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第241回 洋楽編 BLUE MURDER ―― 意味深な写真でにわかに再燃した、根強い再結成待望論

先日、Twitterを見ていたら、BLUE MURDERやTHE FIRMなどの活動で知られるベーシスト、トニー・フランクリンがジョン・サイクスとのツーショット写真とともに「一緒にジャムってきたよ」とツイートしていて、思わず「おおっ!」と声が出てしまった。そして、ファンからのたくさんの質問に答えるなかで、BLUE MURDERの再結成ではないと答えつつも、ツアーをする可能性が高い、レコーディングも近いうちにやると思うよ、との発言もあり、また声が出た。これは2年前にアルバムを発表すると宣言したものの、案の定なんの音沙汰もないジョン・サイクスが、ついに活動再開すると捉えていいのかな? しかも、トニー・フランクリンも一緒に! さて、今回の音楽総研はそのBLUE MURDERをご紹介。ジョン・サイクスのことは何度も取り上げているので、今回はジョン以外のメンバーにスポットを当ててみます。

BLUE MURDERはジョン・サイクスと、トニー・フランクリン、カーマイン・アピスの3人で結成され、89年にデビュー。WHITESNAKETHIN LIZZYのギタリストだったジョンに、LED ZEPPELINのジミー・ペイジとFREE、BAD COMPANYのポール・ロジャースというビッグネームらと結成したTHE FIRMにいたトニー……、そして、60年代からキャリアをスタートし、VANILLA FUDGEやジェフ・ベックとティム・ボガートとのBECK, BOGERT & APPICEという伝説的なバンドや、ロッド・スチュワートとの活動でも知られるカーマインが集まったという、スーパー過ぎるほどのスーパーグループでした。

世界的に大ヒットした名盤『WHITESNAKE』の立役者でありながらも、完成前に解雇され、動向が注目されていたジョンが新たに結成したバンドだったことから、トニーやカーマインよりもジョンに注目が集まっていたと思うんだけど、ロックドラムの草分け的な存在のカーマインのパワフルなドラム、HR/HMでは珍しいトニーのフレットレスベースによる超絶プレイもBLUE MURDERのサウンドの特徴だった。とくにトニーが弾いていたフレットレスベースは、どちらかといえばジャズで使われることの多い楽器なだけに、俺のようなHR/HMファンの耳には新鮮に聴こえたし、海賊をイメージしたという、大海原を想起させる神秘的なサウンドを演出するのに一役も二役も買っていた。印象的な演奏だったし、当時はトニーの影響でフレットレスベースを手にしたベーシストも多かったと思うよ。

『Riot』
ファーストアルバムのオープニング。この曲がいちばんカッコいいと思うなあ。 トニーの浮遊感漂うフレットレスベースが素晴らしい! オーディオのみです。

しかし、これ以上ないと言えるほど完璧に思われたこのトリオは、残念ながら長続きしなかった。アルバム制作が遅々として進まず、業を煮やしたトニーとカーマインが脱退、新たにマルコ・メンドーサ(B)、トミー・オスティーン(Dr)が参加する。ただ、発表されたセカンドアルバムのほとんどの楽曲でトニーとカーマインがプレイしているという。マルコとトミーのプレイは、ライヴアルバム とBLUE MURDER解散後に同じメンバーで結成した(改名しただけ)SYKESのアルバムで堪能出来る。トミーのプレイには正直なところカーマインほどの凄みは感じないものの、マルコはジョンが「トニー・フランクリンより凄い」と絶賛していただけあって、強烈なプレイの目白押しだ。後にWHITESNAKEでバンドメイトになるトミー・アルドリッジ曰く、「マルコはロックをプレイする時は少し抑えないといけない」という。もとはラテン・ジャズやフュージョンをプレイしていたマルコは、ロックをやるには上手すぎるんだって!

『Jelly Roll』
こちらもファーストアルバムから、ポップな曲を。 これもトニーのフレットレスがいい味出してます。 しかし、ビデオのジョンの肉体アピールがちょっと……(笑)。

そして、そのマルコはSYKESが活動をしていない間になんとWHITESNAKEに加入する。さらにWHITESNAKEの休止中にはトミーと二人でジョンと再合流し、ライヴアルバムを発表。このことが引き金になったのか、二人はWHITESNAKEから脱退することになる(トミーはのちに復帰)。トニー・フランクリンもWHITESNAKEのツアーに参加したことがあるし、デイヴィッド・カヴァデールは常にジョンのバンドをチェックしているんだなとちょっと呆れたものだけど、まあ、音楽業界は広いようで案外狭い。WHITESNAKEの楽曲は簡単に演奏出来るものではないし、誰かいないか? となった時、BLUE MURDERやSYKESのメンバーならWHITESNAKEの曲もたくさん演奏しているはずだから、話が早いんじゃないかな……。ジョンがかわいそうだ、とはちょっと思っちゃうけど。

『We All Fall Down』
新メンバーが加入したセカンドアルバムから。 でもレコーディングはトニーとカーマインなのかな?  セカンドアルバムはWHITESNAKEへの反発か、THIN LIZZY(フィル・ライノット)っぽさが目立つね。

メインソングライターでないミュージシャン達の入れ替わりが多いのは、ある意味で仕方のないこと。なんだか夢のない話に聞こえるかもしれないけど、彼らはプロのミュージシャンで、仕事をし続けなければならないからだ(CDが以前ほど売れなくなった現在、掛け持ちをしているミュージシャンが多いのは、こういった事情もあると思う)。おそらく、ジョンにはこんなに長い間まともに活動していなくても問題ないほどの印税収入があるんだろう。でも、他のメンバーは違うんじゃないかな。ジョンが何もしていない間、ずっと待っているわけにはいかないんだと思う。ただ、それでもファンは待っているしかないわけでね……。ジョン、今度こそ期待していいんだよね?

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