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第373回 邦楽編 ―― KOIAI その魅力は超絶技巧だけにあらず!

10月に入って俺の住んでいる東京もだいぶ過ごしやすくなってきました。このまま寒くなってあっという間に今年も終わっちゃうんでしょうかね。やだやだ。……さて、今回の音楽総研は天才少女ギタリストとして世界中を驚かせたLi-sa-X率いる、KOIAIをご紹介! 8月にMVが公開された最新曲には度肝を抜かれちゃいました。

KOIAIは、Li-sa-X BANDで活動を共にしていたLi-sa-X(G)とNEMOPHILAのギタリスト葉月が、Li-sa-X BANDの活動終了後にカヴァー動画などでコラボレーションしていたKotono(Vo)と3人で結成したロックバンド。2枚のEPをリリース後、サポートメンバーだった佐藤奏(Dr)を正式メンバーとして迎え入れ、現在は4人で活動している(ベースはサポートメンバーが担当)。

KOIAIのことを詳しく書く前に、まずはLi-sa-Xのことに触れておくと、彼女はまだ7歳だった2012年からYouTubeにMR.BIGポール・ギルバートのカヴァー動画の投稿を始めて、自分の体より大きそうなギターを抱え、楽しそうに難曲を弾きこなす様子が世界中で大バズり(Li-sa-Xという名前は、ポールのバンドRACER Xのモジリ)。それ以降もガスリー・ゴヴァンPOLYPHIAなどの超絶技巧アーティストたちのカヴァーを次々と投稿。ついにはポール・ギルバート自身の目に留まり、本人から特別レッスンを受けないかとのオファーが届くまでに。そしてYouTubeだけでなく、サマーソニックなどの大型フェスや海外のイベントにも出演、観客の前でその実力が本物であることを証明した。さらに、なんと12歳でメジャーデビューを果たし、確かなテクニックで世界中のギターマニアたちを唸らせ続けています。

初めてLi-sa-Xの動画を観た時は、まだまだあどけない表情の小さな女の子が、とんでもなくテクニカルな楽曲をバリバリ弾きまくるのに衝撃を受けたし、凄い子がいるもんだなあ、なんて思っていたものの、アーティストとしては未知数過ぎて、注目はしているけど、ただただ成長を見守っているというか、新しい動画を楽しみにしている……というような存在でした。しかし、Li-sa-X BANDで彼女が手がけた楽曲を耳にして、これは想像していた以上に本物だったと気付き、すっかりファンになってしまったという。

Li-sa-X BANDはLi-sa-Xと葉月のテクニカルなギターが中心なんだろうと予想していたんだけど、情感豊かな里奈のヴォーカルが素晴らしく、2人のギターとも十分に渡り合っていて、想像以上に“バンド”だった。こちらが想像していたような企画ものではなさそうだし、ずっと続けてほしいと思っていたんだけど、里奈が脱退してしまう。NEMOPHILAがブレイクし始めた時期でもあったし、葉月はNEMOPHILAに専念するのかな、と思っていたら、カヴァー動画でコラボしたりしていたKotonoと3人でKOIAIを結成。Kotonoの参加は予想していたから驚きはなく、彼女との相性の良さも感じていたから、期待出来そうだと思ったし、何より葉月が辞めなかったのは嬉しかった……けど、Kotonoと里奈とのスタイルの違いから、Li-sa-X BANDみたいな曲はもうやらないんだろうな、と少し寂しくも思っていました。しかし、蓋を開けてみれば、Li-sa-X BANDとは違う音楽性ではあっても、こちらはこちらでとんでもなく魅力的なサウンドで、どれだけ才能豊かなんだとあらためて驚かされることに。

彼女たちの音楽性はちょっと簡単には言葉にしづらくて……というのも、アラフィフの俺は聴いたことがないような新しい要素がたくさん詰まっていて、なんと形容していいものか迷ってしまうんだよね。ロックであるのは間違いないけど、Li-sa-Xや葉月がいることで想像するようなHR/HM一辺倒ではないし、プログレやジャズ・フュージョンの要素もある。そしてKotonoが歌うヴォーカルラインはポップでガーリー……、ちょっとこういうバンドは他に聴いたことがないなあ。そしてまた、ファーストEPセカンドEPでもかなり印象が違うんだよね。

どちらもテクニカルなギターはフィーチャーされているけど、ファーストはより歌にフォーカスしている印象で、セカンドはギターの存在感が増しているような印象。それでも歌が引っ込んでいるわけではなく、一緒に歌えるようなキャッチーなメロディは健在。しかし、コード進行やアレンジがより変態的になっているというか、人によっては難解だと感じるかもしれない。個人的にはセカンドのほうが気に入っていて、よくリピートしています。とくに『A New Picture』が凄くてね。初めて聴いた時は口あんぐり、でした。これ、作曲した時のLi-sa-Xはまだ高校生でしょ? ちょっと信じられないっす。

そしてさらに凄いことに、セカンドリリース後に正式加入したドラマーの佐藤奏は、どこかで見たことがあると思っていたらEテレでやっていた『ムジカ・ピッコリーノ』でドラムを叩いていた天才少女じゃないの! 彼女にはあんまりロックなイメージがなかったけど、ライヴ動画などを観るとバンドにぴったりだし、ほんとに凄いメンバーが集まったもんです。サポートベーシストのわかざえもんが正式加入したらさらに凄いことになりそうだけど、いろんなバンドで忙しそうだし、サポートを続けてくれるならそれでいいかなあ……。

この10年ほど、KOIAIやNEMOPHILA、LOVEBITESBAND-MAIDといった女性メンバーによるハードなサウンドのロックバンドの躍進には目を見張るものがあって、それ自体は大変に喜ばしいことではあるんだけど、彼女たちのような音楽を演奏する若い女性のアーティストはいるのに、なぜか若い女性ファン(若い男性も?)がいなさそうなのが悩ましい。彼女たちのサウンドは、たしかにアラフィフ男性に支持されるものではあると思うんだけど、先に挙げたバンドの中でも、とくにKOIAIの歌詞やファッションは若い女性にこそ共感されるものじゃないだろうか……と、アラフィフの俺が言っても説得力がないかね。それでも、KOIAIが一般受けしそうな要素もたくさん持っているのは間違いない。さらなるブレイクを期待しています!

※ikkieのバンド、Antlionのシングルがリリースされました!
ストリーミング&ダウンロードはこちらから
https://linkco.re/vPZ00Quz?lang=ja

※ikkieのYouTubeチャンネルです!
https://www.youtube.com/channel/UC-WSajndNhq0tu7K7-MBEmQ?view_as=subscriber