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A Night to Remember

第389回 私的名盤紹介編 シンディ・ローパー ―― 過小評価に物申す! 世紀の名盤『A Night to Remember』

そろそろしつこいと言われそうですが、シンディ・ローパーのライヴが終わって一ヶ月……、いまだに余韻に浸っております。ライヴ以来ずっとシンディの曲ばっかり聴いているんだよね。ほんとにいいライヴだった……。でもね、一方であの曲もこの曲もやらなかった、という思いもあって。シンディほどのキャリアがあれば、ヒットソングが中心のセットリストになるのは仕方がないと納得してはいるんだけど、あの曲をやるんだったらこの曲のほうが……って、なんだかやっかいなファンだね。そんなわけで(?)、今回は俺がいちばん聴きたかったのにやってくれなかった曲を収録したアルバム、『A Night to Remember』についてあれこれと。

A Night to Remember

『A Night to Remember』は1989年にリリースされたシンディ・ローパーのサードアルバム。シンディのドキュメンタリー映画で初めて知ったんだけど、このアルバムは期待されていたほどヒットせず、同時期にマネージャーで婚約者でもあったデイヴィッド・ウルフとの別離も経験し、私生活においても大変な時期だったという。……まあたしかに、世界中で大ヒットした最初の2枚に比べれば見劣りしてしまうのかもしれないけど、その2枚が売れ過ぎだったわけで、アメリカのチャートで最高37位でも、全世界で150万枚以上のセールスというのは、決して悪い成績ではないのでは……。でも、シンディ・ローパーだからね。落ち目になったと言われても仕方がないのかなあ。また、同じ年に発表されたマドンナの『Like a Prayer』が6週連続で首位を獲得するという大ヒットを記録していただけに、マドンナとよく比較されていたシンディの売り上げがことさら低く感じられたのかもしれない。

とはいえ、日本のオリコンチャートでは3位と大健闘していて、同年に行われた来日公演も日本武道館をはじめとする大会場で12公演も行われている。テレビやラジオでもよく流れていた印象があるし、ここ日本でのシンディはそれまでと変わらず大人気というイメージのままだったから、映画を観てびっくりした。売れていなかったの? って。チャートの画像が映った時にWINGERがシンディより上位だったのを見つけて、ああそういう時代だったな、とも思ったけど……。HR/HMバンドが年間チャートの上位に食い込むような時代だったんだよね。

『My First Night Without You』

と、ここまでチャートのことばっかり書いといてなんだけど、俺はこんな原稿を書いていても、ほんとはチャートなんてどうでもよくて(もっと売れてもいいのに、と思うことはある)、アルバムの内容が良ければそれでいい。これ、音楽ファンなら誰でもそうだよね? 売れ行き次第でアーティストは活動が続けられなくなったりもするし、切実な問題なのも理解はしていますが。『A Night to Remember』はほんとに良いアルバムなのに、セールスのせいで過小評価されているのだとしたら、ものすごくもったいない。

ファーストシングルの『I Drove All Night』をはじめ、2作目までのシンディとは違い、ラヴソングが中心なのは当時の新境地だったのでは。そして、そのどれもがシンディのカラフルな歌声が堪能できるメロディアスな佳曲ばっかりなんだけど、『My First Night Without You』のような失恋の歌が多いのは、今思えばデイヴィッドとの別離が影響していたのかな。とくにアルバムの後半は切ない曲が多くて……、もしかすると、『Girls Just Want to Have Fun』に代表されるような元気いっぱいのシンディを期待していた人は、シンディらしくないと思ったのかもしれない。当時のシンディは30代半ばになっていて、その年齢なりの楽曲が揃っているように思うし、ある意味では落ち着いた作風だとも言える。俺はそれがまた良いと思っているんだけど、違う人もいるんだろうね、きっと。

『Heading West』

そうだ、いちばん聴きたかった曲のことを書いてなかった。どの曲よりも聴きたいと思っていたのにやってくれなかったのは、このアルバムに収録された『Unconditional Love』です。世紀の大名曲! 切ないメロディも、歌詞も、シンディの歌声も……、聴くたびに胸がぎゅーってなる。シンディがこれまで発表してきた曲のなかでも、群を抜いて良い曲だと思う。『Time After Time』や『True Colors』にだって負けていない。シングルカットされていたら、その2曲と同じくらいヒットしたんじゃないかなあ……。ライヴでやらないのは、シングルになっていないからなのか、かなりキーが高いからなのか……、本人が気に入っていないなんてことはないと思うんだけど。そういえば、スザンナ・ホフス椎名林檎がカヴァーしたりもしていて、それを聴いた時には、「先にやられた!」とは思ったものの、「やっぱりわかる人にはわかるよねー!」と自分のセンスを自画自賛しちゃったよ(笑)。

『Unconditional Love from Live In Yokohama』

……さて、長くなってきたので、そろそろこの辺にしておこうかと思いますが、最後にもうひとつ。このアルバムにはエリック・クラプトンリック・デリンジャーブーツィ・コリンズといったレジェンドミュージシャンたちがゲスト参加していて、その辺りも聴きどころ! それでももちろん、シンディの歌がいちばん印象的なんだけどね。

『A Night to Remember』は、個人的にシンディの最高傑作だと思っています。まだ聴いたことがない人はぜひ聴いてみて!

※ikkieのバンド、Antlionのシングルがリリースされました!
ストリーミング&ダウンロードはこちらから
https://linkco.re/vPZ00Quz?lang=ja

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