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ジョージ・マイケル 栄光の輝きと心の闇

第404回 ロック映画編 ―― 『ジョージ・マイケル 栄光の輝きと心の闇』 栄光の裏側で、彼は何と闘っていたのか

あそびすと読者の皆様、謹賀新年でございます。昨年はオジー・オズボーンが亡くなったり、デイヴィッド・カヴァデールなどの何組ものアーティストが引退を表明したりと、悲しいことや寂しいことがたくさんあった年でした。……まあ、俺がロックや洋楽に目覚めた80年代の前半からはもう40年も経っているわけで、当時20代や30代だったアーティストたちは60代、70代になっている。そりゃ引退する人も出てくるかと、これまで以上に世代交代を意識した年でもありました。とはいえ、それはどんな世界でも必ず起こることだし、すっかり中年になってしまった俺をワクワクさせてくれるような若いアーティストたちも登場してきているから、悪いことばかりでもないよね。今年もいろんなところにアンテナを張って、このikkieの音楽総研の内容を充実させていこうと思っていますので、今年もよろしくお願いします! さて、前置きが少々長くなってしまいましたが、新年一発目は昨年末に公開されたジョージ・マイケルのドキュメンタリー映画、『ジョージ・マイケル 栄光の輝きと心の闇』についてあれこれと。……ちっとも若いアーティストじゃないな。

ジョージ・マイケル 栄光の輝きと心の闇

『ジョージ・マイケル 栄光の輝きと心の闇』
本作の予告。現在も公開中です! ぜひ劇場でご覧になってください

『ジョージ・マイケル 栄光の輝きと心の闇』は、2016年に亡くなったアーティスト、ジョージ・マイケルの世界的な成功と、その裏にあった心の葛藤を、本人のアーカイヴ映像と、親交のあったスティーヴィー・ワンダーサナンダ・マイトレイヤ(テレンス・トレント・ダービー)や、プロデューサーなど当時の関係者たちのインタビューで紐解いていくドキュメンタリー。本作の監督はWHAM!のマネージャーだったサイモン・ネイピア=ベル氏が務めている。

俺はWHAM!やジョージ・マイケルの音楽のファンではあったけど、インタビューをかかさず読んでいるようなジョージ個人のファンではなかったから、今回の映画に使われた本人のインタビューはほとんどが初めて見るものでした。多くのスターたちがそうだったように、彼もまた、本当の自分と、スーパースター、ジョージ・マイケルのパブリックイメージとの乖離に悩まされた人だったんだね……。

WHAM! 『Bad Boys』
この曲好きだったなあ……

ジョージの本名は「ゲオルギオス・キリアコス・パナイオトゥ」という日本人にはまったく馴染みのない名前で(父親がギリシア人)、ジョージ・マイケルという名前は、とても内気だったというゲオルギオス少年が、自身の夢を叶えてくれそうなヒーローとして夢想した人物の名前だったという。そして、その人物を演じることで、彼はスターになるという夢を叶えた。しかし、手にする成功が大きくなればなるほど、彼自身の内面の葛藤も大きくなっていく。

本作は時系列順に作られていて、ジョージがアンドリュー・リッジリーとWHAM!を結成し、音楽的な才能だけでなく、確かな野望と、したたかなビジネスセンスでヒットを重ね、人気者になっていくところまではとても楽しく観ることができたんだけど、ソロになってからはより大きな成功をつかむものの、レコード会社とのトラブルや、私生活のスキャンダルなどの話題が多く、どんよりとした気分になってしまった。それにしても、海外のマスコミのひどいこと! インタビュアーがいきなり「きみはゲイなの?」とニヤニヤしながらジョージに聞いたかと思えば、「『I Want Your Sex』は今年いちばんのひどい歌詞だ」と本人に向かって言う人もいたり。今とは時代が違うとはいえ、当時でもかなり失礼な発言だったんじゃないのかね。マイケル・ジャクソンのドキュメンタリーなんかを見てもいつも思うんだけど、欧米のマスコミは人権意識が高そうな振りをして、実は日本のマスコミよりもひどい気がする。

ジョージ・マイケル 『I Want Your Sex』
この曲はソロになってからの最初のシングルなんだよね、たしか。今思えば、過激な歌詞のこの曲をファーストシングルにしたのは「WHAM!とは違うぞ」という意思表明だったのかな

ジョージはゲイであることを当時はまだカミングアウトしておらず、「違うよ」と一旦否定し、「仮にそうであっても誰にも関係ないよね。僕の音楽を聴く人にとって、昨夜僕がベッドで犬といたのか、男といたか女といたかなんて」と、その失礼なインタビュアーに話す。そう、まったく関係ない。あごひげを生やしてガラッとルックスが変わったころから、そういう噂が出てきたのを覚えているけど、「ああ、そうなんだ」くらいにしか思わなかったし、もちろんジョージの音楽に対する印象が変わるなんてこともなかった。ファンはみんなそうだったと思う。

本人のパーソナリティには大きく影響することだから、歌詞や音楽性に影響を与えることはあるだろう。それでも、聴く側としては、その音楽が気に入るかどうかが問題なのであって、アーティスト自身のセクシュアリティは関係ないんだよね。あの失礼なインタビュアーに対しては、声を大にして「So What?」と言っておきたい。だから何だよ。アーティストには何を言っても、何を書いてもいいとでも思っているのか。慈善活動をたくさんやっていたこととか、そういうところは報道しないのに……。ただ、本作であらたに行われた関係者たちへのインタビューは、すべてジョージへのリスペクトや愛情が感じられるものだった。気難しいところや、エキセントリックなところもあったのかもしれないけど、ナイーヴで優しい人だったんだと思う。みんなに好かれていたんじゃないのかな。

QUEEN, George Michael, London Gospel Choir 『Somebody To Love』
エイズで亡くなったフレディ・マーキュリーのトリビュートコンサートでの歌唱。ジョージのあまりのハマり具合に、フレディの後任はジョージ・マイケルしかいない、なんて意見もたくさんありました。当時、ジョージの恋人もHIV陽性だったことがわかって、フレディと同じくエイズで亡くなってしまったんだってね。どういう気持ちでこのステージに立っていたのか……

ジョージ・マイケルを演じ続けたゲオルギオス・キリアコス・パナイオトゥは、2016年の12月25日に53歳の若さで亡くなってしまう。波乱万丈の人生とはこういうことを言うのだろう。亡くなるまで一緒にいた恋人の前では、彼は自分自身でいられたのだろうか。そうだといいな。

上映後にはサイモン・ネイピア=ベル監督によるトークショーも行われました。
ジョージやWHAM!にまつわる興味深いお話をいろいろ聞かせてくれましたよ

※ikkieのバンド、Antlionのシングルがリリースされました!
ストリーミング&ダウンロードはこちらから
https://linkco.re/vPZ00Quz?lang=ja

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