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第229回 JUDAS PRIEST ―― ヘヴィメタル界の王者でありながらも、貪欲な挑戦者でもあり続けるメタルゴッド

前回お知らせした、急遽ピンチヒッターを務めることになったライヴ ですが、リハーサルはいたって順調、いい感じに仕上がってきております! 今回のライヴではシンガーのaccoちゃんのサポートでギターを弾くんだけど、バンドではなく、彼女の歌と俺のギターだけというシンプルな編成で、個人的にはなかなかに緊張感の漂うライヴになりそうなんですが、普段はガットギターとのユニットや、福祉施設への慰問、オペラ合唱団(!)など幅広い活動をしているaccoちゃんの歌はとても素敵なので、ぜひ聴きに来てくださいね。3月9日、東新宿のライヴバー、LOVE TKO の「The Three Women」というイベントです。……さて、今回の音楽総研は、こちらも急病により出演出来なくなったオジー・オズボーンのピンチヒッターとして、急きょダウンロード・フェスティヴァル・ジャパン に出演することになったJUDAS PRIESTをご紹介!

JUDAS PRIEST は74年にデビューしたイングランド出身のヘヴィメタルバンドで、世界中のヘヴィメタルファンから畏敬の念をこめてメタルゴッドと呼ばれています。オジー・オズボーンがいたBLACK SABBATHがヘヴィメタルの創始者なら、JUDAS PRIESTはその様式を完成させ、ヘヴィメタルというジャンルを確立させたバンド。デビューから45年、常にヘヴィメタルシーンのトップランナーとして走り続けてきた彼らは、80年代のヘヴィメタルブームから、ヘヴィメタルというジャンルへの偏見から起こる、いわれのない差別や弾圧を矢面に立って受け続けた、ヘヴィメタルの栄枯盛衰、光と闇を一身に背負ってきた存在でもあります……。

俺がJUDAS PRIESTのことを知ったのは80年代の半ば、HR/HMに目覚めて、いろんなバンドを聴きあさっていた頃のことでした。当時は80年代前半に勃発したNWOBHM(ニューウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル)の波が過ぎ、BON JOVI やMÖTLEY CRÜE、RATTのような華やかなバンドが全盛の時代で、俺も彼らのようなバンドに夢中になっていたんだけど、そんな俺にとって、NWOBHMよりもさらに前から活動していたJUDAS PRIESTは自分より上の世代向けのバンドというか……、まあ、古臭いと思ったんだよなあ。また、当時のJUDAS PRIESTは、(今にして思えば)彼ららしくないポップなサウンドの問題作、『Turbo 』を発表した頃でね。決して完成度が低い作品だったわけではないものの、あのアルバムはJUDAS PRIEST初体験には向いてなかったと思う。……正直に告白すると、なんでこのバンドがメタルゴッドなんだろ? くらいに思っていました。

ただ、HR/HMの象徴でもあるレザーやスタッドはJUDAS PRIESTが始めたとか、これまたHR/HMの象徴のハイトーン・ヴォーカルはJUDAS PRIESTのロブ・ハルフォードが元祖だ、とか、そういったことを知るにつれ、そんなに凄いバンドだったのかと見直すようになり、他のアルバムも聴いてみて、ようやく彼らの魅力に気づいたという。さかのぼって聴いてみたアルバムは、まあその時代なりのサウンドだったりして、古さも感じはしたものの、意外とキャッチーな曲が多いのも俺好みだったし、何より、グレン・ティプトンとK・K・ダウニングの攻撃的なギターリフと、ロブの金属的ともいえるハイトーン・ヴォーカルが凄かった。まあ、単純にカッコ良かったわけだけど、何が凄いってさ、攻撃的なギターリフやハイトーン・ヴォーカルみたいな、いわゆるヘヴィメタルっぽいプレイって、JUDAS PRIESTがオリジナルなんだよね。

エリック・クラプトンのライヴを観た時に、意外と普通のフレーズが多いなと思ったんだけど、そのフレーズは実はクラプトンが編み出したもので、それが世界中に広まった結果、今となっては普通に聴こえてしまうという事実に気付き、鳥肌が立っちゃってね。JUDAS PRIESTも同じで、世界中のHR/HMバンドのほとんどが、実はJUDAS PRIESTが創り上げたスタイルを下敷きにしていることに気付いた時の衝撃といったら! 低音弦をザクザクと刻む、これぞヘヴィメタル! というリフは、厳密にいえばDEEP PURPLEが最初かもしれないし、ハイトーン・ヴォーカルにしても、ロバート・プラント(LED ZEPPELIN)やイアン・ギラン(DEEP PURPLE)のほうが先だけど、それをヘヴィメタルという一つのジャンルにまで磨きあげたのは、間違いなくJUDAS PRIESTだ。

JUDAS PRIESTはバンドの象徴だったロブが脱退していた時期もあるし、先述の『Turbo』のように音楽的に迷走することもある。ヘヴィメタルの象徴でありながらも、彼らは常に時代の最先端だったわけではなく、その時々の主流のサウンドに寄って行くことも……。でも、それは常に前進し続けなければならない、トップであるがゆえの揺らぎなのかもしれない。いつも同じであることを良しとせず、メタルゴッドと呼ばれるほどの王者でありながらも、貪欲な挑戦者でもあり続けるJUDAS PRIEST。ヘヴィメタルに影響を受けたミュージシャンの端くれとしては、もう尊敬するしかないです。