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勝手に植物図鑑

バイケイソウ

岩壁に抱かれて…

前日甲斐駒ケ岳黒戸尾根五合目にテント泊して7月14日の早朝4:30に出発した。

七条小屋を過ぎ八合目から登山道を外れほとんどガレたグズグズ道を谷に向かって降りると、そこここにまだ花をつけていないばかりか、花茎もない青々した立茎をみかける。てっきりコバイケイソウだとばかり思った。コバイケイソウの群生はこれまでに何度も見かけているが、バイケイソウはなかなかお目にかかれていない。
コバイケイソウが亜高山帯に生息するのに比し、バイケイソウは中低山帯を生息地としているのだが、 ついつい夏場は暑気を避けて高山を目指すことが多いからだ。

昨春、GWの後半行きあぶれて丹沢縦走をしたことがあるが、檜洞丸の山斜面一面にバイケイソウが群生していた。花期には幾分早く、咲いている個体はわずかだったこともあり、どうやら上手く撮れなかったとみえて「…植物図鑑」にはアップできていない。

赤石沢中央稜の岩壁と岩壁の間の草付きにはダイコンソウだのハクサンフウロウだの夏の山草花がたくさん咲き、目を楽しませてくれる。

確か3P目の取り付あたりだった。ずっと岩壁の下は腿までの草丈。それが前夜の雨で露を持ち、クライミングシューズのままでヤブコギしてきたものだから足元もパンツもじとじとして気分がよろしくない。
リードビレーのお役目を免れているのをいいことに、気慰めにハクサンフウロウでも撮ろうかとカメラを引っ張り出して気が付いた。すぐ脇にバイケイソウが咲いているではないか!
まだ咲き始めだが、特徴的なきれいな緑色の花をつけたのが3、4株ほど。それでいっぺんに赤石沢一帯がバイケソウの生息地だと理解した。

日当たりのよい斜面でおまけに3Pの岩壁が程よく風除けをかってくれているおかげで、他がまだまだ花期を迎えていないのに、ここだけ早々咲き始めているのだ。

もう1週間もすれば、ここまでの道すがら目にしてきたバイケイソウが一斉に花開くだろう。それはきっと、ステキな眺めにちがいない。

花期は6月から8月

撮影年月日 2013/07/14
撮影場所 甲斐駒ケ岳赤石沢奥壁中央稜・山梨県/長野県
学名 LILIACEAE Veratrum grandiflorum
科目・属 ユリ科ショロソウ属
季節
生育地 山地の林内や湿った草原などに生える多年草
分布 北、本(中部地方以北)