
第384回 俺らの音楽編 ―― Guitar With a Crying Tone 泣きのギタリストを育てるには(その2)
前回、お気に入りの泣きのギターについてあれこれと書いてみて、そういえば以前の編集さんに「ギターが“鳴く”のではなく、“泣く”なんですか?」なんてことを聞かれたのを思い出しまして……。ミュージシャン仲間の間では当たり前のように使っていたけど、一般的にはそうでもないのかと、ちょっと驚いたことがありました。まあ、ギターを生き物としてとらえるならば“鳴く”だと思う人もいるのかな。でもね、泣きのギターというのは悲しさや切なさといった感情をギターで表現していることを指すのであって、ギターの鳴き声のことではないのです。ちなみに、ギターで動物の鳴き声を出しちゃう人もいたりするけども、それを指して“鳴き”のギターとは言いません。そんなわけで、今回も泣きのギターについてあれこれと!
どういう演奏が泣きのギターなのかというと、先に書いたように、悲しさや切なさを感じるメロディを弾くことがいわゆる泣きのギターと称されるものではあるんだけど、個人的にはブルージーなギターソロにそういうプレイが多いと感じています。やっぱり、チョーキングだったりヴィブラートだったりのギターならでは(もっと言うとエレキギター)の表現があることで、よりギターが泣いていると感じるし、それはやっぱりブルージーなギタリストが得意なプレイだと思う。もちろん、クラシックに大きな影響を受けているイングヴェイ・マルムスティーンやランディ・ローズのようなギタリストにも泣きのギターの名演はたくさんあるので、一概には言えませんが。あくまで、個人的に、です。
さて今回、最初に紹介するのはB.B.キングの『The Thrill is Gone』。言わずと知れたブルーズ界の超大物の名演です。ブルージーなロックではなく、ブルーズそのものって、実はそこまで暗い曲がないこともあって、あんまり泣きのギターっていう表現は使われないように思っているんだけど、なにも泣き叫ぶだけが泣きのギターではない。抑えた大人の魅力とでもいうのかな。こういう演奏も大好物です。エリック・クラプトンやジェフ・ベックも、B.B.キングのギターを参考にしていたはずだよね。
そして、そのクラプトンの泣きの名演といえば、THE BEATLESの『While My Guitar Gently Weeps』がまず挙がると思うんだけど……、今回はクラプトンではなく、ロックの殿堂で行われたライヴからプリンスの素晴らしい演奏をご紹介。これ、たぶんアドリブだよね。いやもう、プリンスのギター大好き! プリンスはギタリストとしてもっともっと評価されてもいいと思う。
続いては、泣きのギターといえばこの人、と前回ゲイリー・ムーアを紹介したけども、HR/HM界にはもう一人、泣きのギターの大横綱がいます。そう、マイケル・シェンカーですよ! マイケルも泣きの名演がほんとうにたくさんある人だけど、今回は俺のお気に入り、UFO時代の『Try Me』。このギターソロを聴くと胸がぎゅーってなりませんか。フィル・モグの抑えたヴォーカルもいい! 大げさに盛り上げればいいってもんじゃないよね。
4曲目はJOURNEYのギタリスト、ニール・ショーンが1989年にリリースしたファースト・ソロアルバムのタイトルトラック『Late Nite』。このアルバム自体がそのタイトルどおりに真夜中を想起させるしっとりとした楽曲ばかりで、ニールの泣きのギターが存分に堪能できます。他の曲もいい曲ばっかりだし、高校生のころにリリースされたアルバムだけど、いまだによく聴いているよ。夜中のドライヴのBGMにぴったりなんだよね。雨が降っていたりするともっといい! ちなみに、名ドラマーのオマー・ハキムが数曲でプレイしていて、それも聴きどころです。
前回の分も含めて、どうにも古めの曲ばかりになってしまったので、ラストは最近の曲も紹介しておこうかな。NEMOPHILAの『Life』! SAKIと葉月の2人のギタリストがそれぞれに違うメロディを弾きながら、それが重なって、ハーモニーを奏でる……、まずそのアレンジの秀逸さに耳が行くかもしれないけど、2人のプレイがエモーショナルで実に素晴らしい。mayuのヴォーカルをはじめ、メンバー全員の演奏がいいし、生で聴いた時は泣けてきたなあ。SAKIが脱退したのは本当に残念……。いまだに戻ってきてほしいと思っている俺は、ファン失格でしょうか。
さて、こういう話は書いていてどうにも楽しくなってしまうので、期せずして(ほんとか?)2回も続けて書いてしまいました。そんなわけで、前回と合わせて10曲ご紹介させていただきましたが、泣きのギターとはなんぞや、ということがわかっていただけたのではないでしょうか。とはいえ、まだまだ泣きのギターの名演はたくさんあるし、あくまで俺の個人的な選曲なので、あれもこれも入ってないじゃん、という声もあるでしょう。俺もあれもこれも入れられなかったと思っています。泣きのギター特集、近いうちにまた!
※ikkieのバンド、Antlionのシングルがリリースされました!
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