第402回 洋楽編 ―― David Coverdale My Favorite Singer of All Time !! デイヴィッド・カヴァデール引退……
前回も少し書きましたが、WHITESNAKEのデイヴィッド・カヴァデールが音楽活動からの引退を表明しました。YouTubeに公開された過去曲のリミックスバージョンに「Important Announcement」とサブタイトルが付いているのを見て、嫌な予感がしつつ再生してみたところ、やはり予感は的中し、動画の冒頭で、「50年以上にわたって、皆さんと、DEEP PURPLE、WHITESNAKE、ジミー・ペイジと共に信じられないような旅をしてきたが、ここ数年で、そろそろロックンロールの厚底シューズとスキニージーンズを脱ぐ時が来たと強く感じていた。ライオンのウィッグはもう終わりだよ」と、すっかり髪が白くなったデイヴィッドが引退について切り出した……。

「この驚くべき旅を支え、応援しててくれたすべての人に感謝しています。でも、そろそろ引退生活を楽しむことにしたよ。理解してもらえると嬉しい。皆さんのことを心から愛している。Fare thee Well……」最後の「Fare thee well」は、曲のタイトルでもあるけど、Farewellの古風な言い回しで、デイヴィッドらしいなと思いつつ……、なんとも寂しくなってしまった。
デイヴィッドが冒頭で引退を表明しています……
去年だったか、WHITESNAKEのレブ・ビーチ(G)が、デイヴィッドからは何も聞いていないと前置きしながらではあったものの、「デイヴィッドはもうワールドツアーをやらないと思う」と発言していて、えー、コロナで中止になってから日本に来ていないじゃん、と思いつつも、デイヴィッドの年齢(今年で74歳)のこともあるし、近年は体調不良のニュースが届くことが多かったから、その可能性は高いかも……とは思っていました。2019年に『Flesh & Blood』をリリースして以降、ニューアルバム制作の話はまったく聞こえてこず、リリースされるのは昔の曲のリミックスやリマスター盤ばっかりだったのは、ツアーをやらないぶんの穴埋めなのかなと、なんとなく思っていたんだよね。もちろん、アルバムを発表せずにツアーをすることだってあるけど、最近のWHITESNAKEはそうではなかったし。やっぱり、喉や体調に不安があったんだろうか……。
ここには何度も書いているけど、俺のWHITESNAKE初体験は1984年に日本で行われたSUPER ROCK ’84 IN JAPANのライヴ映像でした。WHITESNAKEのことは、DEEP PURPLEの元メンバーがやっているバンドだという知識はあったものの、当時の俺はジョン・ロードやイアン・ペイスがいたころの写真しか見たことがなかったから、おじさんたちがやっているバンドだと思って、さほど興味がなかったんだよね。しかし、画面に映るジョン・サイクス(G)やコージー・パウエル(Dr)のカッコよさに驚き、デイヴィッドの迫力のある歌声に度肝を抜かれて、すっかり魅了されてしまったという。HR/HMバンドのシンガーってハイトーンヴォイスでシャウトする人が多いし、デイヴィッドみたいにディープな低音が魅力って人は聴いたことがなかったから、ほんとに衝撃を受けたよ。後追いで聴いた、デイヴィッドが影響を受けたというポール・ロジャースにしても、個人的にはデイヴィッドほどのディープヴォイスではないと思うし(デイヴィッドのほうが凄いという意味ではありません)……、他にはTHIN LIZZYのフィル・ライノットくらいかなあ。でも、フィルは喋るように歌う人だから、デイヴィッドとは全然タイプが違うよね。
My Favorite Song!! この曲、何回紹介しましたかね……
その『SUPER ROCK ’84 IN JAPAN』でのライヴ映像を観てから、1年ほど経ったあとにリリースされた『Whitesnake』がとんでもなく凄いアルバムで、ライヴ映像よりもさらに衝撃を受けました。レコードに針を落として、最初に流れてきた『Crying in the Rain』を聴いた時の衝撃は今でも覚えているよ。あの日から40年近く経っているけど、あの衝撃を超えるような曲にはいまだに出会っていないなあ。また、このアルバムは、発売前にデイヴィッド以外のメンバーが全員解雇されるという、前代未聞の事件が起こったアルバムでもあるんだよね。そして、最大の貢献者だったはずのジョン・サイクスとは和解することがないまま、ジョンは亡くなってしまった……。そういったストーリーはこのアルバム以降もずっとWHITESNAKEには付きまとうことになり、メンバーは常に流動的だったけど、それもまたファンにとってはWHITESNAKEらしいというか、デイヴィッドらしいというか……、WHITESNAKEはデイヴィッドのバンドなんだから、と納得するしかなかった。それでも、いつの時代もWHITESNAKEは俺にとって特別な、特別なバンドでした。
この曲を初めて聴いたときはほんとに衝撃を受けました。デイヴィッドの歌にジョンのギター……、凄すぎる!
ジミー・ペイジとのCOVERDALE・PAGEのころからだったと思うけど、デイヴィッドはしゃがれ声やハイトーンを多用するようになっていて、それはそれで悪くはなかったけど、低音のソウルフルなディープヴォイスこそがデイヴィッドの魅力だと思っていた俺は、ちょっと苦々しくも感じていてね。60代になったころからライヴでのデイヴィッドは高音域がキツそうで、キーもかなり下げていたし、『Whitesnake』以降のメタリックな楽曲はもう止めて、初期のブルーズロック・テイストが強かったころの楽曲をやったほうがいいんじゃないかと、ずっとずっと思っていました。そのほうが喉への負担も低いだろうし、デイヴィッドの魅力は、そういった楽曲でこそより発揮されるはずだと思うんだけど、それももう聴くことは出来ないのかな……。最近公開された動画のデイヴィッドはなんだか疲れているように見えたし、体調もあまりよくないのかもしれない。そういえば、数年前に大規模なツアーからの引退は表明していたものの(音楽活動からの引退は否定していた)、そのツアーは体調不良で中止になったままだった。まさか、それからずっと回復していないなんてことはないよね……。
こんなことを書くのはほんとうに寂しいけど、これまで、たくさんの素晴らしい音楽と、想い出をありがとう……。でも、でもね、また『Starkers in Tokyo』みたいなアコースティック・アルバムなんかをやるのはどうでしょう? ハードロックじゃなくていいです。またいつか、その歌声を聴ける日が来ることを、心から願っています……。
I wish you well, David !!
エイドリアン・ヴァンデンバーグとの『Starkers in Tokyo』で披露されたDEEP PURPLEの名曲。こういうのまたやってくれないかな……
※ikkieのバンド、Antlionのシングルがリリースされました!
ストリーミング&ダウンロードはこちらから
https://linkco.re/vPZ00Quz?lang=ja
※ikkieのYouTubeチャンネルです!
https://www.youtube.com/channel/UC-WSajndNhq0tu7K7-MBEmQ?view_as=subscriber





