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渡部桂太 ―― 2020年東京オリンピック・スポーツクライミング応援シリーズ―8―

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小玉:そのクライミングジムで知り合った方たちと外に行くようになったわけですね。
渡部:それは、1年後2年後なんですけれど、基本的に大会というより岩のための練習が多くて。その辺、小学生とか僕くらいしかいなかったこともあって、みんな優しくてストイックに岩に行っている人たちに可愛いがってもらいました。最初はマットも持っていないので、借してもらいました。リードだったらロープを借りたり。何回かたってからマットは買いましたけど。

小玉:ジムに行ってる人のなかでは小学2、3年生というのは、珍しかったわけですね。
渡部:小学生はいなかったですね。

小玉:今、ジムには小学生はたくさんいますね。みんな上手!!!
渡部:誰が誰だか分からないくらいたくさんいますね。

小玉:渡部さんが始められたころは本当に少なかったから、大人たちみんなのマスコットですね。
渡部:そうですね。僕よりも10歳も、20歳も年上の方がたくさんいらっしゃったので、その中で、子供なので相手をしてもらえるのも楽しいし、ほとんど僕のわがままでまわりを振り回していたんだと思うんですけど、結果的にはそれがあって今の自分があると思います。みなさんストイックな集団なので、目的のために自分で練習して岩のために食事に気をつけたり、アスリートでした。それがジムに通う中で自然に僕の中に吸収されていったと感じています。

小玉:外ボルですか? *外ボル:ジムなどインドアで行うボルダリングに比し、屋外の自然の岩で行うボルダリングをいう。
渡部:山もちょくちょく行っていたので、最初はリードでした。ボルダーというのはもう少ししてからなんですけど、手軽さとパートナーがいなくてもいいし、ロープを背負うよりもマットの方が楽なのでボルダーに移行していきました。

中央分離帯・愛知県。2018年10月

小玉:小学生でマット背負えるんですか?
渡部:昔のマットはへたりも早いし、大きさの割には軽い。ロープをリュックに入れる方がずっと重いんです。

小玉:厚みが10センチほどしかないじゃないですか?外ボルのマットって。
渡部:僕はマットに関する恐怖心がもともとなかったので。マットがなくても土だったらいいかなって。

小玉:なるほど。でも土とは限らないでしょ?
渡部:もちろん、河原だったり。そこを含めての僕のクライミング。高さに対する魅力もあったんですけれど、ボルダーっていうスタイルの方があっていると感じました。

小学4年生でノースフェイスカップ初優勝
それでも外岩へのモチベーションの方が高かった
やりたいクライミングを続けた先にコンペが浮上した

小玉:それで外のボルダーとかリードをやってらして、いつごろ競技に?
渡部:初めて大会に出たのは、昔、ストマジ(クライミングパーク ストーンマジック Climbing Park Stone Magicでノースフェイスカップ・THE NORTH FACE CUPというコンペがあったんです。今のひとつ前の世代のワールドカップに出られた方が現役バリバリのトップクラスにいらして、その中で小学生高学年の部で出ました。きっかけは通っていたジムの人が一番上のクラスに出るという話があって、「知り合いがいるならついて行くか」という勢いでした。そしたら優勝しちゃった!
そのころは小学生は全国から集めても10何人でしたが「優勝しちゃったよ!」みたいな。大会がどういうものなのかももよく分からなかったんですけど、それから大会を意識するようにもなりました。大会のためにというばかりでなないけれど、「大会も楽しいな」と。同年代の人もいるし。そこからです。

小玉:そのストマジのコンペに最初に出られた時は何年生?
渡部:4年生です。同年代の中で1位を獲ったのは単純に嬉しかったです。

小玉:それで競技の方に気持ちが開眼したということですか?
渡部:積極的には出たいとは思わなかった。「あったら出ようかな」ぐらい。大会のための練習はしていなかった。岩のためにジムに行ってました。だから結果は出ないです。以前、川越で開催された、ジャパンカップ(ボルダリング・ジャパンカップ)に出たことがあるんですけど、全然歯が立たなくて、おかしいと思いました。大会って色んなクライミングが出て来て、自分の好きな傾斜しかやっていなかったので、対応できなかったんですね。大会に対するモチベーションよりも岩に対するモチベーションの方が高かった。

小玉:それは、とてもよく理解できます。つまりは、元々は外の岩を登ったものですもんね。外岩の模擬がジム。
渡部:そうですね。そこしか知らなかった。

小玉:総合的にいうとやりたいクライミングというのは、今はやれている感じですか?
渡部:そうです、比較的自分がコンペで頑張ろうと思ってから、思うようなクライミングに近づいていると思います。JOCのユースの大会に出ている時に、僕と同じ歳でもの凄く強い中嶋 徹という人がいて、絶対的に強くて全然勝てない。なぜ勝てないんだろうと思っていたら彼が優勝したんです。そしたら彼曰く優勝したからもう大会には2度と出ないと。彼も自然が好きで、アウトドアにもずっと通っている。そちらに重きを置いていくということでしたが、僕からすると勝ち逃げされたような気持になりました。ここで負けっぱなしで終わるのでは不完全燃焼だなと。それでは僕は逆に彼が選ばなかったコンペの道に進もうと思いましたね。高校生くらいの時でした。「僕はコンペで頑張る!!!」と。それから6年経って今に至るわけです。自分が覚悟を決めて挑んでるコンペの中では、そこそこ成績は出ていると思っています。