品である。

ファンファーレ! ふたつの音

監督・脚本:エマニュエル・クールコル『アプローズ、アプローズ!囚人たちの大舞台』
共同脚本:イレーヌ・ミュスカリ
出演:バンジャマン・ラヴェルネ、ピエール・ロタン、サラ・スコ
配給:松竹
公開:2025年9月19日(金)、新宿ピカデリーほか全国公開
公式サイトhttps://movies.shochiku.co.jp/enfanfare/

© 2024 – AGAT Films & Cie – France 2 Cinéma

記:林田久美子  2025 / 09 / 10