第255回 洋楽編 OZZY OSBOURNE ―― オジー・オズボーン10年ぶりの新作は、若手プロデューサーと組んだ意欲作! 充実の内容はキャリア終焉も見据えている……?!
先月の29日、コロナウイルスの感染拡大によるイベント自粛ムードの中、久しぶりにAntlionでライヴをやってきました。主催者は開催するか否かをずいぶん迷ったようだけど、ライヴバーでやる小規模なイベントだし、客席が汗みどろでモッシュをするようなバンドが出るわけじゃないんだもの。開催してよかったと思います。入口に消毒液も用意してあったし、マスク着用率も高めの大人のイベントでした。楽しかったです! 規模によっては自粛もやむなしかと思いますが、萎縮する必要はないんじゃないかな……。さて、今回の音楽総研は先日10年ぶりのニュー・アルバム、『Ordinary Man』をリリースしたオジー・オズボーンです!
先月、パーキンソン病を患っていることを公表したオジーですが、その後のインタビューなどによると、今年になって初めて発覚したのではなく、実は03年にすでにそう診断されていたのだという。18年のライヴで転倒した際に負った怪我のために手術をし、その際にあらためて診断されたとか……、少々混乱してしまうけども、オジー自身はパーキンソン病のことはすでに知っていて、今年から本格的に治療に専念することになったのかな? なんて想像をしているけど、どうなんだろう。こんなに凄いアルバムを作ったのに、ツアーはやらないのかな……って、そう、ニューアルバムですよ。『Ordinary Man』、凄く良い!
ニューアルバムのオープニングトラック。(いい意味で)まったく変わらないオジー節満載! ギターソロはGUNS N’ ROSESのスラッシュ。
今回のアルバムは、なんとまだ29歳という若さのアンドリュー・ワットがプロデュースとソングライティング、ギターを担当している。アンドリューはラッパーのポスト・マローンや、ショーン・メンデス&カミラ・カベロ の大ヒット曲を手掛けているプロデューサーだから、「超がつくほどの売れっ子とはいえ、ヒップホップ系のプロデューサーがオジーをプロデュース?」と、頭の中が?でいっぱいになったけど、思い出した。この人、元DEEP PURPLEのグレン・ヒューズ(B,Vo)と、LED ZEPPELINの故ジョン・ボーナムの息子、ジェイソン・ボーナム(Dr)が組んだCALIFORNIA BREEDのギタリストだ。若いのに(当時23歳)ベテランの二人と対等にやりあっていて凄い、と感心したのを覚えている。本当はHR/HMをやりたい人なのかもしれないなあ。
そして、そのアンドリューがGUNS N’ ROSESのダフ・マッケイガン(B)とRED HOT CHILI PEPPERS のチャド・スミス(Dr)にソングライティングとレコーディングへの参加を依頼し、たったの4日間でほとんどの曲を作曲し、バックトラックのレコーディングを済ませたという。ダフとチャドは長年のバンドメイトかのようなタイトなリズムセクションとして、とても良い仕事をしている。アンドリューのギターは印象に残るリフやギターソロが少ないものの……、大ヒットソングを何曲も手掛けているだけに、収録された曲のことごとくがシングルヒットを狙えそうなほどのキャッチーさに溢れている。ヴォーカルメロディはオジーと一緒に書いたんだと思うけど(もしくはオジーが一人で)、楽曲がここまで充実しているのは91年の『No More Tears』以来じゃないだろうか。もちろん、オジーの歌声も素晴らしい!
オジーの、オジーによるオジーらしい名曲! PVで若いモデルが演じるのはオジーと奥方でマネージャーのシャロン。 なかなか凄い内容です。ラストの「I will never give up on him」という力強い一言がシャロンらしい。
先に書いたように、リフやソロは少々印象が薄いんだけど、ゲスト参加した、一聴してそれとわかるゲスト参加したスラッシュのソロなど、聴きどころはいくつもある。そして、一番の聴きどころと言えるのが、表題曲『Ordinary Man』へのエルトン・ジョンの参加だ。ヘヴィメタル界の帝王オジーと、ポップス界のレジェンド、”ロケットマン”エルトン・ジョンの共演。意外な顔合わせだけど、この二人の相性がすこぶる良い。やっている音楽は違えど、ぶっ飛び具合というか……、クレイジーさ加減とでもいう彼らの特殊さには、なんだか共通点もあるような気がするね。
オーディオのみ。この曲もソロはスラッシュ。これはエルトンとの共演シーンをぜひとも観てみたいよね! シャロンによると、80年代、オジーとエルトンは家が隣同士だったそう。 そのころから交流があったのかな?
そんな全くもって普通ではない彼らが「普通の男として死にたくない」と歌うこの曲がなんとも切ない。「母親も泣かせてきた、まだ生きている理由がわからない」なんて歌詞を読むと、なんだかオジーの遺書みたいでね……。長年のファンとしては、どうにも泣けてきちゃうんだよなあ。この曲はヒットしそう。ヘヴィメタルではないけど、オジーはいつでも魅力的なバラードを歌ってきた。30年ほど前、うちの母親がオジーを聴いて、「この人の曲はメロディがいいねえ」なんて言っていたことを思い出す。オジーの歌にはHR/HMファン以外をも魅了する力があるんだよね。
91年の『No More Tears』発表時に、オジーは一度引退宣言をしている。その後、引退は撤回したものの、あれからほぼ30年だ。昨年は「No More Tours」……ツアーはもうやらないというタイトルのツアーを、体調の悪化によってキャンセル。オジーももう71歳。いつ引退したっておかしくない。『Ordinary Man』以外にも『Under the Graveyard』だったり、死を想起させる曲がある。いわゆる終活を意識しているのでは……、と思うのは穿ち過ぎだろうか。キャリアの終焉は必ず訪れる。それでも、これだけの傑作を送り出してくれたオジーだから、それはまだまだ先のことだと信じたい……。日本にもまた来てほしい!
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