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【映画レビュー】ウォーフェア 戦地最前線

【映画レビュー】ウォーフェア 戦地最前線

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『シビル・ウォー アメリカ最後の日』で、フィクションながらもリアルすぎる国家の分断と内戦を描き出して話題を呼んだ鬼才、アレックス・ガーランド監督が、最新作の本作では、実際に起きた戦地での“実体験”をリアルに再現。共同監督・脚本のレイ・メンドーサ自らが体験した二十年前の現地での戦況を、彼の同胞の兵士たちに徹底して聞き取りを行い、脚本を完成させた。見始めたが最後、1秒たりともスクリーンから目が離せなくなる、圧倒的にリアルな戦地体験。

2006年、イラク。レイ・メンドーサ(本作監督)は、アメリカ海軍の特殊部隊“シールズ”の小隊に所属しており、総勢8名の兵士で深夜に行動を開始する。翌日に地上部隊がこの地域を安全に通過できるように、アルカイダ幹部の動きを監視することが任務だ。イラク中央部に位置する危険地帯、ラマディにある民家を占拠した彼らだったが……。

ウォーフェア 戦地最前線
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ウォーフェア 戦地最前線
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1シーン1シーンがリアルな……いや、リアルであるかどうかは、今の日本に生まれて戦争を経験していない私なんぞには、恐らくこれがリアルなのだろうという想像しかつかないのだが、1つ1つのシーンがリアルであろうと推察される戦争映画は世の中にたくさんある。『プライベート・ライアン』『ブラックホーク・ダウン』『プラトーン』『ハート・ロッカー』『シン・レッド・ライン』『戦火の勇気』等々、いくらでも挙げることができる。これらの作品群は、実際の戦争を題材にしながらも、映画として、エンターテインメントとして成立するよう、起承転結のある物語を構築している。

だが本作は、こうしたハリウッドのフォーマットに則らず、ただただリアルな凄惨な戦況を再現しているだけだ。映画製作会社のA24が得意とするところの、緻密でリアルな表現技術の成せる技によって。だが、“だけ”にも関わらず、始まりから終わりまで、1秒たりとも目を離すことができなくなってしまう。そして映画が終わるころには、ただただ凄惨だった記憶だけが脳裏に焼き付くことになる。それこそが監督の意図するところだ。「戦争を開始する決定を下す人々に忘れてほしくないと思って、この映画をつくった」と、メンドーサ監督が語るように。

クリスマスの時期には、たくさんのクリスマスソングが街中に流れるが、そのうちの1曲、ジョン・レノンの『Happy Xmas (War Is Over)』は言わずもがなの有名曲だが、歌詞の一節には「Let’s stop all the fight」(すべての争いをやめよう)とある。この曲と本作は、表現方法こそ対極にあるが、根っこにある願いは同じだ。早くその日が来るようにと、本作を観終わったあとに、さらにその思いが強くなった。

真実を極力まで再現したからこそ、その“願い”を心の底から願わずにいられなくなる力を持つに至った作品……それが本作なのだ。

【映画レビュー】ウォーフェア 戦地最前線

監督・脚本:レックス・ガーランド(『シビル・ウォー アメリカ最後の日』)、レイ・メンドーサ(『シビル・ウォー アメリカ最後の日』『ローン・サバイバー』軍事アドバイザー)
出演:ディファラオ・ウン=ア=タイ、ウィル・ポールター、ジョセフ・クイン、コズモ・ジャーヴィス、チャールズ・メルトン
配給:ハピネットファントム・スタジオ
公開:1月16日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
公式サイトhttps://a24jp.com/films/warfare/

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記:林田久美子  2025 / 12 / 10