第310回 洋楽編 Nuno Bettencourt ―― 確固たる個性とクレバ―な頭脳をあわせ持つ、芸術家肌のスーパーギタリスト
先日、テレビのニュース番組でジュリアン・レノンが『Imagine』をカヴァーしている映像が流れていて、「ジュリアン久しぶりだなあ。やっぱりジョンと声が似てる……」と(ジュリアンはジョン・レノンの長男)、しばし見入っていたら、ジュリアンの隣でギターを弾いていたのがEXTREMEのヌーノ・ベッテンコートで驚いた。音も見た目もやたら存在感があるし、誰だろうと思っていたら、やっぱり只者ではなかったという。しかし、ヌーノに気付いた後は、さすがだなと思いつつも、ジュリアンとヌーノはジャンルでも(失礼ながら)知名度でも結びつかず、どういう繋がりなのかとしばし混乱……。調べてみたら数年前にもコラボしていたみたいで納得はしたものの、そもそも二人がどうやって繋がったのかはわからず。……そんなわけで、今回の音楽総研はヌーノのことを書いてみようかと思います。ジュリアンじゃないのかよ。
ポルトガル出身のヌーノ・ベッテンコートは、1989年にアメリカのHR/HMバンドEXTREMEのギタリストとしてデビュー。ギターヒーローが群雄割拠していたあの時代にあっても、ファンク・メタルと称されたファンキーなヌーノのギターは、際立って個性的だった。デビュー直前だったか、直後だったか……、時期は定かではないけど、ものすごく早い段階からギター雑誌で話題になっていたのをよく覚えている。で、その雑誌のあまりの推しっぷりに、すぐにファーストアルバムを聴いてみたんだけど、バンドの第一印象はVAN HALENっぽいな、という感じ。ヌーノもエディ・ヴァン・ヘイレンをより現代的にしたような印象だったかな。のちに代名詞になる跳ねたリズムも、その頃はまだファンクというよりデイヴ・リー・ロス時代のVAN HALENの影響を感じたし、ゲイリー・シェローンの喋るようなヴォーカルもデイヴっぽいと思った。ただ、VAN HALENよりもブルージーだったり、メロディックなバラードや分厚いコーラスもあったりして俺好みだったから、しばらくヘヴィ・ローテーションしていました。
ファーストアルバムはそれほどヒットしなかったように記憶しているけど、期待度は満点で、とくにギターキッズの間ではかなり話題になっていたんだよね。セカンドアルバムはまさに“満を持して”という状況の中でのリリースだった。そして聴いてみたセカンドアルバム、『Pornograffitti』が凄かった! こんなに変わるかねと驚くほど、完成度が高い。『Decadence Dance』や『Get the Funk Out』といった楽曲はセカンドアルバムにして早くもファンク・メタルの完成形を提示してみせていたし、全米ナンバーワンを記録した『More Than Words』というアコースティックの名曲も収録。このアルバムには夢中になったなあ。当時のインタビューでヌーノが「ほとんど8トラックのレコーダーで録ったデモのまま」と話していたのを読んで、俺もやってみようとその気になったりもしたし……。
初めて聴いた時はなかなかの衝撃でした。次々登場してくるリフがどれも印象的なのが凄い
というのも、当時4トラックのMTR(マルチトラックレコーダー)を手に入れてデモを作り始めていたので、がんばれば俺にも出来るのかも、と思ったんだよね。まあ、実際にはそう上手くはいかなかったけど(ヌーノだってスタジオで録り直しているし)、この時にヌーノが左右のチャンネルで違うことを弾いていたりすることを研究したり、各楽器の音量バランスを研究したことは、今の俺がトラック無制限のDAW(音楽ソフト)を使ってパソコンでレコーディングしていることに大いに役立っている。『Pornograffitti』のアレンジはものすごく凝っているけど、シンセやエフェクトを山ほど使っているようなサウンドではないし、ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムという最小限の編成でどう迫力を出すか、といったことは、このアルバムを研究したことで覚えたと言えるかも。それまでは、どう録音されているか、なんてことはあんまり気にしていなかったしね。……そういえば、自分一人でもやってやるぞ、と決意したのも、このアルバムがきっかけだったかもしれない。
EXTREMEの4thアルバムに収録のインスト。この正確無比かつ、音楽的なプレイの凄さよ! ちなみに、その昔、ヌーノ好きの友人に弾き方を教えてもらったけど俺は弾けなかった(笑)
それほどハマったEXTREMEだったけど、サードアルバム以降、あまり俺好みでないサウンドに変化したこともあって、あまり聴かなくなりました。今にして思えば、ミクスチャーやオルタナティヴ的なサウンドに接近している感じがしたのかもしれないなあ。HR/HMがそれほど好きではない友人たちがこぞって前より良いなんて言っていたし、俺はもっと普通のHR/HMでいてほしかったのかも。より音楽性が高くなったのは十分に理解していたんだけどね。
ヌーノのファーストソロアルバムからのクリップ。残念ながらオフィシャルの動画はなし……。この曲は20年くらい前に歌とギターでカヴァーしたんだけど、今ならもっとうまくやれそう。いつかまたやってみようかな……
そんなわけでしばらく聴かなくなっていたEXTREMEとヌーノだけど、彼がバンドを脱退してソロになってからはまた聴くようになりました。当時よくツルんでいたミュージシャン仲間がヌーノの大ファンで、ライヴを観に行くとカヴァーしているわ、俺も付き合ってやらされるわ(歌も歌った)、でね。でも、久しぶりに聴いたヌーノはやっぱり凄かった。以前よりもさらにHR/HMからは離れているとは思ったけど、時流には合っていたし、そのクレバ―さもヌーノらしいと思った。まあ、実際にHR/HMだけの人ではないからこそ、ジュリアン・レノンと共演も出来るわけでね(ジャネット・ジャクソンやリアーナとも共演している)。HR/HMシーンにだけ収めておくのはもったいないアーティストだよね。ジュリアンとのオリジナル曲も聴いてみたいし……、いや、そろそろEXTREMEの新作を聴かせてよ!
ジュリアン・レノンとヌーノが、グローバル・シチズン主催のウクライナ支援のためのキャンペーン、「Stand Up For Ukraine」に参加した際の映像。他にもU2やBON JOVI、マドンナらのビッグネームが参加しています。テレビでも少し流れました。日本のアーティストにも反戦の声を上げている人はたくさんいるのに、なぜかニュースにならないね……
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