第283回 洋楽編 JOHN NORUM ―― 確固たる個性を確立した信念のギタリスト、ジョン・ノーラム
前回、ゲイリー・ムーアに影響を受けた3人ギタリストのことを書きましたが、読み返してみると、他の2人に比べてジョン・ノーラムの扱いが微妙だったかな、と反省しまして……。いちどきちんと書いておこう、と相成りました。ジョン・ノーラム、再登場でございます。
ジョン・ノーラムはノルウェー生まれ、スウェーデン育ちのギタリスト、シンガーです。83年にEUROPEのギタリストとしてメジャーデビュー。ゲイリー・ムーア直系の熱くエモーショナルなギターが身上で、ゲイリーの大ファンだった俺には大好物! メロディアスで抒情的なEUROPEの楽曲も俺好みだったし、すぐにファンになりました。とくに『The Final Countdown』のジョンのギターがすごく良い音でね。俺がストラトキャスターの魅力に気付いたアルバムのひとつでもあります。バンドのポップ化に反発したジョンが脱退して、EUROPEのポップ化にさらに拍車がかかったのにはがっかりしたなあ。
ただ、この時のジョンはすごくカッコよく見えました。というのも、それまでは知る人ぞ知るバンドだったEUROPEがようやく世界的な大ヒットを記録したのに、自分のやりたい音楽を求めて脱退するとはなんて潔い、と。ポップになることが悪いとは言わないけど、やはり「売れているから」といった理由で、本意ではない音楽をやるのはね……。大人になった今の俺は、ポップになっていったEUROPE側のカッコよさもわかるけど、ギターキッズだった当時の俺は、ジョンの潔さに肩入れしたものでした。
EUROPEを脱退したジョンはソロアルバムの制作に着手。同じスウェーデン出身のマルセル・ヤコブ(B)や、ヨラン・エドマン(Vo)が参加したファーストソロアルバムは、正直なところEUROPEの作品ほどの完成度はなかったものの、EUROPEがなくしたように思われた北欧のアーティストらしい抒情的なサウンドや、ジョンが思う存分弾きまくるギターが堪能できる良盤です。ジョンの歌の上手さにも驚いたなあ。ヨランかと思っていたらジョンが歌っていた曲もあったし。ただ、誰々っぽい、っていう曲がちょっと多かったかも(『The Final Countdown』のパロディっぽい曲も)。EUROPEはジョーイ・テンペスト(Vo)がメインソングライターだったし、この頃のジョンはまだ成長途中だったのかもしれない。
ファーストソロアルバムから。初期EUROPEっぽさと北欧メタルテイストが満載の名曲。シンガーのヨラン・エドマンはなんだか過小評価されがちだけど、俺は好き。イングヴェイはこの曲を聴いて、ヨランをバンドに入れたのでは……?
ファーストソロアルバム発表後は、元DEEP PURPLEのグレン・ヒューズ(Vo,B)とタッグを組むと発表され、あの伝説的なミュージシャンとジョンが! と、大いに驚かされたものの、これは実現せず、どうするのかと思っていたら、なんと解散したDOKKENのシンガー、ドン・ドッケンのバンド、DON DOKKEN(ややこしい)に加入して、もっと驚いた。当時のジョンが「最近はDOKKENをよく聴いているんだ。ジョージ・リンチみたいな最新のギタースタイルを取り入れたい」なんてことをインタビューで話していたのを読んでいたから、「憧れのバンドに加入じゃん!」と、自分のことのように興奮しちゃったんだよね。ただ、このバンドは残念ながらアルバム1枚のみで解散。他のメンバーも凄かったし、続けてほしかったけど、ちょっと疑問が残る作風ではあったから、やっぱりな、とも思ったけど。
DON DOKKENでの活動を経て、92年に(おそらくは)ジョンの本命であったグレン・ヒューズとタッグを組んだソロ2作目、『Face the Truth』を発表。これがとんでもない完成度を誇る大名盤! グレンの影響もあっただろうけど、誰々っぽい曲なんてないし(ジョンがフィル・ライノットそっくりに歌うTHIN LIZZYのカヴァーはある)、あのグレン・ヒューズと対等の存在感を見せている。そして久しぶりにジョーイとも共演、相性の良さを再確認した。このアルバムは必聴盤ですよ! しかし、ドンやグレンと共演するなんてほんとに凄い、ジョンも出世したね、なんて当時は思っていたものでした。こんなに凄いシンガー達が認めているんだもの、もうゲイリー・ムーアのフォロワーと揶揄されていたジョンじゃない。ジョン自身の個性が認められているからこその共演だよね。
グレン・ヒューズとのタッグで発表した名盤のタイトルトラック。この二人でまたアルバム作ってほしい……
大方の予想通り、グレンとのタッグは長続きせず、ジョンは再結成したDOKKENに参加したりもしながらも、ソロ活動を続けます。DOKKENにいるジョンはちょっと”よそいき”というか、なんかジョンらしさにかける気もしたから、ジョンを戻したがっていると聞いていたEUROPEが再結成したときは嬉しかったなあ。ジョンを戻したがっているということは、ジョンの音楽性を求めているということでもあって、EUROPEがハードな面を取り戻そうとしているということでもあるわけでね。事実、再結成以降はこのバンドの生来の魅力である、キャッチーさを保ちつつ、けっしてポップではない、EUROPEらしいハードなサウンドを聴かせてくれている。そして、そこには確固たる自身の個性を持って、以前にも増して魅力的なギターを聴かせてくれる、ジョン・ノーラムがいる!
根強い不仲説もあったなか、ジョーイとの久しぶりの共演で二人の相性の良さを再確認。「We belong together, Together we’ll be strong(俺たちは一緒にいるべきだ、一緒にいれば強くなる)」なんて歌詞にグッときました。ジョンの歌もいい!
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