
第394回 洋楽編 ―― Ozzy Osbourne 追悼オジー・オズボーン The One and Only Prince of Darkness Has Passed Away
すでに様々なニュースで報じられているとおり、7月22日にオジー・オズボーンが亡くなりました。オジーは7月5日に地元バーミンガムで自身の引退ライヴ『Back To The Beginning』を行ったばかりで、同時配信された映像を観ていた限りでは、(椅子に座ったままだったものの)声にも張りがあったし、わずか17日後に亡くなるなんてとても思えなかった……。

俺がオジーの音楽と出会ったのは、今から40年前、中学生の頃でした。MTVの特番で流れた『Bark at the Moon』のMVを観たのが最初。ギターキッズだった俺は、当時のギタリストだったジェイク・E・リーの華麗なプレイの虜になって、すぐにレコードを借りてきたんだよね。……そう、最初はジェイクのギター目当てでオジーを聴いていました。MVに登場するオジーはなんだかコミカルな太ったおじさんだし、歌も上手いとは思えず、オジーの魅力がよくわからなかったという。それでも何度も聴いているうちに、変な声だと思っていたオジーの歌声にはクセになるような不思議な魅力があることに気付いたし、オジー自身のことも、なんだかかわいい人だと思うようになって、気が付けばオジーのことが大好きになっていたのでした。
そういえば、海外のHR/HM系のアーティストのライヴを生で観たのは、オジーが最初でした。ジェイクが抜けて、ザック・ワイルドが加入した最初のツアーを地元の金沢から大阪まで観に行ったんだよね。まだ高校生だったんだけど、親に言わずにチケットを買って、もうチケット買っちゃったからと、事後承諾で観に行きました。だって、どうしても観たかったんだもの! 朝早くに出発して、夜行列車で帰ってきたっけなあ。天井に手が届きそうなくらいのすごく後ろのほうの席だったけど、初めて観るオジーに大興奮でした。実はその時もザック目当てで行ったはずなんだけど、気が付けばオジーのことばかり観ていたんだよね。ステージの上をヨタヨタと歩きまわって、ちっともカッコよくないのに、なぜかオジーから目が離せなかった。

このあとも何回もライヴ観に行ったよ……
オジーの魅力をうまく言葉にできる人はどれだけいるだろうか。音楽面なら、ドラマティックなアレンジに、ヘヴィメタルの象徴的な存在でありながらも、ポップと言ってもいいくらいキャッチーなヴォーカルラインが魅力的だ、とかいろいろ話せるんだけどね。リアリティ番組に出演して、破天荒な言動で知られていたオジーが、実は家族思いの優しくて面白いおじさんだったと世界中に認識されたけど、これは他のHR/HMアーティストなら考えられないこと。HR/HMアーティストが面白がられる対象であっていいはずがない、というのがそれまでの常識……というか、リアリティ番組に出演するなんて、誰も考えもしなかったと思う。そこはマネージャーであるオジーの妻、シャロンの手腕なんだろうけど。
オジー自身には成功するためのイメージ戦略なんてものはなさそうだし、その辺りはおそらくシャロンがすべて計画していたのでは。オジー自身、シャロンがいなければ今の私はいない、といった発言をしているし。オジーの魅力を誰よりも信じ、オジーを成功させるためには手段を選ばない……といったところがシャロンにはあったように思います。そして彼らは大成功を収めたわけだけど、なぜかシャロンは作曲したメンバーにクレジットを与えないということを何度も繰り返し、過去に在籍したメンバーたちと軋轢を生じさせてもいる。それはオジーを守らんとするがゆえの行動なのかもしれないけど、ジェイクやボブ・デイズリーのような、オジーの活動に大きな貢献をしてきたメンバーに対する仕打ちとしてはどうなんだろう、と思っちゃうよね……。でも、ジェイクは『Back To The Beginning』に出演したし、クレジット云々の問題を超えて、シャロンとはわからないけど、少なくともオジーとは以前のように話せる関係に戻れたんだよね、きっと。
オジーが亡くなって、ジェイクは自身のFacebookにメッセージを投稿している。Dammit. R.I.P. Ozzy……、「ちくしょう、安らかに眠れ、オジー」って感じだろうか。30年以上のいろいろがあって、やっと再会できてからの訃報に、残念だとか寂しいとかではなく、「ちくしょう」。その言葉から、ジェイクの無念さが伝わってくる。続く投稿には、まだ気持ちの整理がつかないと言いつつ、ライヴが終わってアメリカに帰る飛行機を待っている時にオジーからメールが届いたことを書いていて、そのメールには「ロスに戻ったら連絡する。絶対に会おうな」と書いてあったという。……ちくしょう、だよね……。お互いにたくさん話したいことがあったはず……。
『Back To The Beginning』に出演したアーティストたちのライヴには、オジーやBLACK SABBATHに対する愛とリスペクトが溢れていたし、なによりも出演者全員が楽しそうで、観ているこちらは自然と笑顔になった。そして、オジーのソロのライヴと、BLACK SABBATHのライヴは凄かった……。オジーの歌も、鬼気迫る表情も。オジーの故郷バーミンガムで行われた葬列はまるで国葬のようで、オジーがいかに愛されていたかが伝わってきた。この言葉はあまり使わないようにしているんだけど、オジーには相応しい。……こんな人はもう二度と現れないだろう。
安らかに眠ってください、オジー……。
My heartfelt condolences to you and your family.
Rest in peace, legend.
I love you, Ozzy!!
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