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インタビュー・記者会見
ぼくと魔法の言葉たち

第89回アカデミー賞®長編ドキュメンタリー映画賞ノミネート!!2017アニー賞特別業績賞受賞!!ドキュメンタリー映画「ぼくと魔法の言葉たち」・原題:Life,Animatedロジャー・ロス・ウィリアムズ監督インタビュー

ぼくと魔法の言葉たち

2歳で自閉症と診断されながらも、ディズニー・アニメから言葉を学び、コミュニケーション方法を取り戻して自立へと歩み始めたオーウェンと家族の奇跡の実話映画『ぼくと魔法の言葉たち』(原題:Life, Animated)。 彼ら家族の物語は各国の映画祭で感動の嵐とスタンディング・オベーションを巻き起こし、サンダンス映画祭では見事に監督賞に輝きました!
4月8日よりシネスイッチ銀座他で全国順次公開に先立ち来日したロジャー・ロス・ウィリアムズ監督へ映画の見所や気になる内容について様々な角度からお話を伺いました。

Q:本作の日本語タイトルは「ぼくと魔法の言葉たち」となっています。これは内容から日本人に解りやすいように設定したタイトルですが、日本語タイトルについてどう感じますか?

監督:『LIFE, ANIMATED』という原題は、ロンの原作通りで、彼がつけたものです。日本語タイトルは気に入っています。とても日本的な雰囲気がするなと思いました。

Q:オーウェンがディズニー・アニメーションを介してコミュニケーションをとれるようになっていく過程は段階があったと思います。最初は役と役とのやり取りとしてのコミュニケーション。
それについては、涙なしには見られないシーンがあります。ロンがイアーゴになりきってオーウェンに話しかけるシーンですね。あのシーンを導くロンの気づき、すなわちオーウェンの何気ない呟き「ジューサーボース」をリトル・マーメイドのセリフ「JUST YOUR VOICE(声をよこせ!)」だと思い当たったというのは、とりもなおさずロンの父としての愛のなせる業で、それを思うと胸が熱くなります。
第2段階としては、本作の中でセラピストも言っていましたが、アニメのシーン、シーンをパターン化し、そのパターンを現実に当てはめていくというコミュニケーションの取り方。
第3段階としては現実に直に対応したコミュニケーション。オーウェンはその最終段階まで成長していったと感じますが、そうでしょうか?

監督:オーウェンはおっしゃる通り、とても素晴らしい成長を遂げたと思います。僕が撮影をしていたのは、卒業や恋愛、初めての親元を離れての自立生活といった、彼にとっての人生における大きな転機にあたる時期でした。映画にも登場しますが、オーウェンはパリのコンベンションで、たくさんの人々の前で、自分の言葉でスピーチを行いました。これには両親も心から驚き、息子の成長ぶりに感嘆していました。
舞台に上がる直前、「アーユーレディ?(準備はいいかい?)」と聞くと、彼はスッと背筋を伸ばして「アイアムレディ(準備オーケーだよ)」と答えました。その姿には僕もとても感動し、本来なら自分の声は映画の中に使わない方針なのですが、特別に残すことにしました。オーウェンはたくさんの映画祭にも同行し、スピーチや質疑応答もこなしましたし、最近ではアカデミー賞の授賞式にも参加しました。残念ながら受賞はできなかったのでお披露目することはありませんでしたが、彼は差別的な発言を繰り返すトランプ大統領へのメッセージも入れたスピーチを用意していたんですよ。

Q:オーウェンにとってディズニー・アニメーションはいつかは卒業しなくてはならないものでしょうか?

監督:オーウェンは今でもディズニー・アニメーションを観て、人生のガイドとしています。この作品を公開して1年間、サスカインド家といろいろなところに行きましたが、いつも映画の中のようにディズニー・アニメーションを見て会話に使っていましたし、家族もそれを大いにサポートしています。それが息子を取り戻した手だてであり、彼らが息子と繋がる方法であるということに気付いたからです。言い換えれば、ディズニー・アニメーションというのはオーウェンが自分を表現するための、そして世界を解釈するための彼なりのツールなのです。そのことは、映画の中で初めて独り暮らしをした時、両親が帰ってしまって、『バンビ』(1942)の1シーン――母親が撃たれ、バンビが独りになってしまう場面――を見ている姿からも伝わります。そういった彼なりのディズニー・アニメーションの使い方は、これからも続いていくと思います。