
第392回 俺らの音楽編 ―― ロックはあるけどロールはどうした? リズムの捉え方の重要性(後編)
オジー・オズボーンとBLACK SABBATHの最後のライヴが無事に行われました。期待していたジェイク・E・リーとオジーの共演はなかったけど、オジーの名の下に行われたライヴにジェイクが出演したこと自体が凄いわけで、細かいことはもういい! 強盗から銃撃を受けたジェイクが元気そうだったのも安心したし。ジェイクはオジーやシャロン・オズボーンと話したりしたのかな。いつかこの日の裏話を聞いてみたいねえ。オジーのライヴからの引退は本当に残念だけど、歌声はまだまだ大丈夫そうだったし、レコーディングだけでも……と期待しちゃっています。ジェイクとの共作もぜひ! ……さて、今回の音楽総研ですが、前回書いたとおり、またリズムについてあれこれと書いてみますよー。
まずはじめに、バンドだったり、ピアノだったりと、何かしら音楽をやっている人は理解していることだと思うんだけど、そうでない人はテンポとリズムを混同していることが多いように感じているので、念のために書いておくと、テンポは曲の速さのことで、リズムは音符の長さや休符の位置などから生まれるパターンのことです。なので、テンポどおりにきちんと演奏が出来ることを、リズム感が良いとは言いません。演奏する上ではテンポも大事なことですが、まずはリズム! テンポを変えて演奏しても同じメロディに聴こえると思うけど、リズムが違うと別のメロディに聴こえちゃうよね。
そして、このリズムというのは、ただ楽譜に書いてあるとおりに演奏しても、必ずしも良い演奏にならないのが音楽の難しいところであり、楽しいところ。楽譜どおりに演奏するのは大前提として必要なんだけど、そこに人が演奏するからこそのプラスアルファが必要なのです。それが、いわゆる“グルーヴ”。同じ八分音符をダダダダ……と弾く(歌う)にしても、人によって微妙に長さが違うものだし、タイミングに“揺れ”があったりもする。歌声やメロディそのものよりも気づきにくいところではあるけど、それがバンドやミュージシャンの個性になったりもするんだよね。たとえばドラマーのそういう個性は他の楽器に比べてわかりやすいから、ドラマーが変わると違うバンドになったかのように感じることもよくある。ドラマーが脱退したり、亡くなったりしてバンドが解散、なんてことも実はよくあるしね。それくらい重要なんですよ、グルーヴって。
この強力なグルーヴ! 踊らずにいられない(笑)
俺は独学でギターを覚えたんだけど、最初のころは指を速く動かすことや音程にばかり気を取られていて、リズムだとかグルーヴだとかはよくわかっておらず……。それでも、もともとドラマー志望(次点でベーシスト)だったこともあってか、昔からギターだけでなく、ドラムやベースのフレーズもよく聴いていて、細かいテクニックはわからないにしても、この人のドラム好きだなとか、このバンドの曲は好きだけどドラムが好きじゃない……なんてことを考えるタイプでね。それは、今思えばそのドラマーのフレーズよりも、グルーヴに注目していたんだと思う。そして、ある程度弾けるようになったら、だんだんと自分のギターの演奏もグルーヴにこだわるようになりました。コピーしていて、音は合っているのになにか違う……と感じたときは、だいたいグルーヴが違うんだよね。
これはどうやって練習したかというと、ギターにはダウンストロークとアップストロークを交互に弾くオルタネイトピッキングという弾き方があって、まずはそれを徹底してやりました。オルタネイトピッキングはただ交互に弾くのではなく、ビート(4/4拍子とかのこと)に合わせて規則正しく交互に弾くのが重要。休符やロングトーンが入るところも空ピッキング(音を出さずに空振りする)して、右手の動きを一定に保つことで、リズムが狂わなくなるんだよね。テクニックとしては初歩の初歩なんだけど、効果は抜群です。メトロノームに合わせてやるともっといい。これが出来るようになると、初心者にありがちなロングトーンや休符で走ったりもたったりということがなくなるし、自分の中にメトロノームがあるような感覚になります。足や体でカウントを取ってもいいんだけど、それだと譜割りにつられることもあるし、まずはオルタネイトピッキングがオススメ。これ、コードストロークだけじゃなくて、ギターソロでもやるんだよ! ちゃんとやろうとすると意外と難しいです。
この曲のソロでジェフ・ワトソンがロングトーンの間も右腕を振っているのを見て、「オルタネイトピッキングってここまでやるの?」と、自分でも練習するようになりました。音と映像があってなかっただけかもしれないんだけど(笑)
そして、オルタネイトピッキングで正確なリズムで弾けるようなると、今度はテンポに対してジャストで弾いているのか、少し前なのか後ろなのかとか、シャッフルとまではいかないけどなんだか少し跳ねてるな、というようなことが気になるようになってくるわけです。これもやっぱり最初はメトロノームを鳴らして、メトロノームより少し前にしたり、後ろにしたり……と、地道な練習が必要なんだけど、それに加えて、人と一緒に演奏するのも、とても重要。自分がジャストなテンポに対して少し前で弾いて、ドラマーが少し後ろで叩いちゃうと、違いが大きくなっちゃうし、ひどい演奏になるよね。まずはドラマーに合わせるのがいいと思うけど、自作曲で、この曲はこのグルーヴでいきたい! という狙いが明確にあるのなら、俺に合わせてくれ、とみんなにきちんと伝えること。何度も何度も演奏して、バンドのグルーヴが出来上がってきたら、あんまり細かいことは言わなくても、ばっちり合うようになってきます。これが出来るようになると、ほんとに楽しいんだよね。
すごくわかりやすくジャストと後ノリの違いを実演してくれています
グルーヴってね、はっきりと楽譜に書けるようなものでもないし、初心者だったりすると、聴いてもよくわからない、ということもあるかもしれない。感覚的な部分も多いから、聴き分けられる耳を育てることも重要。でも、どういう“ノリ”なのか、と気にしてみるだけでもだいぶ変わってきます。メンバーそれぞれが実力者であっても、グルーヴが合っていないバンドは下手に聴こえるし、反対にそれほどの実力がないバンドだったとしても、グルーヴがばっちり合っていると、すごくカッコよく聴こえたりするんだよね。まずは練習あるのみ! 聴く専門の人は、違うドラマーが演奏する同じ曲を聴き比べてみたりすると、グルーヴの違いに気が付きやすいと思います。そうすると贔屓のドラマーができたりして楽しみが広がるよ。お試しを。
My favorite drummer of all time !! ティコ・トーレスの弾むようなグルーヴが大好き!
※ikkieのバンド、Antlionのシングルがリリースされました!
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