
第383回 俺らの音楽編 ―― Guitar With a Crying Tone 泣きのギタリストを育てるには
先日、ラジオを聞いていたら、NIGHT RANGERが10月に最後の日本公演を行うとDJの方が話していて、思わず「えーっ!」と声が出てしまった。NIGHT RANGERは2~3年に一度くらいのスパンで来日していて、そのたびに俺は必ず観に行っていたし(だいたい1ツアー2回は観に行く)、そろそろ来るころかなと思ってはいても、まさか最後になるなんて夢にも思っておらず……。しかし、先日行われたMR. BIGの来日公演で(こちらも最後でしたね……)、最後の日本公演についてのフライヤーが配られていたという情報もあるし、間違いないんでしょう……。ただ、日程なども含めて、詳細はまだ何も発表されていないから、当然その理由もわからない。最年長のケリー・ケイギーが72歳で、ジャック・ブレイズも70歳、という年齢を考えると、そろそろワールドツアーから引退するなんてことがあってもおかしくないけれど、YouTubeにアップされている今年のツアー映像を見る限り、まだまだ元気そうに見えるのになあ……。このところ、前回書いたオジー・オズボーンや、WINGER、シンディ・ローパー、AEROSMITHなど、少年時代からの憧れだったアーティストたちがツアーからの引退を表明していて、寂しい限りです……。
さて、気を取り直していきましょう! 今回の音楽総研は泣きのギターについてあれこれと。俺のライヴや動画を観た人に、ikkieのギターは泣くとか歌うとか言ってもらえることが多くて、いつも光栄に思っているんだけど、どうやってそんな風に弾けるようになったの? なんて聞かれることもあって、返答に困ったりもしています。どうやってと言われても、こういう練習をしてきたからだよ、といった明確な答えがあるわけではなく、泣きのギターを弾きたい人に、こうすればいいよ、なんていうアドバイスなんかも出来ないんだよね。でも、ひとつ言えるのは、泣きのギターやメロディアスなギターが大好きだ、ということ。好きこそ物の上手なれ、は真理です。……じゃあ、どういうのが好きなの? というわけで、今回は俺がギターキッズのころにコピーしたり、好きでよく聴いたりしていた曲をスペースの許す限りご紹介! 参考になるかなあ。
1曲目はオジー・オズボーンの『Never Know Why』。ギタリストはジェイク・E・リーです。ジェイクには泣きのギターというイメージがないだろうし、もしかするとメロディアスだとも思われてないかもしれないけど、オジーのバンドでギターを弾いていたころは、マイナーキーのメロディアスなプレイも多かったし、実はBADLANDSより前からブルージーなギターを弾いていたんだよね。少しタメてから入るチョーキングや、揺れ幅の大きいヴィブラート……、ジェイクのギターには凄く歌心がある。何度も書いているけど、俺はジェイクに大きな影響を受けていて、この曲も一生懸命コピーしました。中間部のソロは難しくてうまく弾けなかったから、エンディングのソロをよく弾いていたなあ。しかし、あらためて聴くと、自分で思っていた以上にいろいろ似ていて苦笑い……。
2曲目はプリンス & ザ・レボリューションの『Let’s Go Crazy』……って、泣きのギターじゃないじゃん! なんてツッコまれそうだけど、子供のころ、この曲のラストのギターに雷が落ちたような衝撃を受けて、絶対にギタリストになろうと思ったんだよね。この曲を聴く前からバンドをやりたいとは思っていたんだけど。いわゆる泣きのギターではないかもしれないけど、ブルージーだし、激しく叫ぶようなチョーキングや、この音色がとにかく凄い。こういうプレイをよく聴いて、ギターを歌わせることを覚えていったんですな。
3曲目はBON JOVIの『Silent Night』。ギタリストはリッチー・サンボラです。リッチーもまたブルーズが根っこにある人だけど、ギターを歌わせるのが上手いよね。歌が上手いのもリッチーのギタープレイに関係ありそう。バンドを始めた中学生のころは、速弾きが出来ないもんだからバラードばっかりコピーしていてね。この曲もバンドでやりました。そんなに難しいところはないから、一生懸命練習すればとりあえず弾けるようにはなるんだけど、ソロの最後のちょっとした速いフレーズなんかは、ただ指が速く動けばいいってわけではなく、少しタメたりしないと雰囲気が出ない。そして、どれだけ良い音で鳴らすか、ということも重要。
続いてはゲイリー・ムーアの『The Messiah Will Come Again』。泣きのギターといえば、やっぱりゲイリー。ゲイリーはHR/HMだけでなく、ブルーズスタイルでもギターを弾いてきた人だけど、個人的にはブルーズというより、やっぱりロックギタリストだと思っています。ブルージーな曲でめちゃくちゃ激しいロックなギターを弾くのがカッコいいんだよね。この曲もそんなゲイリーの魅力が堪能できます。
最後はどの曲よりも意外かもしれないけど、POISONの『I Won’t Forget You』です! ギタリストはC.C.デヴィル。C.C.のギターはあの当時から下手だなーと思っていたけど(ごめんなさい)、リフもソロもキャッチーで覚えやすいし、テクニックはなかったとしても、センスがいいよね。この曲は高校のころのバンドでコピーしていたんだけど、ハーモニクスとアームを使ったこのソロは音程を取るのが難しいし、シンプルなだけになかなかカッコよく弾けません。それに、ウェットで色気のある音色じゃないとダメだったりもするし。そういうことをたくさん学んだ曲でもありました。
さて、まだまだ紹介したい曲はたくさんありますが、とりあえず今回はこの辺で。泣きのギターや、メロディアスなギターって、フレーズそのものはもちろん重要なんだけど、それだけではなく、そのフレーズをどう弾くか、どんな音色で弾くか、っていうことも意識しないとダメです(泣きのギターに限ったことではないけど)。8分音符、16分音符、と、メトロノームに合わせてきちんと弾けたら上手いってわけじゃない。少しタメたり、フレーズによっては少しツッコんだり。チョーキングで音程を上げるのも、一瞬でその音程に上げるのか、それともゆっくり音程を上げていくのか。ロックなんて、感覚だけでやっているように見えるかもしれないけど、意外とちゃんと考えて弾いていたりするんですよ。まあ、アドバイスが出来るとしたら、こんな感じかなあ。
※おまけ
わたくしikkieのライヴ映像です。今回紹介したような曲を聴いているとこう育つ、という例(?)。
TAI-ON 『ホシウタ』
※ikkieのバンド、Antlionのシングルがリリースされました!
ストリーミング&ダウンロードはこちらから
https://linkco.re/vPZ00Quz?lang=ja
※ikkieのYouTubeチャンネルです!
https://www.youtube.com/channel/UC-WSajndNhq0tu7K7-MBEmQ?view_as=subscriber