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第173回 洋楽編 SAMMY HAGAR ―― キャリア40年超! 今なお力強く響くVoice of America……サミー・ヘイガー

早いもので、今年の音楽総研は今回で最後。今年はデイヴィッド・ボウイの訃報から始まり、プリンスやキース・エマーソンなど、偉大なアーティストがたくさん亡くなった年でしたね。それぞれがそれなりの年齢になっていたとはいえ(プリンスはまだまだ若かった……)、やっぱり寂しいなあ。ついこの間もグレッグ・レイクの訃報が届いたけど、これ以上の訃報は聞きたくないものです……。さて、今回ご紹介するのはサミー・ヘイガー! 言わずと知れたVAN HALENの元シンガーで、現在はソロやVAN HALEN時代のベーシスト、マイケル・アンソニーらと結成したCHICKENFOOTなどで活動しています。前回ニール・ショーンを取り上げた時にサミーと共演したHSASを聴きなおして、やっぱり凄いシンガーだなあ、とあらためて思いなおした次第でして。

サミー・ヘイガーはカリフォルニア出身のアメリカ人シンガー&ギタリストで、73年にMONTROSEでデビュー。2枚のアルバムに参加したのちに脱退すると、ソロアーティストとして活動を始め、Voice of Americaと称されるほどの評価を受ける。そして、85年にデイヴ・リー・ロスの後任としてVAN HALENに加入。サミー在籍時の4枚のスタジオアルバムは全て全米ナンバーワンを獲得、いくらVAN HALENといえばデイヴ! というファンが多くても、商業的にはサミー時代が全盛期と言っていい。サミーのヴォーカルは暑苦しいほどのハイトーンシャウトが特徴だけど、高い歌唱力を活かした甘いバラードも得意としており、なんでも歌える全方位型というか、シンガーとしては弱点が見当たらない。ライヴアルバムを聴いてもピッチは完璧だし、熱いヴォーカルはスタジオアルバムで聴ける以上にソウルフル。サミーは、ロックシーンの中でも最高峰の実力を持ったシンガーだと思う。

『I Can’t Drive 55』
ソロ時代のヒット・シングル。サミーはギターも上手いんだよねー。

俺がサミーのことを知ったのは、サミーがVAN HALENに加入してからのこと。サミーはVAN HALENよりもキャリアが長いし、その時点でもうベテランだったわけだけど、まだロック初心者だった俺は知りませんでした。俺にとってはデイヴこそがVAN HALENの象徴だったから、このシンガー交代劇はショックだったなあ。また、当時のサミーが襟足を短くカットしたハードロッカーっぽくないルックスだったことも、音楽性の変化も気に入らなくてねえ。音楽的にはより高度なものになったのかもしれないけど、俺がVAN HALENに求めていた野蛮さが減っていたし……。でもまあ、バックの演奏はVAN HALEN以外の何者でもないし、先に書いたとおり、サミーはとんでもなく凄いシンガーだったから、すぐにサミーのファンにもなっちゃったんだけど。『Dreams』や『Right Now』のような洗練された楽曲や、『Love Walks In』や『When It’s Love』のようなバラードはデイヴとはやれなかっただろうし、VAN HALENがハードロックシーンの中でのナンバーワンバンドから、アメリカの国民的バンドにまでのぼりつめたのは、サミーのように”歌える”シンガーが加入したからこそ、だろう。

VAN HALEN 『Dreams』
VAN HALEN時代の超名曲! 歌も演奏も素晴らしいけど、エディの見た目はなんとかならなかったのか……。 この人たまにすごくダサいよね。

しかしサミーは96年にVAN HALENを脱退。一時的な復帰もあったけど、エディ・ヴァン・ヘイレン(G)やアレックス・ヴァン・ヘイレン(Dr)との確執は改善されず、VAN HALENに戻ることはなかった。でも、VAN HALEN脱退後のサミーは、以前よりもマイペースかつ楽しそうに活動しているように見えるんだよね。悠々自適……は、ちょっとのんびりし過ぎだけど、そんな言葉が似合うぐらい、なんだかリラックスしていそう。音楽的にも人間的にも相性が良さそうなマイケル・アンソニーと一緒にやっているのも、プラスに作用しているのかな。エディとはお互いに悪口を言い合っていたし、無理にVAN HALENに戻る必要はないよね。ただ、サミーは最近の度重なるアーティスト達の訃報に思うところがあったようで、嫌な気持ちを持ったまま墓に入るのはよくない……と、VAN HALENの2人との関係を修復しようとしているらしい。VAN HALENに戻る気はないけど、友人同士に戻りたい、と。今のところVAN HALEN側からはとくに反応がないようだけど、実現するといいな。やっぱり彼らがいがみ合っているところなんて見たくないもの。

CHICKENFOOT 『Oh Yeah』
サミー、マイケルの元VAN HALEN組と、天才ギタリストジョー・サトリアーニ、 RED HOT CHILLI PEPERSのチャド・スミスからなるスーパーバンド。 VAN HALENっぽいところは少なくて、意外とシンプルなリフ・ロック。

実はサミーのライヴを生で観たことがない。タイミングが悪かっただけなんだけど、それから20年も来ないなんて思いもしなかったから、VAN HALENで来日しても観に行かなかったんだよね。バカなことした。CHICKENFOOTはメンバーそれぞれの活動が忙しそうだし、ソロでの来日も可能性が低そうだけど……、来年あたり来てくれないかなあ。死ぬ前に一度は生でサミーの歌を聴きたい。俺がお墓に入っちゃう前に日本に来てね、サミー!

※次回のikkieの音楽総研は、新年1月4日に掲載の予定です。皆様、よいお年を!

※ ikkieがなんと「出張ギター教室」を始めてしまいました!とにかくアクセス! 動画もあるよん。http://dokodemoguitar.com