第403回 洋楽編 ―― David Coverdale My Favorite Singer of All Time !! #2魂のシンガー、デイヴィッド・カヴァデール
デイヴィッド・カヴァデールの引退表明ショックの余韻をいまだに引きずっています。引退はデイヴィッドの年齢を考えれば致し方ないことだと理解はしているし、噂される健康不安説が事実であるならば、ゆっくり休んでね、とは思うものの、40年来のファンとしては、心に大きな穴がぽっかり空いてしまったようで、寂しくてたまらないです……。そんなわけで、今回の音楽総研も、前回に続いてデイヴィッド・カヴァデールについてあれこれと。まだまだ書き足りないんですよねえ。

俺はいつも、「デイヴィッドはもうハイトーンでシャウトするような曲はやらなくていい、昔のようにブルージーな曲を歌ってほしい」と、ここに書いてきたけど、俺のようなマニア以外は、WHITESNAKEといえば『Whitesnake』や『Slip of the Tongue』に収録された楽曲を思い浮かべる人がほとんどだろうし、デイヴィッド自身にも、ライヴであの時代の曲をやらないという選択肢はなかったと思う。もちろんそれは俺も理解しているし、俺だって聴きたい曲がたくさんある。それでも個人的には、アメリカナイズが始まりだした『Slide It In』よりも前の『Love Hunter』や『Ready an’ Willing』、『Walking in the Shadow of the Blues』といった楽曲が何曲ライヴで聴けるか、ということが楽しみでもありました(と言いつつ、『Slide It In』がフェイヴァリットアルバムだったりするんだけど)。やっぱり、そのころの楽曲のほうが、デイヴィッドの本来の魅力がより発揮されていると思うんだよね。
DEEP PURPLE時代のデイヴィッドの名演といえば、俺にとっては『Burn』よりもこちら。1974年の映像だから、このころのデイヴィッドって22か23?! 信じられないね
以前、WHITESNAKEにアメリカ人のギタリストは合わないと思う、と書いたのは、彼らのほとんどが『Whitesnake』か、せいぜい『Slide It In』からしかWHITESNAKEのことを知らず、英国のブルージーなハードロックバンドだったころのWHITESNAKEの魂……というと大げさだけど、そう言いたくなるような、初期のWHITESNAKEのブルージーな楽曲に興味がないように見えていたから。みんな上手いんだけどね。とはいえ、それはイギリス人のジョン・サイクスだってギリギリで、ジョンとのアルバム『Whitesnake』から、別のバンドかってくらいに変わっちゃったんだけども。ただ、このサウンドの変化はジョンの力が大きかったとは思いつつ、デイヴィッド自身が望んだことでもあっただろうから、後任のミュージシャンにあれこれ言うのはお門違いだとはわかっています。でもね、キーを下げてまでシャウトするデイヴィッドを見ていると、もっと昔の曲を増やそうって誰か言わないのかな、なんてことを思ってしまう。一度目の解散を経てエイドリアン・ヴァンデンバーグらと再結成したころや、ダグ・アルドリッチがいたころはけっこう昔の曲をやってくれたんだよね。ダグかエイドリアンがバンドに残っていたらなあ……。いや、レブ・ビーチもジョエル・ホークストラも素晴らしいギタリストなんだけど。
バンドメンバーが変わってもずっと演り続けていたWHITESNAKEの魂とでもいうべき名曲(カヴァーだけど)。二人のギタリストのソロも素晴らしい!
デイヴィッドのヴォーカルは低音のディープヴォイスが魅力というのが定説で、それは俺も大いに同意するし、音楽総研にも何度もそう書いています。ただそれは、単純にキーが低い曲を歌っているという意味ではなく、高いキーで歌っても低く聴こえるというか、声が太いんだよね。自分で歌ってみるとよくわかるんだけど、デイヴィッドと同じキーで歌っても、1オクターブ上のキーで歌っているように聴こえてしまう。まあ、俺とデイヴィッドみたいなレジェンドシンガーと比べても、って話ではあるんだけど、実力派とされる有名なシンガーであっても、デイヴィッドと同じように太い声で歌える人は少ない。他に誰がいるかなあ……、ハイトーンの凄い人ならすぐに浮かぶんだけど。初期のWHITESNAKEを聴いたことがない人は、ぜひ聴いてみて! 俺がしつこいくらい何度も書いている理由がわかってもらえるはずだよ。
残念ながら公式動画なし。名ライヴ盤からオーディオのみ。イアン・ペイス(Dr)もジョン・ロード(Key)もいる、この時代のライヴを観てみたかった……
デイヴィッドには野心家で計算高い人だという評判があって、解雇されたバンドメンバーたちから批判的な発言が出ることも多い。それでも、WHITESNAKEはあくまでデイヴィッドのバンド。レコード会社との契約もバンドではなく、デイヴィッド個人との契約だというし、辞めたメンバーたちの「デイヴィッドからギャラが払われなくなって、自分はクビになったと知った」というような発言を聞けば、どういう成り立ちのバンドなのかよくわかるよね。1984年に『Slide It In』がヒットするまで、デイヴィッドには100万ドルもの負債があったという(当時のレートで2億円超)。それほどの負債を抱えながらも、絶対に成功してやるぞ、とバンドを続けて、空前の大成功を手にしたのだから、計算高かろうが野心家だろうが、やはりデイヴィッドは凄い。そして、それでもなおデイヴィッドにはビジネスマンという印象はなく、“魂のシンガー”という呼称が相応しい。デイヴィッド・カヴァデールは、これからもずっと俺のフェイヴァリットシンガーです。ゆっくり休んでください……。
※今年のikkieの音楽総研は今回でおしまいです。新年最初の掲載は1月6日の予定! お楽しみにー。
WHITESNAKEのライヴでは終演後に必ずこの曲がかかります。I Wish You Well, David !!
※ikkieのバンド、Antlionのシングルがリリースされました!
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