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シネマピア
【映画レビュー】RED ROOMS レッドルームズ

【映画レビュー】RED ROOMS レッドルームズ

シネマピア

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米批評家サイト「ロッテントマト」で96%の高評価! ファッションモデルを生業とするほどの美貌の持ち主が傾倒するのは、連続殺人犯の裁判の傍聴。何不自由ない収入を得ながら、何故に彼女はそれほどまでに殺人犯に固執するのか……。どこにも安らぎのない、一瞬たりとも気を抜けない主人公の錯綜した心理を、自らも監督業をこなすジュリエット・ガリエピが絶妙な表情で演じきる。

ケリー=アンヌ(ジュリエット・ガリエピ)は類まれなる美貌を持つファッションモデル。だが、自宅を高層マンションに構えながらもまるで浮浪者かのように毎晩裁判所前の路上で寝起きする。彼女のお目当ては世間を震撼させる連続殺人犯。異常なまでにその殺人犯に魅入られた彼女の行く末とは……。

やりたいこと、やった方がいいこと、やらなければならないこと、やらなくてもいいこと、やらない方がいいこと、やらずにいられないこと、やってはいけないこと。それらが複合的に重なり合い、我々の前に現れ、それを見つけた我々はそれらをやったりやらなかったりしながら、日々を、人生を生きている。
私なんぞは日々、“やらなくてもいいこと”を“やらずにいられずに”やってしまい、“やらなければならないこと”が後回しになり、そのせいで後々自分も困り果ててしまうといった、まあ所謂ダメ人間のお手本のような人生を送っているわけだが。だが、とはまるで続きがあるかのような言いぶりだが、続きも着地もない。ただただダメ人間が生きながらえているだけだ。だからこその苦悩が作詞などのネタになり、作品へと昇華されているのだ……という苦しい言い訳をするしかない訳だが。だが、とはまるで続きがあるかのような言いぶりだが(以下ループ)

主人公のケリー=アンヌが傾倒しているのは、傍から見れば“やらなくてもいいこと”だが、彼女本人からすれば“やらずにいられないこと”だ。誰もが羨むような美貌を持ち、誰でもできるわけではないモデル業を華麗にこなしながら、だがそれだけでは彼女の心は満たされることがなく、シリアルキラーウォッチングに余念がない。被害者を蔑むような目つきで見たかと思えば、殺人犯には羨望のまなざしを向ける。普通に友だちがいる気配もなく、唯一の“友だち”をも冷たい態度で“試し”にかかる。
だがその“友だち”との顛末が、そして“やらなくてもいいこと”を“やらずにいられずに”、“やってしまった”その結果が、彼女の心の方向性を変え、罪滅ぼしのようにあの結末へと至らしめたのだ。

ケリー=アンヌは恐らく、無条件に愛されたことがなかったのだろう。だがあのあと、自分が成したことに対する報酬がかつて自分が蔑んでいた者からの感謝としてもたらされたなら、きっと彼女の心は、そして人生は、再び好転へと導かれていくのだろう。

私たち観客は本作で、彼女のその転機を観るのだ。自分の人生と照らし合わせながら。

Pascal(監督)

監督・脚本:パスカル・プラント
出演:ジュリエット・ガリエピ、ローリー・ババン、エリザベート・ロカ、ナタリー・タヌー、ピエール・シャニョン、ギー・トーヴェット、マックスウェル・マッケイブ=ロコス
配給:エクストリームフィルム
公開:9月26日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ他、全国ロードショー!
公式サイトhttps://redrooms.jp/

© Nemesis Films

記:林田久美子  2025 / 08 / 10