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John Sykes & David Coverdale

第393回 洋楽編 ―― John Sykes & David Coverdale 恩讐の彼方に

前回チラっと触れたオジー・オズボーンBLACK SABBATH最後のライヴですが、ライヴの翌日あたりから、参加したアーティストたちが当日の様子をSNSにたくさんアップしてくれています。バックステージの様子を撮影しているものもあって、そこにはなんとオジー・オズボーンとジェイク・E・リーが談笑している姿が! ジェイクの大ファンの俺は泣きそうになっちゃいました。ジェイクに『Bark At The Moon』アルバムのクレジットを渡さなかったとされるオジーの妻でマネージャーでもあるシャロンも笑顔でそばにいて、普通に話せる仲には戻れたのかなと……。ジェイクがオジーのバンドを辞めた(辞めさせられた)当時のことを考えると、こんな未来は想像も出来なかった。オジーとシャロンがこの引退公演にジェイクを呼ぼうと思ったことが嬉しいし、ジェイクがそれに応えたことも嬉しい。こうやって確執があったとされるアーティスト同士が再会することは、ファンとしてはほんとに嬉しいよね。中にはもう二度とそれが叶わない人たちもいるし……。WHITESNAKEだった二人……、ジョン・サイクスデイヴィッド・カヴァデールは和解できないまま、ジョンが亡くなってしまった。

John Sykes & David Coverdale

昨年の12月にジョン・サイクスが亡くなっていたことが、今年に入って彼の息子たちにより発表されて音楽総研でもすぐに追悼記事を書いたけど、最近またジョンの追悼本を読んだりしてジョンのことを考えていたところに、オジーとジェイクの再会を見てね。ジョンが健在でありさえすれば、ジョンとデイヴィッドにもこういう未来があったかもしれないと思うと悲しくなっちゃって……。

音楽総研には何度も何度も書いてきたけど、ジョンが初めて全面的に参加した『WHITESNAKE』アルバムは、全米チャートで2位を記録したほか、世界中で大ヒットを記録。しかし、リメイクした2曲以外をすべてデイヴィッドと共作し、アルバム制作に多大なる貢献をしたはずのジョンは、アルバムの完成間近にバンドを解雇されてしまう。俺の記憶だと、デイヴィッドははっきりと解雇の理由を話していないんだけど……、ジョンやバンドの関係者によると、当時、喉や鼻に問題を抱えていたデイヴィッドの治療のためにレコーディングが大幅に遅れてしまい、レコード会社に急かされたジョンとプロデューサーがデイヴィッド不在のままレコーディングを進めたことや、ジョンがデイヴィッドと対等な立場になろうとしていたことなどがデイヴィッドの逆鱗に触れ、一方的にジョンは解雇されたという。

『Crying In The Rain & John Sykes Guitar Solo – Super Rock ‘84 Japan』
デイヴィッド、ジョン、ニール・マーレイ(B)、コージー・パウエル(Dr)……、このころのラインナップがいちばんカッコよかったと思う

そしてデイヴィッドは、ジョンには知らせずにエイドリアン・ヴァンデンバーグを呼び、ギターパートを録り直そうとしてもいる。そのエイドリアンは、なんと一方的な解雇に激怒したジョンがスタジオに怒鳴り込んできた時に居合わせたという。直接ジョンに会うことはなかったものの、男性が怒鳴り合っているのを聞いた、と。ジョンによると、デイヴィッドは自分が解雇したのではなく、(レコード会社A&Rの)ジョン・カロドナーがやったと、最後まで認めなかったらしいんだけど、それはカロドナーがはっきりと否定している。カロドナーのインタビューを読む機会なんて、今回の追悼本以外にはなかったから、俺もなんとなくカロドナーが指揮をとってメンバーを辞めさせたのかな……なんて想像もしていたんだけど、考えてみればカロドナーはWHITENSNAKEを辞めた後のジョンとBLUE MURDERで仕事をしているし、やはりデイヴィッドが解雇を決めたのは間違いないんだと思う。

『Still of the Night』
この曲を初めて聴いたときはほんとに衝撃を受けました。これほんとにWHITESNAKE?って

ただ、デイヴィッドにしてみれば、WHITESNAKEは彼が70年代から率いてきたバンドで、しかもレコード会社との契約はバンドとしてではなく、デイヴィッド個人と結ばれていたというから、自分のバンドだと思うのは当然だろうし、その自分が不在の間に勝手に進めるとは何事だ、と腹が立ったとしても致し方ないだろう。それは理解できる。それに、シンガーである彼が喉の手術までしていたのなら、精神的に不安定になっていた可能性もあるのでは……。二人がもっと会話をしていたら、誰かが間に入ってサポートしていたら、もっと違う結果になっていたんじゃないだろうか。きっと、いろんなすれ違いがあったんだろうね……。

『Bad Boys』
これも衝撃でした。デイヴィッドとジョンの間には素晴らしいケミストリーがあった……

今回いくつかジョンの追悼本を読んで驚いたのが、実はデイヴィッドが何度もジョンに連絡をしていたということ。デイヴィッドはDEEP PURPLEやWHITESNAKEで一緒に活動したジョン・ロード(Key)が亡くなった際に思うことがあったらしく、生きているうちに確執があった人たちとの関係を修復したいと、リッチー・ブラックモア(DEEP PURPLE)やジョン・サイクスに連絡したと話していたことがあったけど、ジョンとは関係を修復できなかった、と。でも、その時以外にも何度も連絡していたようで、BLUE MURDERのマルコ・メンドーサ(B)や、ケリー・キーリング(Vo)がそれぞれデイヴィッドとのエピソードを話してくれている。ケリーによると、デイヴィッドが直接ジョンの家を訪ねてきたこともあるようだ。二人のファンとしてはそれが少し嬉しくもあったんだけど……、ジョンは許せなかったんだよね。

二人が再び組むという噂は何度も出ていたけど、それが実現することは永遠になくなってしまった。WHITESNAKEで経験したことがジョンに暗い影を落としてしまったことは間違いなく、彼が表舞台から去ってしまったことも、それが影響していたんだと思う。何十年も前のことであっても、忘れられない、許せない、ってことはあるよね。……それでも、デイヴィッドともう一度組むことがもしも実現していたなら、ジョンは過去の傷を乗り越えることができたのでは、と思わずにいられない……。

※ikkieのバンド、Antlionのシングルがリリースされました!
ストリーミング&ダウンロードはこちらから
https://linkco.re/vPZ00Quz?lang=ja

※ikkieのYouTubeチャンネルです!
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