
第388回 ライヴレポート編 シンディ・ローパー ―― 夢のような一夜……Girls Just Wanna Have Fun !!(後編)
さて、前置き抜きでいきましょう! シンディ・ローパー最後のツアー、『Girls Just Wanna Have Fun FAREWELL TOUR』のライヴレポート後編です!
(前編はこちら)

圧巻の歌声を聴かせてくれた『I’m Gonna be Strong』が終わり、大歓声と盛大な拍手に会場が包まれるなか、シンディは一旦ステージを降りた。そして、実際の映像なのかはわからないけど、楽屋に戻ったシンディが衣装替えやメイクをしている様子が大スクリーンに流れると、3人がかりで慌ただしくメイク直しをしたり、差し出されたフルーツを断わったりするユーモラスな映像に笑いが起こった。「See you soon」の言葉とともにスクリーンの映像が消えて、アコースティックギターを抱えたシンディがステージに登場し『Sisters of Avalon』をプレイ。中間部の力強いシャウトがカッコいい!
続いてセカンドアルバムに収録の『Change of Heart』をプレイ。ハードな演奏に切ないメロディが乗るこの曲がリリース当時からお気に入りだったんだけど、ほぼアルバム通りのアレンジで演奏してくれて大感激。エンディングにはギターやパーカッションのソロがフィーチャーされていて、それもすごく良かった。とくにギターのアレックス・ノーランのプレイが素晴らしく、すっかり彼女のファンになったよ。そして、演奏が終わると「チョットマッテ!」とスマホを取りだすシンディ。
「年寄りがこんなのいじってるのってちょっとムカつかない?」と自虐的に話しつつ、シンディはオーディエンスにスマホのライトを点けるようにうながした。「まわりを見てみて。キレイでしょ。暗闇にいたって、あなたは自分で光を灯すことができるのよ」と話す。会場中にスマホのライトが光り、幻想的な雰囲気に包まれると、名曲『Time After Time』のイントロが始まった。アレックスが奏でるギターの音色がオリジナルそっくりで、それだけで涙が出そうになる。この曲を初めて聴いたのはまだ小学生のころ。あれから40年以上も経っているのに、この曲の魅力はまったく色褪せていないし、シンディの切なくて優しい歌声も変わらない……。
続いたMCではグッズとして販売していたカラフルなウィッグを何人もの観客がかぶっているのが見えると話す。その収益は、シンディが立ち上げた女性の基本的権利を守る団体を支援する基金「Girls Just Want To Have Fundamental Rights Fund」に回されるという。トランプ氏が大統領に返り咲いたアメリカで、女性はまた苦境に立たされることになるのだろうか。人権意識についてはアメリカのほうが進んでいるように感じられることも多いのに、日本では考えられないくらいの前時代的な発言をする人もいるよね。
そして、次は本編ラスト、『Money Changes Everything』。この曲も間奏のピアニカをはじめ、ほぼ原曲通りに演奏されて、それがとても嬉しかった。というのも、13年前に観た時は(14年前も)、アルバム『Memphis Blues』のツアーメンバーがバックを務めていたこともあってか、どの曲もブルーズ寄りにアレンジされていて、それはそれで悪くなかったけど、『Memphis Blues』の収録曲以外はオリジナルのまま聴きたかったな、とも思ったんだよね。今回は最後のツアーだからなのか、はたまたデビューアルバムのプロデューサーだったウィリアム・ウィットマンがベーシスト兼、音楽監督として参加していたからなのか、どの曲もほぼオリジナル通りに演奏してくれて大満足! 学生時代に何曲もコピーしていて細かいフレーズも覚えているし、コピーしていない曲だって子供のころから何千回と聴いているからね。アレンジが変わるとどうしても違和感があって。大いに盛り上がったこの曲のエンディングでは、シンディはステージに寝転がっての大熱演! 拍手喝采のなか本編が終了した。
当然そのまま終わるはずもなく、大きな拍手とシンディコールで、シンディとバンドをステージに呼び戻す。戻ってきたシンディは、そのまま客席に降りて、オーディエンスの間を歩きながら、客席中央に用意してあったサブステージに移動。手にしたレインボーカラーのストールをサーキュレーターでたなびかせながら、『True Colors』を歌った。ラストの「Like a Rainbow……」はオーディエンスが担当。この日の歌声も、シンディはきっと覚えていてくれるんじゃないだろうか……。
余韻たっぷりに『True Corlos』を終えると、「次の曲はある人とコラボレーションします。とても光栄。世界で最も成功している現代アーティストのひとりで、彼女は96歳だったと思う、たぶん。」と話し、『Girls Just Want to Have Fan』がスタート! シンディが客席を歩きながらメインステージに戻ると、バンドメンバー全員が白地に赤い水玉のコートを着ていて、シンディも歌いながらその衣装に着替える。このデザインはもしかして、と思っていると、スクリーンに日本が誇る前衛芸術家の草間彌生さんの姿が映り、歓声が上がった。衣装デザインはやっぱり草間さん!
大合唱になった『Girls Just Want to Have Fan』でこの日のライヴは終了。「次のチャプターで会いましょう。じゃあね!」とシンディはステージを降りて行った。日本でのライヴはこの日の後にも二日間に渡って行われたけど、俺が観られたのはこの日が最後……。冷静に書いているように見せかけて、実は何度も涙腺が崩壊して、何度も何度も泣いてしまった。シンディに出会ってもう40年以上、ずっとファンだったんだもの。そら泣くさ。あのころ30歳だったシンディは71歳になった。それでも、あのころと変わらない力強い歌声に胸が震えた。キーを下げている曲もあったけど、高音域が出なくなった、というよりは、今のシンディの歌い方で、より良く歌えるキーで歌ったんじゃないかと思っている。そして、それが功を奏していたと思う。素晴らしい歌声だった!
シンディのライヴが終わって2週間が経っても、いまだ余韻に浸っている。当日の座席はずいぶん後ろのほうで、シンディの表情はスクリーン越しでしかわからなかったけど、音響が凄くクリアーだったこともあって、ライヴの間中はずっと夢見心地で、素に戻るようなことが一度もなかった。そして、シンディの人間性が伝わってくるような、ハートフルなライヴだった。情報として知っているシンディの人柄ではなく、歌を通して、シンディの人間性が伝わってくるんだよ。あんなに大きな会場なのに……。なんて魅力的な人なんだろう。
シンディはツアーからの引退を表明したものの、音楽活動から引退するわけではなく、単発のライヴをやる可能性も否定していない。それが日本で行われる可能性は低そうだけど、いつかまたどこかでシンディのライヴが観られることを祈っています……。
シンディ、素晴らしいライヴをありがとう!
2025.4.22 『Girls Just Wanna Have Fun FAREWELL TOUR』 at 日本武道館 Set List
- She Bop
- The Goonies ‘R’ Good Enough
- When You Were Mine
- I Drove All Night
- Who Let in the Rain
- Iko Iko
- Funnel of Love
- Sally’s Pigeons
- I’m Gonna Be Strong
- Sisters of Avalon
- Change of Heart
- Time After Time
- Money Changes Everything
Encore
- True Colors
- Girls Just Want to Have Fun
※ikkieのバンド、Antlionのシングルがリリースされました!
ストリーミング&ダウンロードはこちらから
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※ikkieのYouTubeチャンネルです!
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