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シネマピア
入国審査

【映画レビュー】入国審査

シネマピア

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「入国の目的は?」審査官の執拗な質問が、2人の秘密を暴き出す……! わずか17日間の撮影、65万ドルの低予算、しかも監督デビュー作。そんな1本のスペイン映画が、SXSW映画祭をはじめ世界中の映画祭を席巻し、ロッテントマトでは批評家100%の快挙を達成! 共同監督2人の実体験をもとに作り出された、リアリティたっぷりの密室劇!

移住のため、スペインのバルセロナからニューヨークの空港へと降り立った2人の男女、ディエゴ(アルベルト・アンマン)とエレナ(ブルーナ・クッシ)。新生活への期待に胸を膨らませながら入国審査の列に並ぶ2人だったが、何も問題なく終わるはずの審査はなかなか終わらず……。

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本作は前半と後半とでその趣きを全く異にする。前半はただただ不条理なまでの入国審査官の質問責め。時には「それ必要? 単に興味本位で訊いてるだけじゃない?」とまで思えるような個人的な質問を、審査官は2人に投げかけ続ける。延々と、事細かに、執拗に。と、ここまでは単に移民憎し! アメリカ政権の意向をそのまま尋問に置き換えたかのような、それをネタに審査官が2人の人格攻撃をしてストレス発散をしているかのような、ある種、政治的な意図さえ垣間見えるような分かりやすく不快な流れだ。

だが後半。問題は後半だ。とある質問から一気に流れが変わる。前半の流れから、誰がこれを予想できるだろうか。さっきまで悪魔かのように見えていた審査官が、その瞬間から悪魔とは真逆の天使へとガラッと変わる。なになになになにどういうことどういうことどういうこと? と同時に、前半では被害者かのように見えていた登場人物が、一気に加害者かのように見えてくる。
そしてラスト。ちょっと待ってどういうこと? 今までの諸々は何だったん? そりゃトマトメーター100%にもなりますわ。

『カメラを止めるな!』や『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』など、低予算なのに大ヒットを遂げた名作たちの中に、本作も名を連ねることができるだろうか。できるでしょう、余裕で。人間の本質、ここに極まれり。そんな作品が本作なのだから。

監督・脚本:アレハンドロ・ロハス、フアン・セバスチャン・バスケス
脚本:パク・ウンギョ(『母なる証明』)、パク・ジュンソク
出演:アルベルト・アンマン、ブルーナ・クッシ、ベン・テンプル、ローラ・ゴメス
配給:松竹
公開:8月1日(金)、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋ほか全国公開
公式サイトhttps://movies.shochiku.co.jp/uponentry/

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記:林田久美子  2025 / 07 / 09