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第142回 ライヴレポート編 WHITESNAKE ―― DEEP PURPLE時代の名曲が披露された歴史的ライヴ!

10月30日、パシフィコ横浜国立大ホールで行われたWHITESNAKEのライヴを観に行ってきました!2年ぶりの来日だということに加えて、バンドのキーパーソンだったギタリストのダグ・アルドリッチが脱退し、NIGHT RANGERのジョエル・ホークストラが加入してから初の日本ツアー。これは見逃すわけにはいかないでしょ!

ここ数年は大きめのライヴハウスが会場になっていたWHITESNAKEだけど、今回のツアーはこのパシフィコ横浜や国際フォーラムなどの大きなホールで行われた。これは、今年発表されたデイヴィッド・カヴァデールのDEEP PURPLE時代の楽曲をセルフカヴァーしたアルバム、『The Purple Album』の売れ行きが好評なことと無関係ではないだろう。バンドを間近に観られるライヴハウスも魅力的だけど、WHITESNAKEにはやはりこういった大会場が似合う。この日の客席にはいくらか空席があったものの、現在の日本でのハードロック人気を考えればまずまずの入りじゃないかな。

『Burn』
オーディオのみだけど『The Purple Album』バージョンで。 この曲のギターリフはほんとに凄いね。 40年以上前の曲だなんて信じられないなあ……。

定刻から10分ほど過ぎたあと、THE WHOの『My Generation』が開演を知らせる。大歓声に迎えられながら登場したバンドがプレイしたのは『Burn』! 第三期DEEP PURPLEの代表曲にしてロックの歴史に残る大名曲に、客席は早くも大盛り上がりだ。しかし、ライヴ前半の常とはいえ、サウンドバランスがかなり悪く、パートによってはデイヴィッドの声があまり聴こえないし、演奏も細かいところが聴き取れない。それでもサビでは大合唱が起こり、リッチー・ブラックモアによる印象的なギターソロをモチーフに、さらに激しくプレイしてみせたレブ・ビーチに大きな歓声が送られた。ダグが脱退した後のファーストギタリストはやはりレブで、ステージでの立ち位置が上手(ステージに向かって右側)に変わっている。続く2曲目は初期WHITESNAKEの代表曲『Fool For Your Loving』。DEEP PURPLEの曲ばかりやるんだろうとなぜだか思い込んでいた俺は少し拍子抜けしたけど、WHITESNAKEの曲もやるのか! と嬉しくなった。WHITESNAKEのライヴなんだから当たり前なのにね。デイヴィッドの歌声はかすれ気味で、高音パートはシャウトでごまかしているようにも感じられたけど、低音パートではあの深みのある歌声が健在だったし、年齢(64歳!)を考えればこの歌唱は驚異的だと言ってもいいだろう。

『You Keep On Moving』
アメリカツアーかな? ファン撮影の動画だけど、なんとグレン・ヒューズが参加!  何十年ぶりのデュエットなんだろう? 日本にも来てくれたらいいのに……。これはレブのソロもいいね。

「Fuckin’ゲンキ?」というデイヴィッドによるおなじみの問いかけのあと、「ウタッテー!」とプレイされたのは『Love Ain’t No Stranger』だ。新加入のミケーレ・ルッピによるキーボードの音が明るすぎて楽曲の哀愁度が少し減っていたような気がしたけど、この曲は俺のオールタイム・フェイヴァリット。前回の来日時にはプレイされなかっただけに、喜びもひとしおでした。そして同じく新加入のジョエルのギターソロが素晴らしかった! 原曲のフレーズを崩さずにジョエルなりの味を加えたプレイに大きな拍手が起こる。このソロを聴いて「ジョエル、合格!」と思った人も多かったのでは。続く『The Gypsy』ではレブとジョエルの新ギタリストコンビが息の合ったハーモニーを披露、相性の良さを伺わせた。大ヒットソング、『Give Me All Your Love』は観客が大合唱。デイヴィッドの声はやはりあまり出ていないけど、あくまでも以前に比べれば、だ。楽曲の魅力が損なわれるほどではないし、瞬時に客席を掌握するフロントマンとしてのカリスマにはいささかの翳りもない。

「ジョン・ロードとトミー・ボーリンに」と、亡くなったDEEP PURPLEのメンバーに捧げられたヘヴィ・ブルーズ『You Keep On Moving』には鳥肌が立った。トミー・ボーリンがいた第四期DEEP PURPLEは過小評価されがちだけど、実は隠れた名曲がたくさんある。そして、デイヴィッドのヴォーカルはこういったブルーズでこそ本当の魅力を発揮すると思う。この重厚な存在感はやはり唯一無二だ。加えて印象的だったのがベーシストのマイケル・デヴィン。ずっしりとボトムを支えるベースが実に良い味を出していたし、名シンガー、グレン・ヒューズのパートを担当するのは、実は超絶ハイトーンシンガーとして知られたミケーレ(てっきりグレン役で加入したのかと……)か、歌唱力に定評のあるレブだとばかり思っていたら、なんとマイケルだった。短いパートだったけど、実にソウルフルで、声質も少しグレンっぽい。後半に披露したハープも良かったし、マイケルはなかなか芸達者だな。……それにしても、DEEP PURPLEの中でも地味な部類に入るであろうこの曲や、『The Gypsy』をライヴで聴ける日が来ようとは。それだけでも今回のライヴに来た甲斐あり! だね。
(後編に続く)