【映画レビュー】しあわせな選択
リストラのあおりを受け、目指す企業への再就職に手こずる男。それならいっそ、競争相手を“消して”しまおう……?! カンヌ国際映画祭グランプリ受賞の伝説的名作『オールド・ボーイ』を生み出したパク・チャヌク監督が、中年男性の就活サバイバルを夫婦の絆に絡め、皮肉と悲哀とユーモアをふんだんに取り交ぜて描き出す!! ヴェネチア国際映画祭コンペティション出品、トロント国際映画祭・国際観客賞受賞、2026年アカデミー賞・国際長編映画賞の韓国代表として選出。そしてゴールデングローブ賞ではミュージカル/コメディ部門の作品賞、主演男優賞、非英語作品賞にノミネート。話題が話題を呼ぶ怪作に、公開を待ちきれない声が早くも巻き起こる!
住宅ローンで郊外に大きな家を買い、妻と2人の子供、2匹の犬と“理想的”な人生を送っていたマンス(イ・ビョンホン)。だが、買収と機械化を理由に25年間勤め上げた製紙会社から突然の解雇宣告を受ける。再就職先に狙いを定めたマンスだったが、ライバルは多数。ならばと閃いたアイデアは、常軌を逸することだった。それはライバルを”消す”こと……。







当初、本作は原作『斧』のとおりに舞台をアメリカにしての製作を望んでいたが、どのアメリカの映画会社からも製作費が下りなかったため、舞台を韓国にしての製作となった。だが結果的には韓国版が作品的にも興業的にも好評となったため、パク監督はアメリカの映画会社に「投資してくれなくて感謝する」と述べるまでに至った。そして本作はゴールデングローブ賞にもノミネート。なんとも皮肉なことだが、と同時に痛快さも感じるエピソードだ。再就職先がなかなか決まらなかったマンスと、パク監督の姿がかぶるようだ。だが監督は(当然だが)実力で現実を打破したのだ。
社会に出て仕事や趣味の活動をしていれば、誰にでもライバル視している存在の1人や2人はいることだろう。よくある青春モノのコミックなどではそのライバルがいやな性格で描かれ、観客が主人公に感情移入しやすいようにできている。
だが本作のライバル役も主人公も、全くの善良な性格の人間どうしだ。そのまっとうな性格の主人公が、真面目で仕事熱心な性格のライバルを、”就活の一環”として殺そうとする。この大きな矛盾が本作の醍醐味だ。これを観客はどう観るのか、どう消化すればいいのか。
それにしてもラストの皮肉よ。ならば最初から……と誰もが思わずにいられないだろう。そうすれば、この常軌を逸した物語も、あらゆる不幸も、始まりさえもしなかったのに。





原作:ドナルド・E・ウェストレイク『斧』(文春文庫)
監督:パク・チャヌク『オールド・ボーイ』、『お嬢さん』、『別れる決心』
脚本:パク・チャヌク、イ・ギョンミ、ドン・マッケラー、イ・ジャヘ
出演:イ・ビョンホン 『コンクリート・ユートピア』「イカゲーム」、ソン・イェジン 『私の頭の中の消しゴム』「愛の不時着」、パク・ヒスン 『警官の血』、イ・ソンミン 『ソウルの春』、ヨム・ヘラン 「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」チャ・スンウォン 『毒戦 BELIEVER』
配給:キノフィルムズ
公開:3月6日(金) TOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開
公式サイト:https://nootherchoice.jp/
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記:林田久美子 2026 / 01 / 10





