第366回 ライヴレポート編 SAKI ―― 超強力なサポートメンバーを従えた“ギターヒロイン”SAKIのファーストソロライヴ!
隔週火曜日に更新されているikkieの音楽総研ですが、今回でなんと連載開始から丸14年です。連載開始当時は30代だった俺も(実は第1回の掲載日は自分の誕生日でした)、今や50代。14年も書いていたら、そりゃ歳も取りますね……。14年間も好きに書かせてくれている編集部と、飽きずに読んでくださっている読者の方々に感謝しつつ、書かせていただける限りはずっと書いていきたいと思っていまので、これからも応援お願いします。そして、がんばれ俺! ……さて、いつもならアニヴァーサリー企画で自分語りなんかを始めるところなんですが、今回は6月21日に横浜ベイホールで行われた、ギタリストSAKIのファーストソロライヴのレポートを文字数の許す限り。
※以下、セットリストなどのネタバレを含みます。ぜひ配信中のアーカイヴをご覧になってからお読みください。
そぼ降る雨の中、電車を乗り間違えたりしながらも、なんとか開演前に横浜ベイホールに到着。フロアに入るとBGMにGacharic Spinがかかっていて嬉しくなった。今回のバンドメンバーは、そのGacharic Spinのはな(G)と、凄腕セッションドラマーとして知られる川口千里に、SAKIがTwitter(X)で見つけたという、革命メロイックのユニカインパクト(B)。音楽総研読者はご承知の通り、俺はSAKIだけでなくGacharic Spinのファンでもあるので、「これは見逃せない!」と、すぐさまチケットを予約したんだけど、その後にSAKIがNEMOPHILAを脱退することになり、楽しみにしつつも、なんとも複雑な気持ちで当日を迎えたんだよね……。
19時ちょうどに、インストだけどちゃんと盛り上がってね、座ってないで立ち上がって観てね、とステージ裏からSAKIがアナウンス。そしてさらに5分ほど経ってから、ブルータルなギターリフが乗ったSEが流れる中、メンバーが登場! しかし、座席がステージ下手側のかなり端のほうだったので、スピーカーに隠れてドラムセットが全然見えない……。残念ながらこの日はステージに登場する時とハケる時にしかスーパードラマー川口千里の姿は見えませんでした(注釈付きの席じゃなかったのに!)。
オープニングに今回のライヴタイトルでもある『GERMINANS』、続けてファーストソロシングルの『BRIGHTNESS』をプレイ。音がデカい! ……が、ただ爆音なだけではなく、気迫のこもった音の塊がぶつかってくるかのようだ。座席位置のせいで音響は最高とは言えなかったが、重低音が体にズンと響き、迫力は十分。そして、想像していた通り、SAKIとはな(スカート履いててびっくりした)という絵になる2人がフロントに並んでいると抜群にカッコいい。そして、今回初めてその存在を知ったユニカインパクトも、アイドルかと見紛うようなルックスで、すごく華がある。もちろん、SAKIが見初めただけあってテクニックも申し分ない。こんな逸材がいたのか……。姿が見えなかった川口千里は、音だけでも十分に凄さが伝わってくる。
SAKIが以前に演奏したことがあるというスティーヴ・ヴァイのラテン風(というかムード歌謡風)の『The Crying Machine』、AEROSMITHの『Dream On』、それぞれのインタープレイがフィーチャーされた布袋寅泰の『Battle Without Honor or Humanity』といったカヴァー曲を挟み、最新シングルの『THE EMPRESS』をプレイ。オリジナルは全編打ち込みトラックだが、メンバーの生演奏をメインに据え、よりロックな印象に。妖艶とも言えるギターの妖しいメロディがいい! そして、参加してくれたメンバーの曲を、とプレイされたのは川口千里の『Onyx』と、Gacharic Spinの『TAMASHII』。『Onyx』の冒頭、川口千里のドラムソロが凄かった! さすが手数姫の異名を持つ川口千里、凄まじいソロに鳥肌が立った。この曲ではユニカインパクトのスラップや、はなのカッティングも聴きどころで、凄いメンバーが揃ったとあらためて感心した。『TAMASHII』ははなのヴォーカルを期待したが、今回はインストにこだわったのだろう、SAKIのギターが歌うようにメロディを奏でた。
続くカヴァーは意外過ぎる選曲だったイングヴェイ・マルムスティーンの超難曲、『Far Beyond the Sun』。SAKIはまだしも、他のメンバーがイングヴェイの曲を演奏するのを観られたのはなかなか貴重だったのでは。そしてSAKIがキーボードを披露するという余興(笑)もあって、大いに盛り上がったJ-POPメドレーを挟み、ライヴは終盤へ。「ここからは自分がいたバンドの曲をやろうかと思います」と始まったNEMOPHILAの『MONSTERS』に客席から大歓声! 続いて、SAKIはMary’s Blood時代のメインギターだった赤いKillerに持ち替え、Mary’s Bloodの『Wings』と『Moebius Loop』をプレイ。もともとMary’s Blood加入(メジャーデビュー)10周年というタイミングでソロライヴを企画していたということもあったのか……、涙をこらえながらプレイするSAKIの表情に胸が熱くなった。そしてここで本編が終了。
ちゃっきーコールが続く中、10分近く焦らされてアンコールがスタート! Mary’s Bloodの『Marionette』と『I, Lament』を怒涛のように演奏し終え、SAKIのMC。これまで心無い批判があったのか、自分はいろいろ言われてしまうけど、(Mary’s Bloodを)活動休止したくてしたわけじゃない、(NEMOPHILA脱退も)バンドを壊してやろうなんて思ったわけじゃない、と、慎重に言葉を選びながら思いの丈を話し、もっと小規模な活動を想定していたのに、助けてくれる人たちがたくさんいて……と、涙ぐむ。昨日まで札幌にいたNEMOPHILAのスタッフがチケットを購入して観に来ていると聞いて、ただのファンの俺も、なんだか嬉しかった。そして、ライヴタイトルになっている『GERMINANS』をもう一度プレイし、ライヴは終了……。エモーショナルな素晴らしいライヴだった。次回もぜひこのメンバーで観たいなあ。
NEMOPHILAを続けていくつもりだったことをSAKIの口から聞けて嬉しかったけど、そうすると、どうしてこうなった、という疑問も浮かぶ……。今さら何を言っても仕方がないのだろうけど。『MONSTERS』でのSAKIは水を得た魚のようだったし、Mary’s Bloodの4曲でのSAKIのプレイは圧巻だった。それはきっと、プレイし慣れた曲だから、ということだけではないはず。以前、HR/HMにこだわらず、いろんなジャンルを演奏したいと話していたSAKIだけど、SAKIが輝くのはやっぱりこういうヘヴィな楽曲じゃないだろうか……今のところは、かもしれないけどね。
NEMOPHILAが無理ならばMary’s Bloodの活動再開を、と願わずにはいられないけど、SAKIが日本人の(女子)ソロギタリストとして見たことのない景色、到達していないところを目指すのならば、もちろん応援します! まずはMCで話していた(キャパが)4桁の会場を埋めるところからかな? SAKIなら、きっと実現できるはず。それくらい魅力のあるアーティストだもの。
(文中敬称略)
2024.6.21 『SAKI 1st live -GERMINANS-』 Set List
- GERMINANS(SAKI)
- BRIGHTNESS(SAKI)
- The Crying Machine(Steve Vai)
- Dream On(AEROSMITH)
- Battle Without Honor or Humanity(布袋寅泰)
- THE EMPRESS(SAKI)
- Onyx(川口千里)
- TAMASHII(Gacharic Spin)
- Far Beyond the Sun(Yngwie Malmsteen)
- J-POPメドレー
POISON 〜言いたい事も言えないこんな世の中は〜(反町隆史), traveling(宇多田ヒカル), Bling-Bang-Bang-Born(Creepy Nuts), アイドル(YOASOBI), Get Wild(TM NETWORK) - MONSTERS(NEMOPHILA)
- Wings(Mary’s Blood)
- Moebius Loop(Mary’s Blood)
En - Marionette(Mary’s Blood)
- I, Lament(Mary’s Blood)
- GERMINANS(SAKI)
※ikkieのバンド、Antlionのシングルがリリースされました!
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