第400回 ライヴレポート編 ―― NIGHT RANGER 『FAREWELL JAPAN The “Goodbye” Tour』 Thank You NIGHT RANGER ! You are forever in our hearts ! (後編)
2010年の6月に連載が始まったikkieの音楽総研ですが、今回でなんと400回目となりました。自分でもすっかり忘れていたのですが、原稿にナンバリングをしようとして400回目だということに気付いたという。今回はNIGHT RANGERのライヴレポートの続きを掲載する予定だったので、いつものアニヴァーサリーの回のように特別なことはしませんが(そのうちやります)、400回というのはなかなかの数字だと思いますので、ちょっとだけ。こんなに長く続けられたのは、自分の努力もあるけれど、好き勝手に書かせてくれるあそびすと編集部と、いつも読んでくださる皆様のおかげです。これからも皆様に楽しでいただけるような原稿を書き続けていきたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします! いつもありがとう。
……さて、10月16日に日本武道館で行われたNIGHT RANGERの『FAREWELL JAPAN The “Goodbye” Tour』の後編でございます! 
(前編はこちら)
大いに盛り上がった『Rumours In The Air』からムードが一転、“E”ことエリック・リーヴィーの物哀しいピアノからデビューアルバムに収録の『Call My Name』がスタート。アルバムのバージョンとは違う中間部のブラッド・ギルスとケリ・ケリーの2人のギタリストのソロパートが素晴らしくて、聴き入ってしまう。「1982年に最初のアルバム『Dawn Patrol』、1983年に最初のジャパンツアー。あれから42年間……、今夜は(日本での)77回目のショウだよ!」とジャック・ブレイズ(Vo, B)が客席に語り掛ける。前回のツアーでも77回目とか言っていたような気がするけど……、どちらが正解なんでしょう(笑)。そして、続いてはアルバム収録順の通り『Eddie’s Commin’ Out Tonight』をプレイ。この曲のエンディングではブラッドとケリの息の合ったギターのハーモニーを堪能。元ギターキッズの血が騒ぐ!
「今夜はみんなのためにたくさんの曲をプレイするよ。そうだ、ブラッドがオジー・オズボーンのバンドでプレイしていたことを覚えてる?」とジャックがブラッドを紹介。「オジー・オズボーンが亡くなってとても悲しい。オジーはきっとランディ・ローズと一緒に天国にいると思う。オジーのために一分間の静寂を」とのブラッドの言葉に会場がレジェンドに黙祷を捧げる。そしてジャックが「空に向かって手を掲げてくれ。きっとオジーが見ているよ」と話し、オジーの『Crazy Train』をプレイ。この日いちばんと言っても過言ではない大合唱が沸き起こった。近年のNIGHT RANGERのライヴでは何度かプレイされてきた曲だけど、オジーが亡くなった後ではやはり違った意味を持つ。個人的にはようやくオジーへのトリビュートが出来たような気もして、とても感動的な瞬間だった。
「俺たちはもともとRANGERって名前だったんだよ。でもあんまりいい名前じゃなかった。それに他にも同じ名前のバンドがいることがわかったから、NIGHT RANGERに変えたんだ」と古参ファンには周知の小話(?)から『NIGHT RANGER』へ。中間部ではジャックのベースとケリー・ケイギー(Vo, Dr)のジャムから、メンバーがよってたかって(笑)ドラムを叩きまくるお約束の“ドラム・グルーヴ”へ。今回は和楽器バンドの和太鼓奏者、黒流(くろな)さんも和太鼓を抱えて参加、会場を盛り上げた。
演奏を終えると、日本語で「ありがとう。美しい日本に来れて光栄に思います」とジャック。そして、「アナザーギフトだよ。DAMN YANKEESの曲をみんなに」と、名バラード『High Enough』がプレイされた。大好きな曲ではあっても、DAMN YANKEESよりもNIGHT RANGERの曲をやってほしいと毎回思っていたんだけど、この曲ももう聴けないのかもしれないのか……。オリジナルではトミー・ショウが歌っていたギターソロ前のとんでもなく高いフェイクをジャックが歌っていてびっくり。3年前のライヴでもジャックの歌声には驚かされたけど、今回はそれ以上! 若々しくて艶もある、衰え知らずの素晴らしい歌声には大いに感銘を受けた。
ジャックが唐突に始めた「エーオ!」というフレディ・マーキュリー風の掛け合いが「ここまでしか知らない」と中途半端に終わると(笑)、ケリーのソウルフルな歌声が堪能できる『Reason To be』を。……が、やはり高音域が少々キツそうだ。掛け合いの練習をして盛り上がった『High Road』、そしてレア曲と言っていい『Can’t Find Me A Thrill』と続き、ライヴは終盤へ。
ブラッドのエモーショナルなギターから『When You Close Your Eyes』がスタート。ジャックとケリーのツインヴォーカル、切なくもキャッチーなコーラス……NIGHT RANGERの魅力が満載のこの曲と、間髪入れずにプレイされた、彼らのデビューシングルにして、すでにNIGHT RANGERらしさが完成されていた疾走感あふれる『Don’t Tell Me You Love Me』が個人的にはこの日のクライマックスだった。シンガロングパートではどうにも泣けてきて一緒に歌えず……。そして、ここで本編が終了。
一旦ステージを降りていたバンドを大歓声と大きな拍手でステージに呼び戻す。ジャックの「一晩中プレイしていたいよ!」という言葉に、一晩中聴いていたいと思ったのは俺だけではないはず! 「iPhoneのライトを点けてくれ。『Sister Christian』だ!」の声に応え、会場中にスマートフォンのライトが灯り、幻想的な光景が広がる。この曲を初めて聴いたのはまだ中学生のころだった。あれから40年……、名曲の魅力は少しも色あせない。
「これが最後の夜……、日本での最後のショウだ」というジャックに、会場中から大ブーイング。その反応に、思わず言ってしまった、という感じの「戻ってきてほしい?」には当然、大歓声だ。そして、「俺たちはどこへ行ってもきみたちと一緒だよ。世界中、どこへでも日本を連れていく。俺たちの心はきみたちの心、きみたちの心は俺たちの心だ」そして、永遠の名曲『Good Bye』をプレイ……。この日、高音域がキツそうなケリーだったけど、この曲ではそれも感じられず、エモーショナルな歌声に胸が熱くなった。しかし、隣りの席の人のリズム感が壊滅的にひどく、ずっとズレた手拍子を聞かされてしまい、いまいち演奏にのめりこめず……。いや、みんな自由に楽しんでいいんだけど、ズレているのはわかっていたみたいだから、途中で止めるか、もうちょい音量を控えめにするとかしてほしかった……。この日、唯一の不満です。まったくもう。
この日のラストはもちろんこの曲、『(You Can Still) Rock In America』だ! しんみり終わるのはNIGHT RANGERには似合わない。ブラッドとケリのギターソロでは大歓声が起こり、コーラスは大合唱、大いに盛り上がったこの曲でこの日のライヴは終了……、終わってしまった! 会場にはKISSの『Rock and Roll All Nite』が流れ、ライヴ本編と変わらないほどの大合唱が起こるなか、メンバーたちが楽しそうに客席に大量のピックをばらまく。曲が終わるまでたっぷりと客席に手を振って、彼らはステージを降りて行った……。
NIGHT RANGERのライヴは、必ず前回のライヴを超えてくる。もちろん今回もそうだった。来日前のインタビューでメンバーたちが語っていたように、今が最高の状態だというのは間違いないだろう。それでも、メンバーそれぞれが年齢を重ねて、いつ何があるかわからない、最高の状態で日本に行っておきたい、というのは、偽らざる本心だと思う。そして、こうやってまた、最高を更新する素晴らしいライヴをやってくれた。長年のファンとしては、もちろんメンバーの気持ちは尊重したいけれども、これが最後だとは思いたくないし、例えば来年になっても、今も最高の状態じゃないかと思ったとしたら、いつでも日本に来てほしいと思う。最後だって言ったじゃないかなんて誰も言わないだろうし、この日集まったファン全員が、また観たいと思ったはず。それに、観られなかったファンだって大勢いるよね。
これが最後だなんて信じられない。また来てほしいし、来てくれそうな気もする……。素晴らしいライヴでした!

2025.10.16 『FAREWELL JAPAN The “Goodbye” Tour』 at 日本武道館 セットリスト
- 『This Boy Needs To Rock』~『Highway Star』
 - 『Seven Wishes』
 - 『Faces』
 - 『Four In The Morning』
 - 『Sentimental Street』
 - 『Interstate Love Affair』
 - 『Sing Me Away』
 - 『Touch Of Madness』
 - 『Secret Of My Success』
 - 『Rumours In The Air』
 - 『Call My Name』
 - 『Eddie’s Commin’ Out Tonight』
 - 『Crazy Train』
 - 『Night Ranger』
 - 『High Enough』
 - 『Reason To be』
 - 『High Road』
 - 『Can’t Find Me A Thrill』
 - 『When You Close Your Eyes』
 - 『Don’t Tell Me You Love Me』
 
Encore
- 『Sister Christian』
 - 『Good Bye』
 - 『(You Can Still) Rock In America』
 
※ikkieのバンド、Antlionのシングルがリリースされました!
ストリーミング&ダウンロードはこちらから
https://linkco.re/vPZ00Quz?lang=ja
※ikkieのYouTubeチャンネルです!
https://www.youtube.com/channel/UC-WSajndNhq0tu7K7-MBEmQ?view_as=subscriber
    
              
              
                    
                    
                    
                    
                    
                    
                    
                    
                    
                    
                    
                    
                    
                    
                    
                    
                    
                    
                    
            
            
            
            
            
            

                
                
                
                
                
                
                


