第176回 洋楽編 GUNS N’ ROSES ―― 25年振りに目撃! 今生では起こりうるはずのなかった”奇跡”
1月29日、さいたまスーパーアリーナで行われたGUNS N’ ROSESのライヴに行ってきました! 黄金期のメンバー、スラッシュとダフ・マッケイガンが復帰してから初めての来日。二人が脱退していた間もバンドは存在していたし、来日もしていたけど、どうにもタイミングが合わず……で、気が付けば俺が前に彼らのライヴを観てから、なんと25年も経っていたのでした。
オープニングアクトに抜擢されたBABYMETALのライヴが終了(30分じゃ短い!)、ほどよく客席も暖まったところでいよいよGUNS N’ ROSES(以下GN’R)の登場……とはいかず、開始予定の18時になってもバンドは登場しない。スタートが遅くなるのはGN’Rのライヴではお約束とはいえ、待たされる側としては気分のいいものではないし、以前のインタビューでアクセル以外のメンバー達が不満を口にしていたから、また揉めたらどうすんの……と不安になりだした18時35分、突然客電が落ち、野太い声でライヴ開始のアナウンス! そして、ディズニーアニメ風のコミカルなSEに続いて、勢いのあるベースが耳に飛び込んできた。『It’s So Easy』だ! 本当にダフがいる、スラッシュがいる! もちろんアクセル・ローズも……! アクセルは少々(かなり?)恰幅が良くなっていたけど、低音からいきなり鋭い高音に切り替わる歌声も、舟を漕ぐような独特のアクションも昔のまま。そこにいるのはまぎれもなくGN’Rだ。
オーディエンス撮影の動画。 レコーディングに参加していないとはいえ、スラッシュもダフもばっちりハマっています。
懐かしい『Mr. Brownstone』に続いてスラッシュが弾き始めたのは『Chinese Democracy』。スラッシュとダフが参加していないアルバムの曲を彼らのプレイで聴くのは不思議な感じがしたけど、違和感は全くといっていいほどない。バケットヘッドが弾いていたトリッキーなギターソロはリチャード・フォータスが担当。そのルックスからR&R系のギタリストかと思っていたけど、モダンなプレイもこなすテクニシャンで驚いた。続く『Welcome to the Jungle』の爆発的なイントロには、いつだって頭を殴られたような衝撃を受ける……。そして、アクセルのシャウトは25年前から全く衰えてないどころか、それ以上に力強い。『Double Talkin’ Jive』、『Better』と新旧続けて披露されたあとに、ようやくMCらしいMCが入った。とはいえ、「気分はどうだ?」くらいしか言わなかったけど。前に観た時はもっと喋っていたし、ステージの進行ももっとダラダラとしていたような……。そりゃ25年も経つといろいろ変わるよね。ここまでは、息もつかせず、という言葉がぴったり。
『Estranged』、『Live and Let Die』でようやくキーボーディストのディジー・リードやメリッサ・リードにスポットが当たる。ただ、メリッサはソロを弾くでもないし、何を弾いているのかわからない。女声のコーラスが欲しかったのかな? ダフが歌う『Attitude』や、大方の観客には馴染み薄なのであろう『This I Love』、大作『Civil War』、『Coma』と続いた辺りで客席には少々中だるみ感が漂い、さらにスラッシュのギターソロタイムでも延々とアドリブ的なプレイが続いた時には、さすがに「長いなあ……」と思ってしまったけど、例のゴッドファーザーのテーマが聴こえてきた瞬間、やっぱりスラッシュは凄い、とすぐに思い直す。以前よりもテクニック的には安定しているし、エモーショナルなプレイには以前よりも磨きがかかっている。ギターソロから『Sweet Child O’ Mine』に繋がる流れは感涙ものだった。
オフィシャルのPV。みんな若いねー。
これぞGN’R! といった妖しい魅力たっぷりの『My Michelle』に続いて、スラッシュとリチャードがプレイしたのはPINK FLOYDの『Wish You Were Here』。アクセルは歌わず、リチャードがギターで歌メロをなぞる。リチャードのギターもスラッシュに負けず劣らずエモーショナルだ。アクセルがいつの間にかセットされていたグランドピアノの前に座っていて、演奏は『Layla』のアウトロに繋がった。原曲のイメージそのままに、ほのぼのとした温かい感動がフロアを満たす。そして、『Layla』に続いてアクセルが厳かに奏でたのは『November Rain』。GN’R屈指の名バラードに、客席からは悲鳴にも似た歓声が上がる。どこか優しさを感じさせるアクセルのヴォーカル、メランコリックなスラッシュのギター……GN’Rは激しいだけのバンドじゃないんだよね。そして、やっぱりこのギターはスラッシュじゃなきゃ弾けない。他のどんなに上手いギタリストが弾いても、これほど心には響かないだろう。続く『Knockin’ on Heaven’s Door』では初めてバンドと客席でコール&レスポンス。大いに盛り上がったあと、疾走する『Nightrain』にとどめを刺されて一旦本編が終了。
こちらもオーディエンス撮影の動画。 スラッシュはモッキンバードでも同じ音……。 しかし、アクセルもスラッシュもダフを見習ってシェイプアップしたらどうなんだ。
バンドはそれほど間を空けずにアンコールに応え、『Sorry』と『Patience』をプレイ。どちらも生で聴きたいと思っていたし、25年振りの『Patience』には泣きそうになっちゃったけど、「ここで演る?」と、少々肩透かし。続くTHE WHOのカヴァー『The Seeker』では、さらに客席が微妙な空気に……。でも、こういう予定調和に終わらないところもGN’Rらしい。しかし、オーラス『Paradise City』では「待ってました!」とばかりにステージと客席とが一体になって盛り上がる。そしてついにライヴは終了……。終わってみると20曲以上、演奏時間は2時間半を優に超えていたけど、それでももっと観たいと思わせてくれる素晴らしいライヴだった!
スラッシュとダフのいない時期のライヴを観ていないから、その頃と比べることは出来ないんだけど、スラッシュ、ダフ、アクセルの3人が並んで立った時のカッコよさは尋常じゃなかったし、アクセルのヴォーカルとスラッシュのギターの相性の良さを、あの場にいた誰もが再認識したと思う。ツアータイトルの「Not in This Life Time(今生ではあり得ない)」とは、以前にアクセルがスラッシュとの復縁を聞かれた時に答えた言葉だという。今回のツアーはそのあり得ないはずのことが起こったわけで、彼らにとっては、生まれ変わったようなものかもしれない。このメンバー編成がずっと続くのか、それとも一時的なものなのか……彼ら自身が現在の布陣の強力さを感じていないわけがないし、このまま続けてほしいと願わずにはいられないけど、予想通りにいかないのがGN’Rだ。この奇跡に立ち会えたことに感謝しつつ、祈るような気持ちで次の機会を待つ……。
1/29 さいたまスーパーアリーナ セットリスト
- It’s So Easy
- Mr. Brownstone
- Chinese Democracy
- Welcome to the Jungle
- Double Talkin’ Jive
- Better
- Estranged
- Live and Let Die(WINGS)
- Rocket Queen
- You Could be Mine
- Attitude(THE MISFITS)
- This I Love
- Civil War
- Coma
- Slash Guitar Solo〜Sweet Child O’ Mine
- Yesterdays
- My Michelle
- Wish You Were Here(PINK FLOYD)〜Layla(DEREK AND THE DOMINOS)〜November Rain
- Knockin’ on Heaven’s Door(BOB DYRAN)
- Nightrain
En
- Sorry
- Angie(THE ROLLING STONES)〜Patience
- The Seeker(THE WHO)
- Paradise City
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